ウィルコムのスマートフォン「Advanced/W-ZERO3[es]」(通称アドエス)をゲットしました(写真1)。学生割引のキャンペーンがあり、大学院生の私は実質無料で手に入れられたのです。 今回は、このアドエスを使った感想と私がアドエス向けに作ったプログラムについて書きます。

写真●私が所有するモバイル機器
写真●私が所有するモバイル機器
左から、ウィルコムの「Advanced/W-ZERO3[es]」、NTTドコモの「P902i」、米パームの「PalmZ22」。
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 アドエスを使ってみて便利だと感じたのは、ブラウジングの機能です。アドエスにはブラウザ「Opera」が標準搭載されています。最近の携帯電話機ではフルブラウザは珍しくはありませんが、アドエスはほかの携帯電話機以上にPCに近い環境で使えます。ファイルのダウンロードやアップロードはもちろん、Flashを使ったサイトも閲覧できます。

 また、LAN環境のない場所でも携帯ネットワーク経由でブラウジングできるというメリットがあります。つくば市には無線LAN「FON」のアンテナが多いのですが、使えない場所ではアドエスの便利さを実感します。先日も、近くの回転寿司店で新しく「トルティーヤロール」という新メニューがあった時に、アドエスからWikipediaにアクセスして、トルティーヤとは本来どのような料理かを調べられました。

 もっとも、携帯電話機と比べて不便な点もあります。一番不便なのは、先行入力ができない事です。例えば、私が使っているNTTドコモの「P902i」では、「SoftKey2」「矢印の下」「決定キー」「矢印の下3回」「決定」と順に押せば、乗り換え案内のページを開けます。覚えておけば素早く操作できますし、ポケットの中で画面を見ずにメールを書くこともできます。これができるのは、先行入力した操作が、後で有効になるからです。

 一方、アドエスではこれができません。Windowsをベースにしたアドエスでは、プログラムを起動している間に入力した操作を起動前に使用していたウィンドウの操作と見なすからです。例えば、メールを受信しようと思い、「SoftKey1」「SoftKey2」「右矢印」「決定」と操作すると、意図と違って連絡先が開かれてしまったりします。アドエスを使う時は、画面を見て処理の進行具合を確かめながら操作する必要があります。

ポケットの中で動くメールサーバー

 さて、アドエスを使っていくうちに、アドエスでやり取りするメールをPCでも読みたいと思うようになりました。ウィルコムのメール機能には、受信したメールをほかのアドレスに転送する機能があります。転送先にPCのアドレスを設定しておけば、アドエスで受信したメールを後でPCからも見られます。私はGmailにメールを転送して、後からGmailの検索機能で携帯に届いたメールをまとめて見ることにしました。

 さらに、アドエスから送信したメールもPCで見たいと思いました。ところが、ウィルコムのサーバーから別のアドレスに転送する機能はないようです。そこで、アドエスからメールを送る時は、BCCにGmailのアドレスを書いてメールを送るようにしました。しかし、この方法はあまりよくありません。メールを出す度にBCCにもアドレスを入力するのは手間になりますし、うっかり書き忘れるとそのメールは残りません。

 そこでスマートフォンとしての機能を生かして、アドエス向けのプログラムを作ることにしました。アドエスにプログラムを搭載すれば、機能を拡張できるのです。ウィルコムのメールサーバーが送信メールを転送してくれないなら、自分でアドエス上にメールサーバーを作ってしまおうという作戦です。

 アドエス用のソフトウエア開発は、Windows用の「Visual Studio」で行える上、装備されているエミュレータを使えばPC上でデバッグできます。このため、簡単にアプリケーションを作れました。こうして私のアドエスは、ポケットの中で動くメールサーバーになりました。通常メールサーバーは、データセンターのラックサーバーにあるUNIXマシンで動かします。私が作った簡単なソフトとはいえ、小さなアドエス上で動くことに、大げさですが感動しました。

 私はこのアドエス用メール中継サーバープログラムに、「SMTProxy」という名前を付けました。私のサイトで公開予定ですので、デバッグを兼ねて使ってみたいという方がいらっしゃいましたら、アクセスしてみてください。