皆さん,本当にお久しぶり。ずっと休載が続いてしまってごめんなさい。実は,3月にとてもひどい気管支炎/肺炎をこじらせてしまい,文字通り何もできずにいました。倒れてから1カ月,やっと調子が戻りつつあるということが実感できるまでに回復しました。でも咳はまだ止まらず,本調子になるまでにはもう少し時間がかかるかなと思います。

 今年度も添削講座を続けて行こうと計画していますが,そこへ日米の文化の違いについてもコメントしていきたいと考えています。と言うのも,日本の「常識」がアメリカでは通じない,アメリカの「あたりまえ」が日本では「ありえない」だったりすることが少なからずあるのです。比較文化なんて大げさなことではないですが,私の観察事項を皆さんとシェアできればと思います。

 アメリカは「人種の坩堝(るつぼ)」と言われ,様々な文化的背景を背負った移民の集合体なのです。元祖イギリス系のほか,イタリア系,アイルランド系の考え方,ユダヤ系(これは人種なのか宗教なのかの議論は今回は横に置いておくとして)の経済観念,昨今の中国系およびインド系の価値観など,多様性に富んでいます。そのうえ,広大な国土では,東海岸,中西部,南部,西海岸のそれぞれに独特な文化があります。

 アメリカ国内の中でも,何が「当然」なのか,基準をどこに設定したらよいのか,コンセンサスが取れていないことが多くあります。だから口約束をしても,後日,「言った」「言わない」でもめることもあり得るため,合意内容を文書に残しておくことの重要性が説かれるのでしょう。

 契約交渉をする際には,「アメリカ人はすぐに契約したり,裁判したがる」とネガティブに捉えず,コンセンサスを取り,担当者が変わっても困らないように記録に残しておくというような姿勢で臨んではいかがでしょうか?

通信インフラが4週間もダウン

 今週のテーマはReliability。でも製品の品質を表す信頼性ではなくて,人間の信頼性について,私の観察を述べます。

 先日,私の郊外にある自宅のルックアウトランチの通信インフラがダウンしてしまいました。ルックアウトランチは,サンフランシスコ(SF)から北西へ100キロほど行った北カリフォルニアのメンドシーノ海岸近くにあります。日米ケーブルや本土-ハワイ間の海底ケーブルの陸揚局から10キロほど内陸に入ったところで,米国本土を横断する太いダークファイバーが目の前を通るという環境です。

 けれども人口密度はきわめて低く,人口400人程度の集落が50キロ間隔で点在するような地域です。おかげでインフラは発展途上国並み。最近かろうじて携帯電話が通じるようになったという状態で,ブロードバンドは夢のまた夢。仕方なく,データ通信には衛星通信(ワイルドブルー)を利用しています。

 3月初めに急にサービスがダウンし,ワイルドブルーのコールセンターに連絡すると,「お宅の地域には保守業者がいません」とあっさり言うのです。インストールはするけれども故障対応はなし? いろいろ調べて,ワイルドブルーの保守受託業者を見つけ,修理の人を派遣してもらう予約をしました。

 もちろん修理の人は下請け業者です。サービス・ダウンから4週間後,ようやく「午前中に来る」という約束で,前日からルックアウトランチに行って待機していましたが,午前11時を過ぎてもまだ修理の人は現れません。11時半になって,オフィスから連絡が入り,「トラックが故障したとかで今日は行かないことになりました」と伝えてきました。

 絶対に仕事の穴はあけない,行くと言ったら必ず行くのが「当たり前」になっている私ですから,「代替トラックがあるでしょう?」とつい考えてしまいます。ところが,この修理業者はそこまでの体制をとってはおらず,今日行くことができないなら,別の日に行けばよいという程度にしか考えていないのです。