ガソリン高の家計への直撃は,不景気と物価高が同時進行するスタグフレーションの入口に私たちがいることを,誰の目にも分かりやすく象徴した出来事でした。ガソリン価格は少し落ち着いてきているものの,ひそかに巻き起こったブログコミと,それがもたらす生活者の意識変化は,もう元には戻せません。

 例えば,石油元売り大手が卸価格の公開をやめたところで,ガソリン価格比較サイトを知った生活者は,一部の最安店に殺到しています。こうした状況を見て,親しいガソリンスタンド経営者は,いち早く店じまいをしてしまいました。

 さらに,燃費の悪い大型車からハイブリッド車やスモールカーへの買い替えも進んでいるようです。

 今回のブログコミの広がりが,今後,自動車や関連商品の選び方・買い方・使い方に,少なからぬ影響を与えていくことは必至です。もちろん,これは自動車関連の業界以外でも起きてくることでしょう。

 そこで,実際にいくつかのガソリン高対応サイトを体感しながら,生活者としてどんな気持ちになり,どう消費行動が変わるかを考えてみましょう。

ガソリン価格比較gogo.gsで最安店探し

 gogo.gsは,地域別に一番価格が安いガソリンスタンドを探すための無料サイトです。とはいえ,全国に調査網や取材網を持っているマスメディアが始めたわけではありません。ネットを上手に活用した読者投稿サイトなのです。しかし皮肉なことに,知る人ぞ知る当サイトを広く知らしめたのは,ガソリン高特集を組んだテレビや雑誌などのマスメディアでした。ガソリン価格に詳しいコメンテーターとして,あるいはその参考資料としてgogo.gsが紹介されたのです。

 このサイトをひとたび無料登録して使うと,誰もが一番安い店で買いたくなります。さらには,安い店を見つけると思わず投稿したくなるから不思議です。ヘビーユーザーには,もっと詳しい情報を発信できるように,ブログまで用意されているのです。

 こうしてガソリン価格がガラス張りになった結果,値上げが始まる前日に,一部のガソリンスタンドに長蛇の列ができる「新しい現実」を目にすることになりました。そして,今まで無風地帯とされた地域でさえ,多くのガソリンスタンドが価格の過当競争に巻き込まれることになったのです。

 もうこうなれば経営者は覚悟を決めて,徹底したコスト削減の上,ガソリンをとことん安くするしかありません。量を売って仕入れコストも下げつつ,他のサービスも合わせて提供するしかないのです。ところが,たとえこの大波を乗り切ったところで,ガソリンの需要自体も下がっていくところが大変なのです。

カタログでは分からない実燃費データをe燃費で

 まずは,次に買い替えるとしたら,「燃費がいいクルマ」に生活者の目が向くことは間違いありません。ハイブリッド車のプリウスがモデルチェンジ直前にもかかわらず販売好調だそうです。来年には,ホンダも安価なハイブリッド専用車を投入することが決まっていますが,おそらく大人気となるでしょう。

 とはいえ,ハイブリッド車も含めて,カタログで表記されている10・15モード燃費と,街中を走行をした時の実燃費とが大きく乖離(かいり)していることは,よく知られています。クルマを買いたい時に知りたいのは「実燃費」なのです。

 もちろん,この実燃費を知るためのネットコミサイトもあります。ガソリン価格と同様に,実際にそのクルマを愛用するユーザーが実燃費を投稿するe燃費です。同サイトが広く公開しているe燃費アワード2007-2008を見れば,実燃費とカタログ燃費達成率は一目瞭然です。ミニバンやスモールカーなど自分が乗りたいカテゴリーの中で,最も燃費の良い車種をランキングで知ることができるのです。

 ガソリン高を一度味わってしまった以上,用途やカテゴリー別で実燃費が良いクルマを実燃費比較サイトで選び,購入・買い替え候補にするのが当たり前となる可能性が高いでしょう。