仕事をつらいと思ったことがない人は、滅多にいないでしょう。つらくはないが、何となくつまらないと感じたこともあるでしょう。そんなときは、どうしていますか。一人で悩んでいないで、「このモヤモヤを解消してくれる言葉はないだろうか」という話題で、誰かと話をすることをお勧めします。私が皆さんの友人なら、以下の言葉を紹介するでしょう。

仕事の目的はお客様を喜ばせること

 この言葉は、自分で見出したものです。あるコンサルタントと一緒に仕事をしていたときに、「矢沢さんにとって、仕事の根本的な目的は何ですか」と質問されたことがあります。コンサルタントとしては、私の仕事に対する姿勢を知りたかったのでしょう。

 それまで考えたことのなかった質問です。私にとって、仕事の根本的な目的は、お金儲けでしょうか。いやいや違います。社会貢献するから、お金がいただけるのです。それなら「私の仕事の目的は社会貢献です」と答えましょうか。しかし、社会貢献という漠然とした言葉では、自分の仕事の目的を明確に示せません。それでは、私にとって社会貢献とは何でしょう...。

 しばらく自問自答して、納得できる言葉が見つかりました。それは「私の仕事の目的は、お客様を喜ばせること」です。この言葉をコンサルタントに伝えると、「すばらしい!」と言って感動していました。コンサルタントを喜ばせようと思って作った言葉ではありません。私は、心底そう思っています。

 あまりにも仕事が忙しいと、仕事の根本的な目的を忘れてしまいます。だから、つらいと感じるのでしょう。そんなときは、冷静になって「目先の仕事だけを見ていてはいけない。仕事に苦しむ自分だけを感じているのではいけない。仕事の結果を喜んでくれるお客様のことを思い浮かべるのだ」と自分に言い聞かせて、つらさを解消しています。

つまらないのは大事にしないからだ

 誰から教わったのか忘れてしまいましたが、この言葉には大いに納得させられました。順調にこなしているのに、何となく仕事がつまらないと感じることがあるでしょう。なぜ、つまらないのでしょう。それは、仕事を大事にしていないからです。つまらないから大事にしないのではなく、大事にしないからつまらないのです。

 これは、仕事以外のことにも当てはまります。私たち日本人は、世界の国々の中で裕福な方です。裕福なのは、とても幸せなことですが、ものを大事にする気持ちを失ってしまいがちです。たとえば、ウルトラマンや仮面ライダーのフィギュアを大人買いして机の上に飾っても、しばらくすると飽きてしまうでしょう。大事にしていないからです。昼休みの同僚との語らいを、それほど楽しくないと感じることがあるでしょう。これも、大事にしていないからです。

 ものを大事にするということから、父のことを思い出しました。貧しい時代に育った人なので、ものを大事にする人でした。私が学校でハサミをなくしたと言うと「ハサミが空から降ってくるか!」と叱られました。電球が切れたので捨てようとすると「技術が進歩したら直せるようになるから保管しておけ」と言います。そんな父の遺伝子を受け継いだ私は、ものを大事にする方だと思います。父の言い付けどおり、切れた電球を今でも保管しています。そんな私でも、ときどき仕事を大事にすることを忘れてしまいます。天国の父から「仕事が空から降ってくるか!」と叱られそうです。

感謝の気持ちを持つと景色が輝いて見える

 今回も、言葉の常備薬を集めた本を紹介しましょう。「中村天風一日一話(財団法人天風会編、PHP研究所刊)」です。特定の思想や宗教に偏った本ではありません。中村天風氏自身の言葉を集めたものです。

 私は、中村天風氏のファンというわけではありません。出張先の駅の書店で、たまたま平積みになっていた本だったので購読しました。いろいろな言葉が紹介されていましたが、その中でも「毎朝、心から感謝する」という言葉には、大いに感動しました。中村天風氏は、一日を感謝の気持ちで始めるそうです。

 これを読んだ私は、電車の窓から見える樹木や道行く人たち向かって心の中で「ありがとう」と言ってみました。するとどうでしょう。景色が輝いて見えたのです。感謝の気持ちは、ものを大事にする気持ちに似ていると思います。仕事を大事にしましょう。そして、感謝の気持ちを持って仕事をしましょう。仕事がつまらないなんて、決して思えなくなるはずです。

中村天風一日一話
編者:財団法人天風会
出版社:PHP研究所
価格:1155円(税込み)
ISBN: 978-4-569-64497-4

 前回の記事を読んでくれた知人から「私が自分に言い聞かせている言葉は○○○○よ」と教わりました。嬉しかったですが、それをこのコーナーのコメント欄に書き込んでくれたら、もっと嬉しかったです。仕事のやり方や社会人としてのあり方の支えとなっている言葉は、人によって様々でしょう。いろいろな言葉を集めてみようというのが、この連載の趣旨です。皆さんを支えている言葉を、ぜひコメント欄に書き込んでください。よろしくお願いします。

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記事中の写真画像が間違っておりました。新しい写真画像に差し替えました。お詫びして訂正します。(ITpro編集部)[2008/11/26 17:20]