「プライム比率を高めるとともに、(業種別ソリューションの)SIコアを増やす」。08年4月に中堅ソフト会社アルゴ21と経営統合するキヤノンシステムソリューションズ(SOL)の武井尭社長は、システム構築事業における生産性を高めていく策をこう話す。大手ITベンダーの下請け的な立場から脱却し、伍して戦える存在にならない限り、生き残れないとの思いがあるようだ。

 同社の元々の母体は、外販事業を主体に事業展開してきた住友金属工業系ソフト会社。03年1月にキヤノンマーケティングジャパン(MJ)に売却され、08年4月の経営統合に社名をキヤノンITソリューションズに変更する。売り上げは両社を単純合計すると、07年度に約760億円、社員数約3000人の規模になる。

 キヤノンMJがグループの上場会社でもあるキヤノンソフトを含めて、グループ全体でM&A(企業の合併・買収)を活発化させている背景には、06年に打ち出したITサービス関連売り上げを3000億円にするITS3000計画がある。売り上げを06年度の約1600億円(07年度は1710億円)から倍増させるために、M&Aを強力に推し進めているわけだ。生産性を高めることも欠かせない。そこにキヤノンSOLがプライム比率を高め、SIコアと呼ぶ業種別ソリューションを増やす理由がある。

 住金出身の武井氏は売却話が出た当時、「なぜキヤノンMJなのか」と思ったそうだ。カメラや複写機販売のイメージが強かったからだろうが、5年経過した今、ユーザー企業に売り込む際にキヤノン・ブランドが効いてきたという。キヤノンMJが手掛けているドキュメント・ソリューションと、キヤノンSOLやアルゴ21が得意な基幹系システム、基盤系システムのノウハウを組み合わせたソリューションは差異化の有効な材料になってきた。「この2つを結びつけられるITサービス会社は少ないし、ユーザーにこのソリューションを説明すると直ぐに理解してもらえる」と武井氏はメリットを語る。

SIコア作りなどに売り上げの10%を投資する

 こうした上に採算性を高めれば、ITサービス市場で上位に食い込めるチャンスが出てくるとし、数年前から大手ITベンダーらの下請け的な開発業務からユーザーから直接受注するプライムコントラクタへとシフトを図ってきたのだ。結果、プライム比率は住金時代の約40%から今は70%に高まっているという。「採算性の悪いところから、プライム案件に技術者を振り向けるようにした」(武井氏)ことで、業績面でも赤字から07年度に営業利益率8%(39億円)を確保できるようになった。

 プライム比率を高める一方、「横展開できる材料」(武井氏)となるSIコアと呼ぶ業種別ソリューション群を拡充させる。大手ITベンダーとの競合に打ち勝つには、価格に加えて差異化できるソリューションを持つことも重要だからだ。製造業向けにはパッケージ製品を含めて数多く揃えてきたし、金融機関向けは情報系中心にソリューション体系を整備してきた。300から500床の病院向けソリューションも用意し、SIコアの適用率は全体の45%にもなるという。

 統合後、SIコアなどを売り込む営業を約300人配置し、SIコアなどを生かしたプライムへの転換を急ぐ。技術者の人数を増やすことで、売り上げを伸ばす労働集約型では生産性向上に限界があるからだ。

 それが2010年に向けての基本方針になるが、中期経営計画の具体的な内容は統合に煮詰めていくことになる。08年度はアルゴ21との経営統合などがあり、営業利益は営業利益率7.3%(営業利益68億円、売上高885億円)とやや下がる計画。ただし、両社のこれまでの計画を単純合算すると、2010年度に売上高1030億円、営業利益率9%になる。武井氏は「営業利益率10%を目指したが、簡単に10%とは言えない。SIコア比率を高めるための材料作りや人材育成などに投資が必要になるからだ」とし、そこに売り上げの10%程度を投入するという。「冠たる会社にするためには、ES(従業員満足)なくて、CS(顧客満足)なしと思っている」(同)。