ニコン・エシロールなど,2400社余りの企業再生と活性化に関わった尊敬する経営者,長谷川和廣先生の新著「社長が求める『課長の仕事力』」を読んで驚きました。その内容の多くが,そのまま「企業経営に生かすブログ道」にも応用できる「極意」だったからです。

 この本には,長谷川先生が長年続けてきた気づきメモ=おやっとノートの一端がわかりやすく語られています。経営不振にあえぐ2000社の課長を勇気づけ3カ月で意識改革してきた長谷川先生の「生きた言葉」が散りばめられているのです。課長はもちろん経営者から学生まで読んでほしい一冊です。

 目次だけを見ると「第1章 課長に求められるリーダーシップの原則」「第2章 課長が知っておくべき人間関係の原則」「第3章 課長が考えておきたい売上アップの原則」など,難しそうに思えるかもしれません。しかし,1項目についてわずか2~3ページずつの平易な文章でまとめられたワンポイントアドバイス集なのです。

 「経営者の目線」で,いかに自分と会社をプロデュースできるか。「お客様の目線」で,いかに喜ばれるプレゼンテーションとコミュニケーションができるか。「組織」として,いかに効率的・継続的に情報の受発信ができるか。ブログやメールを活用する新世代のビジネスパーソンにとって,大きなヒントが簡明に伝わると思います。

 だからこそ,私たちの会社では朝礼で「課長の仕事力」を1日1項目ずつ輪読しようと考えています。

人を切るリストラより人を生かしきる企業再生

 長谷川先生の経営哲学に触れるきっかけは,2005年の初夏に東京商工会議所墨田支部主催で行われた経営者向け講演会でした。当時は,同じ墨田区に本社を構えるニコン・エシロールの経営者として活躍されていたのです。講演会は,長谷川先生の企業経営ノウハウの結晶である「超・会社力―力強く利益を出し続けるために」をテキストに,経営哲学から戦術まで一端をお聴きする好機でした。

 最前列でお聴きした内容はまさに「目からうろこが落ちる」内容の連続でした。ですから,真っ先に質問して名刺交換をさせていただきました。さらに,ブログやメルマガで先生の本をご紹介して,すぐさまお礼メールを差し上げました。それ以来,お忙しい中,時にはお会いして,ありがたい教えをいただいています。

 長谷川哲学の中でも,最も印象的なのは「惻隠(そくいん)の情」でありましょう。外資系企業でのビジネス経験も豊富な長谷川先生ですが,なるべく今働いている社員の潜在能力を発揮させることで企業再生を試みます。海外のファンドでよく見られる大リストラ,企業売却や解体は,最後の手段なのです。

「実は,会社がおかしくなった原因も,会社をよくする方法も,社員が知っている」

 ですから,無意味な責任追求よりも,それができなかった理由を明らかにして取り除き,なすべき手立てのTO DOリストを作ることが第一です。実行期限と担当者=組織横断的プロジェクトチームを決めたら,すぐに行動に移り,社長も交えて毎週少数精鋭短時間でレビューを繰り返すのです。その現場でもある社長室を見せていただきましたが,ガラス張りの質素な部屋で驚きました。社長の机と小さな会議テーブル,そしてホワイトボードがあるだけです。

 こうして,人を中心として企業が活性化していく実体験を重ねられました。だからこそ,企業再生の要となるのが「経営者」であり「課長」であることを,長谷川先生は知り尽くしているのです。