読者のみなさんは,どうやって病院探し・主治医選びをしているでしょうか。

 本の買い方や,ホテル・レストランの選び方などがインターネットで一変したように,ようやく病院選びも変わりつつあります。病院検索サイトを通じて「お医者さんの素顔と評判(口コミ・ネットコミ)」が「見える化」することで,「小さな無名病院」が繁盛して「大きな有名病院」が没落することがあり得るのです。

 裏返せば,病院検索サイトをうまく活用するかどうかで,病院経営の成否が左右される時代になりつつあります。

 口コミの件数,および質(1件あたり文字数)でナンバー1の呼び声が高い病院検索サイトQLife(キューライフ.)創設者の山内善行さんのお話を伺いながら,「商売繁盛」につながるネットコミ活用法について考えてみましょう。

ご近所の,通勤通学途上の「私の主治医」を探そう

 病院のデータベースをネットで作ろう,評判をネットで集積しようという病院検索サイトはいくつかあります。いずれも,専門別,地域別に検索できて,最寄り,あるいは通勤・通学途上の名医を探すためのサイトです。無料で閲覧できて,生活者にとって大変便利なサービスなのです。

 中でも,QLifeは,約1万の駅名をトップページ上で即座に指定できて,周辺の病院を地図表示できるので,使い勝手も良好です。この「駅から検索」を検索方法の中心に据えた理由について,山内さんはこう語ります。

「住所での検索も悪くはないのですが,都市部では駅周辺は病院が多いにも関わらず,『目黒駅は品川区,品川駅は港区』など,地名だけでは探しにくいことに気づきました。また,実際に病院に通う際には,最寄り駅,通勤通学先の駅,その途上にある駅を基点にすることが多いはずです。さらには,万一「慣れない出先で体調を崩して病院を探す」需要にも応えられるように,と考えました」

 たしかに,ホテルやレストラン探しでも,駅から探すのが便利なのですから,病院でも同じことが言えそうです。さらに,GPS対応の携帯サイトもあるので,地図やナビの代わりにもなります。新しいサービスでありながら,操作に戸惑うこともないでしょう。

患者の感謝の口コミで「主治医」を応援

 しかし,QLifeの特長は,その使い勝手よりも「口コミの内容と質にある」と山内さんは強調します。

 「医療機関と生活者の距離を縮める」という企業理念を達成するためには,単なる「病院バッシングサイト」になってはいけないと考えたのです。そこで,QLifeでは「感動をシェアしよう!」というサイト理念も併せて掲げ,「こうして私は直した」「お医者さんありがとう」といったポジティブな口コミのみを紹介する方針を決めたそうです。

 ネットコミにありがちな「誹謗中傷」はもちろん「批判投稿」も受け付けないという徹底した運営方針に,ひょっとしたら「生活者よりも病院寄りのサイト」では,といぶかる方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし,よく考えれば,クチコミをしっかり吟味して初めて「生活者に役立つ情報」になることがわかります。医療のネットコミは,温泉旅館やラーメン屋さんのネットコミのように簡単にはいかないのです。

 まず「人によって望ましい医療=気質や体質に合う医療」の中身は異なるので,「全ての人に良い医療」を望むのは難しいでしょう。2:6:2の原則ではありませんが,もし2割の人に有効で,自分自身がその2割と似た気質や体質であったとしたら,たとえ残り8割の人には無意味あるいは副作用のある医療でも,それは「ご当人」には良い医療なのです。だからこそ,その病院が合い,主治医に感謝している2割の「ご当人」が発する「感謝のことば」の方が意味があると山内さんたちは考えたのです。

 また,専門知識性が高い分野でもあるので,ごく一部の知識がない投稿者の非合理な誹謗中傷で,そのお医者さんを主治医として心から信任する2割のご当人(例えば手術前の患者さん)の心が動揺したり,さらに頼りにしている病院の経営まで危うくなっては,まさに「本末転倒」で「ネット上の暴力」に等しくなってしまいます。

 そこで,QLifeでは,サイト開設当初から,お悩みを持ち,すがる気持ちで検索する読者を気遣い,誤解を招く表現を避けるように制限しました。投稿するには会員登録(現在12万人)も必要です。その上で,社内スタッフが二重チェックをした内容だけを画面上に掲出するようにしているそうです。