OSSセンターの姉崎章博です。先日(2007年12月8日),九州で初めてのオープンソースカンファレンス2007 Fukuokaが開催され,そこで,IPA OSS BOOKS「オープンソースで構築!ITシステム導入虎の巻」の紹介をさせていただきました。

 前回のタイトルである「OSSのメリットと導入ノウハウを社内に理解してもらうには」でエントリさせていただいたせいか,おかげさまで満員御礼が出るお申し込みをいただきました。狭い場所で申し訳ありませんでしたがお集まりいただいた皆さま,ありがとうございました。

 前回も「けっこう多い,GPLに関する間違った認識」というお話を書かせていただきましたが,会場での質問にもオープンソース・ライセンス(以下OSSライセンス)に関するものが多くありました。ご質問の多かった箇所を再度「虎の巻」本から抜粋して下記にOSSライセンスの触りの紹介をしたいと思います。

利用者はOSSをライセンス不要で使用できるのですか?

 虎の巻本の「第1章 ITシステムのあり方を変革するOSS」でOSSの適用拡大の原因の一つとして,OSSライセンスの商用ライセンスとの違いを図のように説明しています。

 そもそも「ライセンス」とは,特許権,商標権,著作権などの権利者から,権利の(一部の)利用を「許諾」してもらうことです。

OSSと商用ライセンスの違い

商用ライセンスとOSSライセンスの違い
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 この図で「使用」と「利用」と使い 分けているところがポイントです。

 商用ライセンスは,プログラムの実行,つまり,「使用」のためにライセンスを購入して実行するのが一般的です。それに対して,OSSライセンスでは,「使用」のためにライセンスが必要なものは,まずありません。

 では,OSSライセンスは何を許諾するライセンスかというと,使用するプログラムのソースプログラムを改変・再頒布する際の許諾内容を記述したものです。この改変・再頒布の行為をここでは「利用」と呼んでいます。

 これは,プログラムを著作物と考える著作権法で規定されている著作権者の権利である「複製権」「翻訳権」「公衆送信権」などの権利をプログラムに対して行使すること,つまり,「利用」に対する許諾となります。

 会場でも質問がありましたが,この考え方は,OSSのライセンスの種類によりません。

 ただし,本の脚注には書いてありますが,OSSといっても,商用ディストリビューションのように,OSSを含み,かつ商用ライセンスのソフトウエアが混在するものは扱いに注意が必要です。含まれているOSSはOSSのライセンスに従えばよいのですが,商用ディストリビューションとしては商用ライセンスに従う必要があります。安易に商用ソフトウエア部分までOSSと同列で扱わないように気をつける必要があります。