土曜日にマイミクに誘われて,「エビ釣り」をしました。と言っても別に遠くではなく,23区内です。都心ですから,川も特別にきれいというわけもなく,田舎育ちの私にしてみれば「ドブの親方」くらいにしか見えないのですが,エビは入れ食いな感じでいましたし,ハゼやメダカ(と言っても多分カダヤシでしょう)や鮎と思われる魚などがいて,意外にもそれなりの生態系があるのだということを感じました。

 以前,「生態系の破壊をしなければ自然の恵みを受け続けることができます」という話をしましたが,件の川では「釣り」をしている限りは「生態系の破壊」には至らないようでした。「自然の恵み」は,凄く... おいしかったです...

 さて,前回ちょっと書いたように,今回からやや各論的な展開にして行きたいと思います。

オープンソースのビジネス

 何度も書いているように,オープンソースはビジネスタームです。もちろん,それが即「商売」という意味ではありませんが,ビジネスに指向があることは確かです。つまり,何らかの形で「役に立つ」ことが期待されるということであり,それはビジネスの世界では何らかの形で「儲かる」ということを意味します。何にせよ,オープンソースは「ビジネス」的な観点と常に関係があるわけです。これがフリーソフトウエアという観点とは異なる点だということは,前回までにお話した通りです。

 オープンソースで儲ける話については,オープンソースが始まった時からいろいろと語られて来ました。細かい点は別にすると,以下のような考え方があります。

・オープンソースを販売する
・オープンソースのサービスを販売する
・オープンソースを呼び水としてシステムを販売する
・オープンソースを使ってハードウエアを販売する

 というようなものです。

 オープンソースはビジネスに関係がある言葉だとは言え,そのままでは商品になりません。なぜなら,オープンソースはフリーソフトウエアですから,プロプライエタリなソフトウエアのように,「1ライセンスいくら」という形式のビジネスが困難だからです。

 例えば,ベンダーから「1ライセンスいくら」という価格で販売されていたとしても,その販売されたものを他の人にコピーして再配布しても,ライセンス的には何ら問題はありません。と言うより,そういったライセンスのものがオープンソースです。ですから,プロプライエタリなソフトウエアと同じような意味での「不法コピー」というものは存在しないわけですが,そうなると「1ライセンスいくら」というビジネスは,事実上意味を持ちません。そのため,プロプライエタリなソフトウエアにあるライセンスビジネスと同じようなビジネスをオープンソースで行うためには,様々な工夫が必要になります。その詳細や問題点については,次回以降ということにしますが,結論だけ言えば,工夫次第では「オープンソースを販売する」というビジネスは成立します。

 「オープンソースのサービスを販売する」というビジネスには,商用でオープンソースを使っている多くの人がお世話になっているのではないでしょうか。例えば,レッドハットのエンタープライズ版のビジネスはほぼこのモデルですし,多くのベンダーが同様のサービスを提供しています。元々エンタープライズな用途で使われるソフトウエアは,ライセンス料の他にサポート料を取られるのが普通でしたから,そういった意味では実はそれほど新しいビジネスモデルでもありません。しかし,新しくない代わりにわかりやすいですから,確実なビジネスだと言えます。良いビジネスにはイノベーションが必要ですが,過度なイノベーションは顧客を追いてけぼりにしてしまいますから,「わかりやすさ」というのは実は大切な要素なのです。

 「オープンソースを呼び水としてシステムを販売する」というのは,営業力のあまりないSIerにはお勧めのビジネスモデルです。世間から注目されやすい分野のソフトウエアをオープンソースとして公開して,その評判を利用することで営業を行うというものです。これは直接オープンソースでビジネスをするというわけではありませんし,安全確実という類のビジネスモデルではありませんが,営業力をあまり持たないSIerにしてみれば,思いもよらない顧客を得ることができる可能性があります。よく,「プログラマの能力を見るためには,そのプログラマの書いたコードを見ろ」と言われますが,同じことがSIerにも言えわけです。

 あなたがシステム開発の仕事を発注しようとしている時を想像してみて下さい。初めてのSIerしかない時,そして単価も似たようなものである場合,オープンソースのプロダクトを出しているところを選びますか? それともそうでないところを選びますか? もちろん箸にも棒にもかからないようなソフトウエアを出していても意味はありませんが,少なくとも現代の日本では「企業としてオープンソースを公開する」ということは,技術的に自信を持っているということを意味します。つまり,オープンソースを出すということは,良質の「履歴書」を公開しているのと同じわけです。

 もちろんこのことは個人でも言えます。あなたが企業の採用担当だとして,だいたい同じように見える人から誰を選ぶかという場合,オープンソースを公開している人を選びますか? それともそうでない人を選びますか? 公開されているソフトウエアがダメならダメなりに,良ければ良いなりに,「正しい評価」がしやすくなるはずです。またダメなものであったものでも,「みどころ」は評価することだと思います。

 「オープンソースを使ってハードウエアを販売する」というのは,ちょっと誤解を招く表現かも知れません。現代では様々なハードウエアの組み込みソフトウエア(ファームウェア)として,オープンソースが使われています。例えば,最近のアメリカでの携帯電話(スマートフォン)でのLinuxのシェアは近い将来23%になるそうです*1。これはまさに「オープンソースを使ってハードウエアを販売する」というモデルですね。この他にも,各社の出している小さなファイル・サーバーは,大抵LinuxにSambaが載っていますし,デジタル家電にもかなり使われています。

 このように,大きく4つのビジネスモデルを挙げましたが,これらの詳細については次回以降ということにします。今回はここに挙げていない,誰にでもできて結果を出しやすいモデルについてお話します。

*1 2013年,スマートフォンOSにおけるLinuxのシェアは23%に : Open Tech Press