今回から「オープンソースGTD」という連載を書かせて戴くことになりました,生越昌己です。

 最初ですから,ちょっとした自己紹介から始めたいと思います。

 私は1983年に学校を出て,1年弱ほど鉄構関係の設計ソフトウエアを書く仕事をして後,地元(島根県松江市)のテレビ局に14年勤めていました。と言ってもそのうち12年ほどはコンピュータ関係の子会社を転々とし,最初の数カ月と最後の2年ほどがテレビ放送に近い仕事でした。その後,9年ほどオープンソースの会社の役員を勤め,去年の4月にWASP株式会社を設立しました。

 この間,日本Linux協会を立ち上げたり,日本医師会のオープンソース・プロジェクトにかかわったりしました。私を御存知の人はこういった「政治的」動きで知っている人がほとんどだと思いますし,実際経営や営業的なことをやっていることも少なくありませんが,実は普段は普通の技術屋です。

 「プログラマ」と書かないでわざわざ「技術屋」と書いたのは,普段の仕事の軸足はプログラマですが,ハードウエア~コンサルまでいろいろやることが多いからです。親には「箸をにぎるよりも先にドライバーをにぎっていた」と言われていましたから,物心ついた時には機械いじりをやっていたようで,その頃の意識が残っているようです。

 現在は自分の会社の社長をすると共に,自社(兼自宅)のネットワークやサーバーの管理,ソフトウエア開発をしています。また,情報処理学会規格調査会のCOBOL委員会の「オブザーバ」になっています。まぁオブザーバと言ってもやることは委員と同じなんですが。

 さらに詳しいことは,私のホームページでも見て下さい。

この連載について

 私がこの連載のテーマとして考えていることは,「オープンソース世界とその外との間」あたりから見たIT業界とその業界人へのメッセージです。

 私はかつて,「Linux TODO」という連載を書いていました。それはまだLinuxが今のように普及する前で,まだ「ハッカーのおもちゃ」だったLinuxをいかにして普及させるかという,そういったことの「TODO」を挙げて行くという連載でした。それから月日は経ち,御存知のようにLinuxは広く使われるものになりました。私がその連載を書いている頃にはまだ一般的でなかった「オープンソース」という概念も広く知られたかのように見えます。

 とは言え,私がそういった世界の完全な「中の人」だった立場から一歩離れた今,あらためてそういった世界を見ると,普及はそれなりにしていますが,やはりまだまだと思うことが少なくありません。むしろ,元「中の人」だったがゆえに,よけいに気になる部分が見えるのかも知れません。ところが,そういった「おかしな部分」に対する問題意識を持ちつつ「愛」を持って書かれた評論の類はあまり見かけません。オープンソースというものは,「アンチと信者」あるいは「無知」によって語られているようにさえ見えます。

 もうちょっとズームアウトして見てみましょう。今やマイクロソフトがオープンソースプロジェクトを始めてしまうという時代です。ですから,IT業界はオープンソース・ソフトウエアやその周辺と無縁には存在しえないと言っても過言ではありません。そして,「オープンソースの世界」と呼ばれるものは明らかに「ITの世界」に含まれるもののはずです。ところが,人とかソフトウエアや技術のような直接的に関係の深い部分以外は,なんとなく別世界のようにも見えます。

 さらにズームアウトして見れば,現代社会はITなしには考えられない時代になって来ています。ところがいまだに「IT業界の常識は世間の非常識」な面が少なくありません。

 この連載では,そういった「おかしい」「足りない」「やるべき」といったことを挙げてゆき,「どうする」「どうなると良い」ということを考えて行く。つまり「GTD(Getting Things Done)」となるメッセージを送ってみようという思って,このタイトルとなりました。

 というのは表向きの理由で,坂下さんの連載が「昔の連載の名前 + ちょっと上」となっているのにならったというのが実際なのですが,ちょっと視点を変えて「課題と解決」を考えてみましょうというお話です。