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「ユーザー企業の経営者にIT活用の重要性を訴える」のが大手ITベンダー・トップの役割ユーザー企業の経営者がITに対する理解度が低いことを、IT業界は声高々に叫ぶべきだーーー。日本ヒューレット・パッカードの社長を07年11月末に退任にした小田晋吾氏は、富士通やNEC、日立製作所、NTTデータ、日本IBMなど大手ITベンダーのトップが結集し、ユーザー企業にIT活用の重要性を説く必要があるという。 日本のIT業界が衰退している1つの理由が、ユーザー企業の経営者がITをいかに経営に活かすかの視点が欠けていることにあると言われている。ITをコストと見て、「後は任せた」と丸投げすることに象徴される。IT業界がそう仕向けたのかもしれないが、IT活用が経営にどう影響するかの説明を怠ってきたこともあるだろう。ハードやソフト販売ばかりになり、顧客視点が欠けていたのではないか。だから、ユーザー企業にITベンダーやコンサルティング会社をコントロールさせることを避け、ベンダー主導型のシステム構築になっていたのもかもしれない。 ITベンダーは「経営者向けセミナーを開催するなどし、経営戦略とIT戦略が密接な関係になってきたなど、IT活用の啓蒙活動に取り組んできた」と主張するだろうが、大きな成果が現れていないのはどこかに問題があるからだ。「ITベンダーは何が問題なのか、見えないことが問題のように思える」(小田氏)。 経営者の中には、話を聞いてもどう取り組むのかが明確に見えてこないこともあるではないか。だから、運用管理など細かなところに目がいってしまう。「障害対策は重要なことだが、IT活用を進化させる取り組みではない」(小田氏)。半面、経営革新を推し進める企業トップには、ITへの理解を深めている人が多いことも事実である。そうした経営者のITに対する考え方や活用事例を含めて、ITが競争力になることを訴えることは欠かせない。上面の話ではだめだし、CIO(情報統括責任者)の役割や存在を知らしめることも必要だろう。 日本HPが07年にCIOを対象に開催したワークショップで、参加したCIOらは、トップのサポートが足りない、困ったときにトップが助けてくれない、CIOの権限が分からない、などといった話が出たそうだ。 こうしたことから見えてくるのは、ユーザー企業の経営者がITに対する考え方を変わらない限り、IT業界も変革できないということ。確かにオープン化の波などでテクノロジーは急速に進歩したものの、それにITベンダーもユーザー企業も追いつけない状況にあるように思える。ソフト会社は売り上げ確保に必死になり、コストの観点からオフショアに走る。自助努力をしているだろうか。オフショアで学べるのはインドや中国の技術者になるし、ノウハウが流出する可能性もある。人材育成に多大な影響も及ぼすだろう。そうなれば、日本のIT産業は悪のスパイラルに入ってしまう。だからこそ、ユーザーサイドの問題点を声高々に提唱する。
目指すべき道を考えるその一方、日本のITベンダーは目指すべき道を真剣に考える必要もある。小田氏によれば、米HPのマーク・ハードCEOは2010年にIT産業の再編があると予想し、市場やテクノロジー、ユーザーの動向などを検討しながら、シナリオを描いて進むべき道を探し出しているそうだ。HPのポートフォリオと新しいテクノロジーから再編時の仮想敵を捻り出し戦略を練り、どんな位置を占めるかも考える。08年から09年にかけて売り込む新製品や新サービスはすでに分かっていることなので、それらを確実に刈り取る策を打ち出すのは当然のことである。 だから米HPは年間30億から40億ドルを投資する一方、成長するBRICsにも拠点作りを推し進め、カバーするマーケットを広げている。もちろん、日本のITベンダーもそうした取り組みをしているのだろうが、「どこに行くべきかが、頭の隅に追いやられているのはないか」(小田氏)。計画を作成しても実行するかが問われる。日銭を稼ぐことで精一杯で、しかも縮む国内市場でパイの奪い合いになれば疲弊するだけだ。 それでも、ITベンダーの経営者は明日の姿を考えることを怠っていいはずはないだろう。経営者に対する株主らの目は厳しくなっているが、IT産業に夢がなくなれば、人材は育たないし、今の技術者のやる気をそぐ。「グローバル・スタンダードなソフトやハードを開発する」と、意気込む技術者が育つ環境にしてほしいものだ。 著者プロフィール田中 克己(たなか かつみ)日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。 30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在は日経コンピュータで「再生の針路」を連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路〜破壊的イノベーションの時代へ〜」(ともに日経BP社)がある。 |