あるブログの中で,気になった記述がありました。

 そこでは,書店のおすすめPOPが手書きではなくパソコンで整理されたものだったら,本は売れないだろう。スーパーのチラシが整然としたものだったら,売れないのではないのか。それならば,デザインって本当に必要なのだろうか? という疑問を投げかけていました。

 デザイナーでもない,素人の書店の人の手書きのPOPは,パソコンできちんとデザインされたPOPよりも売れる,という現象があります。このブログの著者は,手書きのPOPのほうが垢抜けない,ダサイデザインであるのに,売れてしまっている。デザインっていったい何なのだ? という疑問を呈しているわけです。

 経営者の中にもこのようにちょっと勘違いをしている人が多く見受けられる気がしています。私は,この手書きのPOPのほうが,実は良いデザインなのだと思っています。手書きというのは,本を推薦している店員さんの思いがダイレクトに伝わってきます。小さいイラストやハートや「!」などの記号とともに,おすすめの言葉(コピー)が心からのものに感じられ,伝わってきます。

 一方,パソコンや印刷でセンス良く紹介されても,どこか出版社サイドからの販促ツールという見方をどうしてもしてしまいます。店頭での購買率を高めるのがPOPの機能であるならば,かっこ悪くても素人のデザインが売り上げを伸ばすのであればそれは「良いデザイン」なのです。

 スーパーのチラシもごちゃごちゃしているようで,実は計算されたデザインだと思います。あの親しみやすい書体やキツイ色遣い,視線をコントロールするレイアウトの導線が,安値感,お買い得感,他店との差別感,ワクワク感などを演出しているのです。スーパーのチラシは単に「垢抜けないデザイン」であるだけで,決して「悪いデザイン」ではないのです。

 もちろん「垢抜けないデザインは良いデザインだ」ということではなく,デザインがダサイために,全然ものが売れなかったり,企業のイメージがさえなかったりしている例はたくさんあります。それではこの違いは何なのでしょうか。