前回「SEやSEマネジャは技術屋の殻の中に閉じこもっていてよいのか?」「SEマネジャに対するSEや営業の不満を放っておいてよいのか」について,このブログでSEマネジャやSE関係者の方々に問題提起したら,次のようなコメントを頂いた。

 「アレをしろコレをしろばかりで息が詰まりそうですね,足し算ばかりしても人間の出来る量には限りがあります。たまには、しなくていい事も記事として取り上げたらいかがでしょうか?人間は機械とは違いオイルや電気さえ与えれば動くようなものではありません。100%で走り続ければ、どこかで躓いて、当然その先も解るはずです。あまりに要求が人間離れしすぎやしませんか?」

 きっとこの読者の方は,筆者の主唱に対し「それは確かにそうかもしれない。だが,自分たちはそれどころではないんだ。やることが多いんだ。時間がないんだ」とか「一体,何からやればいいんだ?何もかも出来るわけはない」などと思い,葛藤しているのだと思う。確かに筆者は「ビジネスに強くなれ」「ぶらっと一人で顧客を訪問せよ」「SEを塩漬けにするな」「SEの体制図を出すな」「チームで仕事をやれ」などと“アレをしろコレをしろ”といろんなことを書いている。読者の方がそんな感想を持つのは筆者の不徳の致すところで,一理あると思う。そこで,今回は「IT企業のSEのあり方やSEマネジャの立場をどう考えるか」について書く予定だったが,それを変更してこのコメントをフォローしたい。読者の方々の参考になれば幸いである。

 筆者は「SEマネジャは,ほかのことは手を抜いてでもやるべきことは二つある」と思っている。その二つは,SEマネジャがやるべきことの原点である。以下それについて説明する。

プロジェクトをレビューする

 一つ目は「部下がやっているプロジェクトをレビューする」ことである。問題があろうかなかろうが,各プロジェクト毎月1~2時間レビューする。内容はSEから進捗状況や問題点,対策,見通しを聞く。それに対し,SEマネジャが「それはこうやったら」「顧客にこう助言したら」「OK」「その問題は俺がフォローしてやる」「営業にこう注文せよ」などとコメントする。その結果はメモしておき,次回のレビューで確認する。そんなやり方である。

 プロジェクト・レビューはSEマネジャ稼業のメインの仕事なので,多くSEマネジャはやっていると思う。ただ,重要なことは,部下がやっている全プロジェクトをレビューすることである。すると,すべての受注プロジェクトをきちっと進めるようSEマネジャが自らその進捗を管理することができる。言うまでもないが,受注プロジェクトを計画通り遂行することはSE職の一番の責務である。

 また,レビューを通じて部下がやっている仕事の状況や苦労も分かるし,部下の指導もできる。部下とのコミュニケーションもできる。SEマネジャのレビュー・コメントが部下の仕事に役立てば,部下との信頼関係も増す。

 ただ,注意点もある。それは,SEマネジャにある程度のプロジェクト管理力と技術力が必要だということだ。そうでないのに,レビューすると部下の仕事の邪魔になる。また,知ったかふりも厳禁である。部下が間違ったコメントを真に受けそれを行なったら,大変なことになる。しかし,SEマネジャが技術者の心を持ち,真面目にレビューを続けていけば,だんだんとプロジェクトや部下にとって役立つレビューが出来るようになるものだ。

顧客に信頼されるようになる

 二つ目は「SEマネジャ自身が顧客に信頼されるようになる」ことである。顧客から「○○マネジャは信頼できる」「彼の言うことは信用してやろう」と言われるようになることである。誤解されては困るが,部下ではなくSEマネジャ自身が信用されることである。もちろん,部下も信用されSEマネジャも信用されるのが一番良い。

 そのためにSEマネジャがやるべきことは多いが,主な事項は次の6点である。

(1)顧客を訪問する。言うまでもなく訪問しないと信用されようがないからだ。

(2)訪問時には必ずベンダーの技術の責任者として,プロジェクトの問題点や見通しなどを話す。質問にも答える。ここで,前述の部下のプロジェクトのレビューが役に立つ。

(3)訪問時にプロジェクトの状況などを見て,自分が問題だと感じたことはすぐに手を打つ。

(4)顧客の要請やクレームには,SEを通じて適切に対応する。

(5)顧客の立場で物事を考える。ビジネスマンとして,また管理者として,しっかりした姿勢で対話する

(6)訪問時に製品・技術や業界の動向などについて質問されたら,適切に答える。それにはある程度の見識が必要である。