YouTubeとブログで情報発信を実践されている方なら,その親和性の高さをよくご存知でしょう。ブログに写真や原稿用紙にして数十枚分の記事を書くよりも,気の利いたYouTubeの動画を一つ貼り付けておく方が有効な場合も少なくありません。使い方次第で,手間をかけずに効果的に情報発信ができて,「好印象」のネットコミになる可能性を秘めているのです。

 今のところ無料かつオープンに使えるYouTubeを,個人の趣味の世界だけで活用するのは,あまりにも「もったいない」ことです。むしろ,企業が戦略的・組織的に活用することで,お得意様やお客様向けの広報や販売促進はもちろんのこと,社員やパートナーの活性化にも大きな効果が期待できるのです。

 そして何より重要なのは,これまで問題とされてきたブログの三重苦(「書く時間がない」「うまく書けない」「悪いネットコミが広がりやすい」)までも,一足飛びで効率的に解決することができるのです。

YouTubeを今すぐ始めるべき7つの理由

 実は,私自身もYouTubeについては,個人的に面白画像を見て楽しむだけでした。経営ツールとして意識して使い始めたのは,つい最近のことです。

 しかし今となっては,ブログでイベントの報告などをする際に「YouTubeを使わないとしたら,どうやって表現していいのか思い浮かばない」ほどなのです。例えば,「JMAAエコロジーチャリティTシャツアート展の親子ワークショップ」や,「ホッキョクグマの写真家リサ・ヴォートさんのワークショップ」などは,YouTubeなしで現場の楽しい雰囲気を伝えることなど不可能だったのです。

 そこで,日経ベンチャーONLINE連載の拙コラム「経営者のためのIT道場」でも,さっそく実体験を生かした「YouTube道場」の連載を始めています。その冒頭では,「YouTubeを今すぐ始めるべき7つの理由」について書きました。

 その内容をITpro読者のITプロフェッショナルやCIO(最高情報責任者)向けに書き直すとこうなります。

1)とにかく安い,ほとんどタダ
 かつては,インターネットでの動画配信には,毎月何百万円もかかりました。それなのに,画像こそまだ粗い上に時間こそ10分と限られますが,今やほとんど無料で配信できるようになったのです。

2)サーバー管理も担当者も不要
 さらに嬉しいことに,動画配信のための大げさなサーバーを会社に置く必要がありません。ネットの向こうにあるYouTubeの担当者がすべてやってくれるので,サーバーやシステムを保守管理する専用スタッフも要りません。

3)社員手持ちのデジカメとパソコンで十分
 社員が個人所有のデジカメかケータイの動画撮影機能を使い,それぞれの備品のパソコンで動画をアップロードすればよいので,新規の設備投資も予算計上も不要です。動画編集も,今はデジカメのおまけやフリーソフトで対応できます。

4)各部門の現場社員が取材班に早変わり
 撮影するのは,現場に居合わせた社員で十分です。YouTubeで人気のある動画を見ると,プロなみの撮影力・編集力というより,生々しさと素人っぽさが大切です。今まで発信していないゼロの状態からのスタートですから,まずは発信することが大切です。

5)見せていなかったこだわりこそコンテンツ
 動画の命はコンテンツの中身ですが,今まで非公開だったプロジェクトXの一部を「見える化」するだけでも十分です。商品開発者の熱い想い,工場の徹底した生産管理,店舗とサービス責任者の言葉…,こうした地道な裏方の努力こそネットで共感を呼ぶのです。

6)展示会などのイベントの臨場感を誰でも発信
 せっかく展示会やセミナーなどのイベントを開いても,そこに足を運んでくださる方は限られています。また,そこに参加した社員以外は,その場の様子やお客様の反応などを知ることは難しいでしょう。その臨場感の一端でも広く発信できれば効果絶大です。

7)自社のWebサイトやブログで動画によるPR
 会社のWebサイトやブログに占める動画の割合は,今後ますます大きくなるでしょう。それもカタログを美しく動画化したものよりも,タイムリーでライブ感のあるものが求められるはずです。YouTubeなら動画が量産できる上,HTMLリンクをコピー&ペーストするだけで,Webやブログに気軽に貼り付けられるので便利なのです。

 すなわち,経営者,宣伝広報,マーケティング部門が検討する課題こそ数あれど,システム部門からすれば「お金も手間もかけずに大きな効果を上げる可能性」を秘めた提案ができるのです。