サーバー管理者のためのイベントログ運用の基本
著者:養老利紀他
出版社:毎日コミュニケーションズ
価格:2940円(税込)
ISBN:978-4839918361

 本書はここで紹介したものの,実は版元の残部が僅かで,重版予定はないそうです。そのため,定価が2940円なのにamazon.co.jpのマーケットプレイスでは7,000円近い値が付いています。他に類を見ない良書が,こうして事実上の絶版になっていくのは困った傾向です。オンデマンド出版のような形態で残せないのでしょうか。以下は,私が発行当時に書いた推薦文です。

 イベントログは,Windowsの動作を監視する上で欠かせない機能です。ところが,どういうわけか今まで,まともな参考書が全くありませんでした。イベントログを表示するツール「イベントビューア」は,Windowsの他のツールと同様,GUIで操作できるため,特別な知識がなくても「なんとなく」使えてしまうからでしょうか。

 1台のPCしか管理していない場合は,それでもやっていけるかもしれません。しかし,多くのサーバーを管理する場合,「なんとなく」使うだけでは不十分です。そもそもイベントログとは何なのか,複数のコンピュータのイベントを管理するにはどうすればよいのか,どういうときにどんなイベントが発生するのかを知らないと,適切な管理はできません。また,Windows NTからWindows 2000,そしてWindows Server 2003と,記録されるイベントはどんどん増えています。Windows Server 2003では,特別なエラーがなくても多くのイベントが情報として記録されます。管理者は,どのイベントが重要で,どのイベントが不要なのかということを取捨選択する必要があります。

 本書は,複数のサーバーの動作を監視し,イベントログを適切に参照するためのテクニックについての実践的な知識が満載されています。推薦文を書くために,原稿を見せてもらいましたが,実に詳細なところまでカバーしていることに驚きました。しかも,単に詳細なだけではなく,管理者にとって必要なこと,知っていると便利なことが幅広く記載されています。著者の養老氏は,長年BOMというシステム監視ツールの開発に携わっていらっしゃいました。本書は,そのときの体験に基づいているのでしょう。

 随所に登場するコラムも必見です。著者が実際に体験した「妙なこと」は実際の管理経験のある方はニヤリとするでしょうし,経験のない方は「なるほど」と勉強になります。そして,コラムで批判されたソフトウェアベンダーの方は,素直に耳を傾け,次期製品でぜひ改善していただきたいと思います。

 現代の企業において,サーバーは心臓であると言ってもよいでしょう。動いているときは誰も感謝しませんが,停止したら企業の存続に関わる場合すらあります。しかも,システム管理者が管理する製品の多くはサーバー機能を提供します。サーバーは,ワードプロセッサや表計算ソフトのように,エラーメッセージを画面に表示することはほとんどありません。しかし,寡黙なサービスの動作状況のイベントログを見れば多くの情報が得られるのです。

 システム管理者は (最近では「ITプロフェッショナル」という呼び方に変わりつつありますが) 労力の割に報われない職業のひとつです。正常に動作して当たり前,異常時には怒鳴られるのが普通です。しかし,システム管理者の方は,自分たちが企業を支えているのだというプロフェッショナルとしての誇りを持って仕事をしていただきたいと思います。そして,プロフェッショナルの仕事を支えるのがイベントログであり,イベントログとの付き合い方を伝授してくれるのが本書です。

 著者の養老氏は「すべてのシステム管理者の机に本書を1冊ずつおいて欲しい」と言っています。私もそれに賛成です。本書はそれだけの価値があります。いえ,本書以外ではこれだけ広範囲なイベントログの知識は得られません。ぜひ,本書を手元に置いて効率のよいイベントログ管理を行っていただきたいと思います。

 (付記)本書の概要を紹介したページ

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