2007年12月5日,経済産業省は家電リサイクル法に基づき,家電量販のコジマに対して異例の再勧告を実施した(詳細は経済産業省のWebページを参照してほしい)。

 筆者は,この再勧告はコジマにどんな「負の影響」をもたらすだろうか,とテーマを設定した。量販店は顧客との持続的な関係(リレーションシップ)醸成は必須のものである。そのリレーションシップ醸成にどんな影響を及ぼすか。例えば,来店する顧客数は減るだろうか。

 多くのメディアは「被害者の見えない事件」と看過しがちだ。そこで筆者は,今回の家電リサイクル法違反について,制度に欠陥が含まれている可能性も考慮に入れながら考えてみた。

発想の原点

 家電量販店における顧客とのリレーションシップ醸成というテーマについて,筆者には原点とも言える体験が二つある。一つはデオデオ(旧ダイイチ)にまつわるものである。

 その体験を得た当時,筆者は埼玉県狭山市に住んでいた。団地の近くにダイイチのフランチャイズ店舗があった。ある日,我が家の洗濯機が洗濯中に故障した。妻はダイイチの店舗に修理を頼みにいった。当時ダイイチは部屋から一番近い家電店だった。ただ,その洗濯機はダイイチで購入したものではなかった。

 ダイイチの店員は妻の修理の依頼を確認すると,一枚の地図を渡してくれた。「洗濯機が故障して洗濯ができないのでお困りでしょう。この地図に近辺のコインランドリーの場所が書いてありますから,洗濯はそちらでなさってはどうでしょうか」と妻に言い添えた。修理が完了するまでの1週間,妻は車に洗濯物を積み,その地図に載っていたコインランドリーに通った。

 その後しばらくして,自宅の炊飯器が故障した。妻がダイイチに故障した炊飯器を持ちこんだところ,店員は修理に出している間使ってくれとばかりに炊飯器を貸してくれた。筆者が夜遅く家に戻った際,見慣れぬ炊飯器がダイニング・テーブルに置いてあったので,妻に聞いたところ知ったエピソードである。

 家電製品の「故障」の際に厚遇されたことで,妻はすっかりダイイチのファンになっていた。

 実は,洗濯機の故障を直す際に,ダイイチの修理担当者はちょっとしたヘマをやっていた。本来であれば,もっと短期間で直っていたはずの故障だったのだ。しかし妻は厚遇された体験から,そのヘマを指摘し非難するということはしなかった。なぜなら,ダイイチのファンになっていたからだ。