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「仕込みの年」と宣言した日立製作所・篠本副社長の胸算用

2008/07/16

 「今期は次の成長に向けた仕込みの年」。日立製作所の篠本学副社長(情報・通信グループ長兼CEO)は2008年度をこう位置付ける。自身が統括する情報通信グループのグローバル展開とM&A(企業の合併・買収)を推進する体制を整え、成長路線へのアクセルを踏もうとしている。

 HDD(ハードディスクドライブ)事業を除いた情報通信グループの売り上げは、2007年度に約2000億円増え2兆1000億円となった。営業利益率も7%をクリアし、中期経営計画の2つの数値目標(2009年度に売上高2兆円、営業利益率7%)を2年前倒しで達成した。これは、ソフト/サービスが14%増の1兆3000億円と大きく伸びたことによる。「2、3年前から、プロジェクト管理をはじめとするモノ作りの体制強化に取り組んでおり、その効果が出てきた」(篠本氏)。

 そこで「高収益体質を維持し、売り上げと利益を伸ばす」と、攻めに転じた篠本氏は、2兆5000億円という売上目標を設定した。達成時期については語らなかったが、年5%程度の成長を予測していることからすると、3〜5年で達成させる算段のようだ。ただし、2008年度の見込みは減収減益。「市場環境などから固めに見た。当面の受注はそこそこあるものの、その先が読めない」(同)としている。

 2008年度に攻めに転じる上で重要な布石の1つがグローバル展開になるが、篠本氏が「最低でも、売り上げ構成比を全体の30%にしたい」としていることから、海外での売り上げはおよそ7500億円になる。2007年度が4千数百億円なので、約3000億円もの上乗せが必要だが、篠本氏は「半分はM&A、半分は自力で達成する」考えだ。

 そのための仕込みとして、まず販売体制を再構築する。2008年4月に、米国に日立インフォメーション&テレコミュニケーション・システムズ・グローバル・ホールディングスを設立した。同社は、グローバル展開する情報通信グループ各社を統括する持ち株会社であり、傘下には、ストレージ製品販売などを展開する日立データ・システムズ・ホールディングス(HDS)、コンサルティングなどITサービスを手がける日立データ・システムズ・ソリューション・ホールディングス(HDソリューション)を組み入れる。これまで2社が別々に取り組んでいたビジネス・コンサルティングとストレージ販売の連携を強化するためである。

 その上で、HD関連ソリューション事業の中核である日立コンサルティングが獲得した商談を、システム構築・運用などアプリケーション・サービスへと発展させ、海外比重の高いストレージ販売事業をさらに伸ばす。サーバーやミドルウエアを組み合わせ、さらに付加価値の高い事業にする目論見もある。

 その際には、サーバー製品のブレードシンフォニーや運用管理ソフトJP1などが中心的なシステム商材になるので、JP1の周辺ソフトやシナジー効果を生みそうなソフト会社のM&Aも実施する。2008年4月にカナダのIT管理ミドルウエア会社であるMテック・インフォメーション・テクノロジーを買収したのはその一例だ。

 その一方、コンサルティング会社への資本参加も引き続き進め、海外のコンサルティング部隊を、2008年度中に現在の2千数百人強から3000人強に増員する。そして世界170カ国に展開するHDSの3800人の陣容が、それをフォローするという、コンサルティングを前提にしたビジネス展開を図る。

 その推進に欠かせないのがデータセンターである。現在、海外には電力などグループ事業向けの設備はあるが、情報通信グループ所有のデータセンターはない。グローバルのITサービス市場はクラウドコンピューティングに向かおうとしており、大規模データセンターはその基盤であるだけに、日立がアクセルを踏み込めるかどうかを大きく左右することだろう。

著者プロフィール

田中 克己(たなか かつみ)
 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。  30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在は日経コンピュータで「再生の針路」を連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路〜破壊的イノベーションの時代へ〜」(ともに日経BP社)がある。

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