がばいばあちゃんの
勇気がわく50の言葉


著者:島田 洋七
出版社:徳間書店
価格:1000円(税込)
ISBN:978-4198623128

 『がばいばあちゃんの勇気がわく50の言葉』の著者である島田洋七氏は,父親を広島の原爆でなくし,小学校2年生からの8年間,佐賀の祖母(がばいばあちゃん)に預けられて育った。かなりの極貧生活ではあったが,「知恵と笑いに満ちたばあちゃんとの暮らしは,愉快で刺激に満ちたものだった」という。いろいろ気にやむことが起こっても,島田氏はばあちゃんの言葉に勇気づけられてきた。

 そんなばあちゃんからのメッセージは,日頃苦労しているCIOやIT技術者の心にも響くだろう。この本には,気分が落ち込んだ人々に等しく安堵を与え,勇気を奮い立たせてくれる言葉に満ちている。

「地球には,六十億人がいる」

 CIOは,競合他社の動向をはじめ,先端のITやベンダーの動向といった「外的な環境」に目配りするのは当然だが,それよりも「内的な環境」への気配りに苦心することが多いのではないだろうか。「内的な環境」とは,経営者やそのほかの経営幹部,監査部門,IT部門との人間関係などである。利害が対立して譲り合えなかったり,理解しあえなかったりする。精神的には,決して安穏としていられない。

 このような環境にのまれてしまうと,しばしば人間関係がうまく行かなくなる。つい笑顔もなくなってしまう。知り合いのCIOからも,「(人間関係で)いろいろあって,長期休暇をいただきました」というメールを頂戴したことがある。

 こんなとき,「二人,三人に嫌われても,あと地球には,六十億人がいるよ」という,がばいばあちゃんの言葉が,沈み込んだ心をやさしく叩いてくれるに違いない。そして,「落ち込んでいられない!」という自分を奮い起こす力を,自らの中に見いだすだろう。

「人生は総合力だから」

 CIOとして,あるいは上司としての経験の中で,部下が無力感にさいなまれているのを見かけることは少なくないだろう。求められている役割を部下が果たせず,組織運営に行き詰ったとき,部下もそれを感じて苦しむことが多い。心を閉ざしがちになり,周囲とのコミュニケーションが上手くいかなくなると,いっそう苦しさを感じるようになる。

 そんなとき,がばいばあちゃんの一言を,心をこめて部下に言ってあげたい。「通知表は,0(ゼロ)じゃなければええ。1とか2を足していけば5になる! 人生は総合力だから」。

 これを聞いた部下は,CIOである前に人としてのあなたの心を感じ,組織課題に一緒に取り組む仲間だと共感するのではないだろうか。少なくとも,閉ざした心を少しでも開こうとするに違いない。

 佐賀で生活の後,著者は苦学し,関西大学商学部を卒業した。現在はテレビ・タレント,講演,執筆活動と大忙しである。この本は,500万部以上売れた「佐賀のがばいばあちゃん」シリーズの中の1冊であり,何冊か見たが,がばいばあちゃんの知恵と教訓を短文でまとめて読むにはこの本が良いと思う。

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