第10回 諸外国はデザインの推進に力を入れているのに…
日本の政治や産業界はデザインのほうを向いていない振り返って,我々の日本国はどうでしょう。経済産業省の「戦略的デザイン活用研究会」のレポートから抜粋しますと,「90年代半ば,国がデザイン振興の『旗振りを止めた』ことから,地方のデザインセンターが相次いで閉鎖し,地方のデザイン事業も下火になり,デザイン団体では,若年世代のデザイナーの入会が減少している」とされています。 一部の大企業以外はあまり戦略的にデザインが活用されてなく,無難なデザインが多く,類似したデザインも少なくない。これは売れた他社の製品に似せれば失敗のリスクは少なくなるだろうという,経営者のことなかれ主義からそうなるのでしょう。経営者のデザインに対する意識がまだまだ低いのではないかと思わざるを得ません。 「消費者のデザインに対する意識が近年高まりつつあるものの,依然として高いとは言えない」ともあります。確かにデザインブームなんてことが言われ,ビジネス雑誌でも取り上げられているようですが,まわりを見回してもあまりぴんと来ない感じがします。意識が高いのはほんの一部の人のようですね。 「デザインの実践的教育があまりなされていないことと,デザイナーのステイタスが必ずしも高くないことにより優秀な人材が確保されていないため,新卒デザイナーの質が低下してきており,企業の採用も外国人デザイナーにシフトする傾向が見られる」。これは本当にそう感じます。美術大学のデザイン科では,造形的な表現の教育に特化し,経営や経済のことなど,これっぽちも教えてくれません。そのまま,社会に出てしまいデザインは経営のための技術であることがわかっていないままのデザイナーがなんと大勢いることか。 国におけるデザイン部署について,「経済産業省のデザイン部門も,局レベルに格上げすることを期待している。 ただ,来年も現状は変わらないであろうと思う」と結ばれています。まあ,そうなんだろうなあ…。と思うしかない日本政府のデザイン政策です。 安くて粗末な品質の中国製品。デザインもださくて,汚い工場で作られているイメージがありますが,そんなことはあっという間に過去のものになってしまうかもしれません。なぜなら中国にはすばらしい芸術の文化があります。彼らの遺伝子の中に眠っているセンスや美意識を中国の政策が引き出すことができれば,きっと世界的にもクオリティの高いデザインが生まれてくると思います。 日本にだって,繊細ですばらしい文化があります。しかし,政治や産業界はデザインのほうを向いていないので,すばらしい人材を生かしきれないかもしれません。日本のデザインのクオリティは,世界でもトップクラスであると,言われますが,一部の大企業の製品や広告が世界的なデザイン賞を取ったからといって,はたしてそれが「日本には優秀なデザイナーがいる」とはいえても「日本のデザインが優秀だ」といえるのでしょうか。 今年1月に大田経済財政相は「残念ながら,もはや日本経済は一流と呼ばれる状況ではない」と述べました。2006年の世界の総所得に占める日本の割合が24年ぶりに10%を割り,1人当たりの国内総生産が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で18位に低下したことを指した言葉です。さらには「我が国は,世界経済のダイナミックな変化に取り残され,今後も成長を続けていく枠組みはいまだにできあがってない」とも。 「世界経済のダイナミックな変化」の中の一つが,「デザインの推進」であることを,どのくらいの政治家が認識しているのでしょうか。
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グラフィックデザイナー。株式会社ノイエデザイン代表。セールスプロモーションデザイン、ホームページ、CI・VI計画、博物館、ショールーム、展示会、サインデザインの企画開発から、ビジュアルコミュニケーション全般のコンサルティングを手がける。日本グラフィックデザイナー協会、日本タイポグラフィー協会、ミュージアムマネジメント協会会員。旧IT Proのリニューアルに参画し、現ITproのトータル・デザインをコーディネートしている。
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