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発注者が仕切れる能力を持つことのススメ

2008/03/12

 「ハードやソフトの調達を含めて、IT部門が仕切れるよう支援していく」。ウルシステムズの漆原茂社長は、アウトソーシングからインハウスに切り替えるIT部門をサポートすることに力を注ぐ考えだ。

 2000年7月に立ち上げたウルシステムズはITの上流コンサルティングに主力を置くが、「ベンダー側ではなく、発注者側のコンサル」(漆原氏)に徹しているのが特色。事業化した根底にユーザーのIT部門が悩んでいることがあったという。「ふわーとしたものをベンダーに出し、全体を仕切れない。なので、ベンダーから製品などを押し込まれてしまっている」(同)。仮に「ベンダーにやられた」「失敗した」と思っても、自社に力がなければ話にならない。

 そこに同社がユーザー側の視点で参画する。「CIOだけではできないので、チームがいる。場合によっては外部の力を借りて、CIOやIT部門の力を強くする」(漆原氏)。こうしたガバナンスを強くし、自分達でやろうというユーザー企業のIT部門が増えていることがあるからだ。別の言い方をすれば、これまでのアウトソーシングではいかんとなり、システム構築の内製を志向し始めたこと。「欧米を見れば、CIOの力が強く、日本のようなITゼネコンは存在しない」(同)。IT部がハードやソフトの調達を含めて、仕切れる能力を持っているからでもある。

 「日本の企業に対して、そこをお手伝いしたい。その価値を認めてもらえると思った」(漆原氏)。「ベンダーのいいなりにならない」という上昇志向のIT部門は「こうしたいとの思い」を強く持ち始めているし、「IT投資は重要で、経営に大きなインパクトを与える」(同)ことが理解されてきたからでもある。ユーザー企業自身が開発したり提供したりする商品やサービスの力を増すうえでも、IT部門にそんな人材が求められてきたという見方もできる。

 だから、ウルは「人月というパワープレイにいくのではなく、付加価値で勝負する」とし、発注者側を強くするサービスを揃えてきたわけだ。守りのシステムより戦うシステム作りで、それを支える戦略から業務、そしてIT活用という流れを一貫して担える人材を育てきた。ノウハウも蓄積してきたので、08年2月からその仕組みをIT部門に提供することも始めた。

 この実践トレーニングには、IT部門が経営層やユーザー部門、ベンダーなど関係者の利害を調整しながら主体的なシステム構築をしていくための、ロジカルシンキングや業務分析、プロジェクト管理のスキルなど、「発注側の仕切る力をアップさせるためのメニューである」(同)。

夢を持つために自社商品開発

 だが、ITコンサルティングだけで事業を急拡大させることはなかなか難しい。社員数140人、うちコンサルタント110人で、06年度の売上高は19億円超、経常利益は2億円超の規模である。単純計算すると、売り上げ100億円にするには5倍の人員が必要になる。もちろん高度な人材がいる。

 そこに、「コンサルで蓄積したノウハウなどを生かした我々発の商品やサービスを作りたい」というITベンチャー的な意欲を示す理由がある。その投資をするために06年2月にジャスダックに公開し、その1つが05年9月から販売を開始した流通業向け企業間取引ソフトである。もう1つがオープンソースの業務アプリケーション。07年12月にその関連事業を展開するケアブレインズの株式を取得(56.3%)、子会社化した。同社は米製CRMソフト(SugarCRM)を扱っており、ウルはそのノウハウを生かしたサービス提供などを考えている。

 こうした事業の売り上げはまだ10%を占める程度。今後どう伸ばしていくかが課題になるが、漆原氏は「大きな夢を持たないとだめだ」とし、自社商品開発にも力を入れる考えだ。

著者プロフィール

田中 克己(たなか かつみ)
 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。  30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在は日経コンピュータで「再生の針路」を連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路〜破壊的イノベーションの時代へ〜」(ともに日経BP社)がある。

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