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SaaSで「富士ソフト」「グーグル」「堀田」の組み合わせには驚いたが

2008/06/13

 へぇー、あのベタな受託ソフト開発会社がグーグルとSaaSで協業? えっ、記者会見に登場した富士ソフト副社長って、日本IBMでパソコン事業を担当していた堀田さんじゃないですか! 「富士ソフトがGoogle Appsの企業向け販売を開始」には、ちょっとした驚きがあった。「富士ソフト」「グーグル」「堀田」の三者がうまく頭の中で結びつかない。数年前なら到底あり得ない組み合わせだからだ。

 とは書いたものの、SIerや受託ソフト開発会社といったITサービス会社がSaaS事業に参入するのが、最近の流行ではある。直近では日本ユニシスもSaaS事業に本格参入することを表明している。ITサービス会社は以前、いわゆるASPブームの際、安直にブームに乗っかり痛い目に遭った。その後遺症からか、今度は100%間違いないブームが来ているのに、SaaS事業に消極的だった。「こりゃ、ヤバイなあ」と思っていたから、とりあえず喜ばしい傾向ではある。

 もちろんITサービス業界におけるSaaSブームは多少マユツバ的な側面もある。SaaS事業というのは、株主や投資家に自社の成長性をアピールする格好の材料になるからだ。なんせITサービス会社は、以前のような経営を揺るがす大赤字プロジェクトこそ出さなくなったとはいえ、それだけの存在。経営の安定性はアピールできても、現状のビジネスモデルのままでは成長性は皆無である。

 およそ上場企業であるならば、経営者は株主や投資家に成長性を示さなければならない。そうでないと、その企業に資金需要はないわけであって、株価低迷どころか上場している意義すらなくなってしまう。とういうわけでITサービス会社の経営者も、成長性を懸命にアピールする。そして、その有力なネタがSaaSというわけだ。

 で、「多少マユツバ」と書いたのは、少し前まで多くのITサービス会社が別のネタで成長性をアピールしていたからだ。別のネタとはM&A。猫も杓子も株主総会やアナリスト説明会で「今後は売上拡大に向けM&Aも視野に・・・」なんて言っていた。だが、本当にM&Aに乗り出した企業は数えるほど。そのうち「稼いだキャッシュを株主に還元したくないから、そんなことを言っているんじゃないの」と全く信用してもらえなくなった。

 てなわけでSaaSも・・・。ただ、「なかなか良い相手が見つからなくって」と言っていればよかったM&A話と違い、SaaSは実際に事業化を進めなければ話にならない。それにSaaSや、その先のクラウド・コンピューティングの方向はホンモノ。パラダイムシフトであることは間違いないから、それこそ“嘘でもいい”から取り組んだ方がよい。中途半端なM&Aで水ぶくれするより、はるかに筋が良い。

 だから、ここは素直にSaaS事業に取り組むITサービス会社を応援することにしよう。そう言えばグーグルからすると、「富士ソフトは意思決定が早い」らしい。確かに、オーナー経営者のツルの一声で決まる会社は、グーグル・スピードの意思決定だろう。また、富士ソフトの堀田副社長によると「今回のグーグルとの話を社内でしたら、技術者の目が輝いてきた」とのこと。そりゃ、そうだろう。

 それにSIや受託ソフト開発と違い、営業だけでクロージングできるSaaSは、新規ユーザーを開拓するドアノック商材としては打ってつけだ。そんなこんなを考えると、SaaSは大手SIerだけでなく、下請けが中心だった独立系の受託ソフト会社も事業としてチャレンジしてみる価値は大いにあるだろう。

 だが、そこから先が難しい。SaaSはマーケティングできなければ話にならないが、ITサービス会社の大半はそもそもマーケティングの概念がない。だから富士ソフトも「グーグル」や「堀田」が必要だったのだろう。それに、ドカンと売ってナンボのITサービス会社のビジネスモデルに、薄く広くSaaSのビジネスモデルを並存させることは、思いっきり難しいだろう。こればっかりは、お手並み拝見である。

著者プロフィール

東葛人(とうかつじん)
 「IT業界の最新の話題、ニュースを独自の視点で切る」ことを目標に、ブログを立ち上げたのは2004年6月のことです。以来、ブログサーバーの2度の移転を経つつ、特にITサービス業の課題・問題点をウォッチし続けてきました。ユーザーの視点ではなく、“供給側の論理”と独断で、話題やニュースを騒がしく語ります。

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