起業して11年。グループウエアを作り続けて11年。その間に起きた数々の出来事を,こちらのコラムで紹介してきました。広告戦略について,ビジネスモデルについて,組織作りについて。読者のみなさまにとって,少しでも参考になればと思います。

 起業した当初は,今のように日本のグループウエア市場で最大シェアを獲得できるとは思っていませんでした。「Lotus Notes や Microsoft Exchange のおこぼれをもらおう」くらいのノリでした。

 ところが今は,お客様から「サイボウズがないと仕事にならない」と言われることもあります。新規ライセンスの累計販売数は,250万ユーザーを超えました。もしソフトウエアに大きなバグがあれば,社会に多大な迷惑がかかってしまうという責任を感じております。

 また,11年の間に事業環境は激変しました。インターネット常時接続,モバイル,オープンソース,SaaS,SNS,広告モデル。以前のように,「よいソフトを作って販売する」だけでは,生き残れない時代が来ています。

メンバーの意志の総体が困難を乗り越える力に

 その中で,変えてはいけないものがあることも学びました。それは,「優れたグループウエアを作り続ける」ということです。興味半分で手を出した事業は,ことごとく失敗しました。真剣に,命を懸ける思いで,ひとつのことにまい進し続けなければ,世界一になるどころか,生き残ることすらできないのだと思います。

 どうしてまだサイボウズは生き残ることができているか? それを自問自答するとき,思い出すのは従業員一人ひとりの頑張りです。大きなトラブルに見舞われたときも,経営者が誤った判断をしたときも,メンバーが力を合わせて乗り越えてきました。逃げずに立ち向かったメンバーは大きく成長し,今のサイボウズを引っ張っています。

 それは,どの企業も同じことでしょう。どんな企業でも常に何かしら問題を抱えています。乗り越えるために必要なのは,乗り越えようと思うメンバーの意思。意思を持つのは,ひとりだけではいけない。多くのメンバーがひとつの思いに共感し,それぞれの役割を全うする。困難を乗り越える仕組みは,このように,とてもシンプルなものだと思います。その過程で,私たちのグループウエアが活用されていれば,これほど喜ばしいことはありません。

 私たちは所詮,ソフトウエア・メーカーに過ぎません。ソフトウエアを作り,上手に使っていただけるよう,サポートしていくことしかできません。ソフトウエアをどのように使い,企業に進化をもたらしていくか。それはお客様の意思によるものです。私たちは「手段」を提供することはできても,「意思」を提供することはできません。どれだけ技術的に優れた製品を作れたとしても,どれだけ上手に使い方を説明できたとしても,お客様から湧いてくる「意思」に支えられているのだということを忘れてはなりません。

 このサイボウズという会社も,グループウエア・メーカーではあるものの,その一方で,ひとつのユーザー企業として,自らの意思によってグループウエアを活用し,企業を変革し続けてきました。その過程で学んだことも数多くあります。

 次回からは,「グループワーク活用術」のタイトルを「チームワーク活用術」と改めて,どうすればチームワークが成功するのか,具体的なノウハウについて書いていきたいと思います。メンバーが一致団結し,困難を乗り越えていくためのチームワーク醸成手法を考える手助けになればと思います。