前回のデータベース研修に続いて、今回はネットワーク研修の第1日目の内容を紹介しましょう。ポイントは、データベース研修と同様です。新人さんの興味を引く話題から始めること、実際にパソコンを使って体験させることです。ネットワークの仕組を懇切丁寧に講義する必要はありません。そんなことをしたら、新人さんは寝てしまいます。ネットワークを面白いと感じさせ、自ら進んで勉強する意欲を育むことができれば、研修は成功でしょう。それが、なかなか上手くいかないのですが...。

インターネットってどういう意味か知ってますね

 データベース研修と同様に、ネットワーク研修の第一声でもクイズを出題しています。インターネットを知っていますかと質問すれば、新人さんは全員「はい」と言います。その上で、以下のクイズに答えてもらいます。

【クイズ】
インターネットの「インター」とは、どういう意味ですか?
(ア)国際的な(international)(イ)相互の(interactive)(ウ)間の(inter)

 このクイズは、わざと不正解を選ばせる工夫をしなくても、多くの新人さんが間違ってくれます。(ア)か(イ)を選ぶ人が多いですが、正解は(ウ)の「間の」です。2つの高速道路の間をつなぐように、企業や学校などのネットワークの間をつなぐことで、世界中をつないでいるのがインターネットです。このクイズを出題する意図は、実習環境が教室内だけのネットワークだからです。それでは、外部とつなぐには、つまりインターネットとつなぐにはどうしたらよいか、という疑問から研修を進めて行きます。

ネットワークの設定を行わせる

 ネットワークの設定も重要な実習の1つです。新人さんに、IPアドレスやサブネットマスクなどを設定させましょう。この時点では、設定の内容を詳しく説明する必要はありません。IPアドレスと言う番号で個々のパソコンが識別されることだけ教えれば十分です。体験が先で説明が後、できれば説明の後で再度体験させるのが、効果的です。

 ネットワークに接続できた人から、Windowsのコマンドプロンプトでpingコマンドを使って接続のチェックを行わせます。教室内だけの学習目的のネットワークですから、IPアドレスを秘密にする必要はないでしょう。「先生のIPアドレスは、192.168.11.10だよ。ping 192.168.11.10[Enter]と入力して、応答があるか試してごらん」「他の人のIPアドレスを聞いて、pingを試してごらん」。ささいな実習ですが、ネットワークにつながった喜びを実感できます。IPアドレスという識別番号があることを体得できます。

OSI基本参照モデルを考え方のよりどころにする

 全員が無事にネットワークに接続できたら、少しだけ講義を行います。テーマは「OSI基本参照モデル」です。ネットワークの様々な技術やプロトコルを覚えるためのよりどころにしてもらうためです。「ネットワークでは、プロトコルが重要だとよく言われます。送信者と受信者がプロトコル(通信における約束事)を守らないと、つながらないからです。OSI基本参照モデルは、ネットワークの仕組を階層化して整理したものですが、プロトコルの種類を階層化して整理したものだとも言えます」と説明します(図1)。

図1 OSI基本参照モデル

 ここで、プロトコルの階層のイメージを伝えておきましょう。いきなり階層と言われても、新人さんにはピンと来ないからです。プロトコルの階層は、郵便や宅配便に例えるとわかりやすいでしょう。文書や品物は、そのまま送られるわけではありません。何らかの梱包がなされてから送られます。速達、書留、クール便、ワレモノのような指定もあります。このように、文書や品物に情報が付加されることが、プロトコルの階層に似ていると説明するのです。「例え話をされると、よけいにわかりにくくなる」と言う新人さんもいます。そんな人には、「郵便や宅配便のように人間が手作業で行うことを、コンピュータで自動化したのがネットワークなのですよ。例え話ではなく、手作業の自動化なのだと考えてごらんなさい」と伝えます(図2図3)。

図2 郵便における階層
図3 宅配便における階層

この先の研修の進め方

 どうにか新人さんを寝させずに講義ができたら、後は実習三昧です。実習で体験させながら、様々なネットワークの機能や用語を指導します。実習に使うのは、Windowsが標準で提供しているコマンドです。教室内だけのネットワークでも、先ほど紹介したping、TCP/IPの設定とMACアドレスを確認するipconfig、IPアドレスとMACアドレスの変換を確認するarpなどのコマンドを使って実習ができます。

表1 ネットワークの実習で使う主なコマンド
コマンド体験できること
pingネットワーク接続、IPアドレスによる識別
ipconfigTCP/IPの設定内容、MACアドレスの値
arpIPアドレスとMACアドレスの対応

 教室内のネットワークを使った実習が終わったら、インターネットとつなぐには何が必要かを、新人さんに考えてもらいます。最初のクイズから、ネットワークとネットワークの間をつなぐ仕組やプロトコルが必要だとわかるはずです。そこから話題をルーターに持って行きます。IPアドレスで相手を識別するのは面倒です。そこから話題をDNSに持って行きます。もしも、なかなか新人さんが発言してくれない場合は、講師が「Webページを見るには、どんな仕組やプロトコルが必要かなぁ」などと言って発言をうながします。それでもダメなら、講師が一人芝居のように自分で質問して自分で回答してでも話題を発展させて行きます。

...ネットワーク研修の1日目は、こんな内容なのですが、いかがでしょう。皆様のご意見をお待ち申し上げます。