10月15日から17日まで,東京ビッグサイトで日経BP社主催によるイベント「ITpro EXPO」が開催されました。また,16日には同会場でマイクロソフト主催による「Microsoft Virtualization Day」が開催されました。私は「ITpro EXPO」の展示会場を1時間ほど回って「Microsoft Virtualization Day」のセミナーを聴講しました。セミナーは1セッション40分という短さでしたが,それだけに焦点を絞ってあり,非常に分かりやすかったと思います。

 ただし最後に開催されたパネルディスカッションには少々不満があります。40分という時間に収めるため,実際にはディスカッションと呼べるものはほとんどなく,表面的なやりとりに終始してしまいました。時間を延ばすか,もっとテーマを絞った方が良かったのではないでしょうか。

 さて,展示会場では「ITpro EXPO検定」のブースが出ていました。せっかくなので「仮想化検定」を受験しました。ここしばらくマイクロソフトの仮想化製品の仕事をしていたので,自信を持って臨んだところ何と50点。半分しか正解していません。少々落ち込みながら,夕方にMCP試験会場に向かいました。マイクロソフトの仮想化技術の認定資格試験「70-652 TS: Windows Server Virtualization, Configuring」を受験するためです。結果は850点で合格。700点が合格ラインですから悪くはない成績です。ちょっと気持ちが楽になりました。

 翌週,ITpro EXPO検定の解答と解説が公開されたので,私の回答と照合してみました。どうやらマイクロソフト以外の製品知識が私の課題のようです。50点というのはあまりに悔しいので,ここで間違った問題や迷った問題を公開して言い訳してみたいと思います。

 なお,問題の文は一部を抜き出したり要約しています。全文は「ITpro EXPO検定---仮想化検定」をご覧ください。

【問題1】サーバーを仮想化しないと実現できないこと
B)1台の物理サーバーにWindowsとLinuxをインストールする
C)1台の物理サーバーで,複数のOSを同時に起動する

 上記2つが紛らわしい選択肢です。Cを読んで,初めてBがデュアルブートのことだと気付きました。正解はCです。これは正解しました。

【問題5】「デスクトップ仮想化」はクライアントPCを対象にした仮想化技術です(注:VMware Virtual Desktop Infrastructure,Citrix XenDesktopが実現するものを指しています)。デスクトップ仮想化の仕組みとして正しい説明はどれでしょうか。

 これは難問でした。まず,私はVMware Virtual Desktop Infrastructureを知りません(自慢できることではありません)。Citrix製品は米XenSource社の買収とともに製品ラインナップの名称を変更しており,まだよく理解していません(これも自慢できることではありません)。結局,XenApp(旧称Presentation Server,さらにその前の名称はMetaframe)と間違えて回答してしまいました。

 なお,マイクロソフトは「デスクトップ仮想化」を「デスクトップPC上で別のPCを実現する」意味として使っていました(製品はVirtual PC)。ただし,今後はVirtual Desktop Infrastructure (VDI) により,サーバー・ベースのデスクトップ仮想化を行う製品を投入する予定です(マイクロソフトの関連サイトはこちら)。「Microsoft Virtualization Day」では日本初というデモが行われました。なかなか面白そうです。

【問題6】デスクトップ仮想化には,一般的にどんな利点があるでしょうか。
A)ハードウエアの利用効率が高まり,省電力化につながる
B)情報漏洩対策になる
C)クライアント環境の標準化が容易になる

 正解は以上の3つです。この時点で私は「デスクトップ仮想化」を誤解していたわけですが「表示のみをクライアントに転送する」という点では変わらないため,正解にたどり着けたはずです。しかし結果は不正解。

 間違えたのはAです。デスクトップ仮想化はサーバー仮想化と異なり,クライアントが必要です。クライアントの台数は減りません。クライアントのCPU負荷が低下するため,CPUの消費電力も減るでしょうが,近年のPCはCPUパワーをほとんど使っていないため,PC全体の消費電力は微減に留まるはずです。逆に,サーバーの台数が増えるため,電力消費はむしろ増加すると考えました。しかし,シンクライアントの消費電力は小さいという話です。サーバーの消費電力分をまかなえるくらいの節電効果はあるのでしょう(関連記事:「デスクトップPCはノートPCに駆逐されるか 」。

【問題7】「シン・プロビジョニング」を使えば物理的に10Tバイトのハードディスクしか搭載していないストレージ装置でも,業務システムに合計20Tバイトの仮想ボリュームを割り当てることができます。シン・プロビジョニングのメリットはどれでしょう。
A)キャパシティ・プランニングが不要になる
B)ディスク領域の使用効率が高まる
C)ストレージ装置の消費電力量が減る

 正解は上記すべて。いくら何でも「キャパシティ・プランニングが不要」というのはあり得ないと考えました。たとえば,2年後に200TBの容量が予想されるが,今は100GBしか使っていない場合を考えてみましょう。冗長性を考えなければ,現在必要なディスクはおそらく1台です。しかし200TBの容量を確保するには2TBディスクを使ったとしても100台必要になります。ここまで増えるとラックの配置や電源の確保などを考慮する必要があると思うのですが,いかがでしょう。確かに「綿密な計画は不要」というのは確かですが,単に「不要」は言い過ぎだと思うのです。

【問題8】最近の仮想化技術には,サーバー,デスクトップ,ストレージのほかにも,「I/O仮想化」という技術があります。これはどんな仮想化技術でしょうか。

 これは全くお手上げでした。「UNIXのI/Oは仮想化されていて,すべてファイル入出力とみなされる」とか「メインフレームのI/Oはすべてチャネルで制御される」とか余計なことを考えていました。

【問題9】サーバー仮想化環境に関して,事前に確認したほうがよい点は次のどれでしょうか。
A)パッケージ・ソフト開発/販売ベンダーのサポートを受けられるかどうか
B)パッケージ・ソフトのライセンスが仮想化環境での稼働を禁止しているかどうか

 間違えた選択肢だけを示します。正解はAということですがBを選んでしまいました。開発/販売ベンダーのサポートがなくても,独自テストで導入することは可能だと考えました。重要度や優先度が低い場合は,自己責任で導入することは十分にあり得ます。「確認した方が良い」にはそのあたりの事情を考慮しているのでしょう。

 しかし,仮想化環境での稼働を「禁止」している場合はずっと深刻なはずです。明確に禁止されているものを動かせばライセンス違反になるからです。解説には「仮想化環境での稼働を禁止している製品もありません」とありますが,そんな保証はどこにもありません。以前参加したセキュリティセミナーでは「ある種のボットは仮想環境で実行されることを検知すると動作を停止する」という話を聞きました。近年,ネットワーク犯罪の組織化が進んでいるようですから,ウイルスやボットがブラックマーケットで販売されていても驚きません。この時,ボットプログラムの解析を避けるため「仮想サーバーでの実行を禁止する」というライセンス条件があってもおかしくないでしょう。こういう論理は「屁理屈」と呼ばれますが「存在しない」という主張はそう簡単にできるものではありません。

 以上,ITPro EXPO検定の得点に対する言い訳でした。「仮想化」は,今後数年のIT業界で最も注目される技術であることは間違いありません。これから仮想化を勉強される方の手助けになれば幸いです。