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矢沢久雄のソフトウエア芸人の部屋

ライター矢沢の著作日記[12] 夢の印税生活

2007/12/25 ITpro

 「矢沢さん、ライターやってるんですって。いいなぁ。夢の印税生活じゃないですか!」と言う友人が多くいます。これは、誤解です。コンピュータ関連のライターは、残念ながら夢の印税生活と呼ばれるほど儲かりません。夢の印税生活は、「夢」なのです。今回は、ライターの収入についてお話させていただきます。これからライターをやってみたいと思っている人に、少しでも参考になる情報を提供できれば幸いです。

ライターって儲かるの?

 ライターでどのくらいの収入が得られるかは、人によって様々でしょう。私の経験の範囲では、コンピュータ雑誌やWeb記事の原稿料は、1ページあたり1万円~3万円です。コンピュータ書の印税は、定価の8%~12%程度です。原稿料を2万円/ページ、印税を10%として、年間の収入を計算してみましょう。

【雑誌やWeb記事】
10ページ/月×2万円/ページ×12ヶ月/年=240万円/年

【書籍】
2,000円/冊×印税10%×売上3,000部/冊×2冊/年=120万円/年
 ライターの収入の合計は、年間で240万円 + 120万円= 360万円になります。この数字を、どう思われますか? 「なかなか高収入だなぁ」ですか、それとも「意外と少ないなぁ」でしょうか。私は、コンピュータ関連のライターとしては、かなり多く書いている方だと思います。ですから、年間360万円というのは、たくさん書いているライターの収入です。

好きな言葉は「増刷」です

 先ほどの計算結果を見ると、雑誌やWeb記事の収入が、書籍の収入を大きく上回っています。毎月10ページの記事(10ページ×12ヶ月=240ページ)の方が、年間2冊の書籍(1冊あたり約240ページ×2冊=480ページ)より儲かるのです。これは、1冊あたりの書籍の売上(初版の発行部数)を3,000部として計算したからです。「やけに少ないじゃないか」と思われるかもしれませんが、最近のコンピュータ書としては妥当な数字でしょう。

 悲しいことに、書籍の売上は、年々減少傾向にあります(雑誌も同様です)。その大きな原因は、Webから情報を得る人が増えているからでしょう。特に、コンピュータ技術の情報は、Webから得る人が多いようです。そのため、書籍の初版の発行部数が、3,000部という小さな値に落ち込んでいます。出版社さんにお聞きしたところ、定価2,000円の本を3,000部売るというのが、ギリギリの損益分岐点だそうです。

 収入だけを考えたら、雑誌やWeb記事の仕事だけをしていた方が得でしょう。売上に関わらず、原稿料がいただけるからです。ただし、書籍には、雑誌やWeb記事にない楽しみがあります。それは、増刷です。増刷! 増刷! 増刷! 何と素晴らしい言葉でしょう。 初版が3,000部なら、1回の増刷で1,000~3,000部程度の収入が追加されます。

 増刷は、ある日突然やってきます。出版社さんから「増刷です。何か修正事項はありませんか?」というお知らせが届きます。「○○ページの△△を修正してください」これだけのやり取りで、20万円~30万円の収入が舞い込みます。まるで夢のようです。もしも「色紙に好きな言葉を書いてください」と言われたら、私は迷わず「増刷」と書きます。このごろ、あまり増刷の連絡をいただけないのですが...。

雑誌記事の再利用はラッキー!

 雑誌記事にも、副収入が得られる場合があります。雑誌記事をまとめたムックが発刊されることがあるのです。1ページあたり1,000円~2,000円程度の原稿料がいただけます。金額は多くありませんが、何もしなくてお金がいただけるのですから、本当にラッキーです。

 「ムック(mook)」って何だかご存知ですか? 雑誌(magazine)と書籍(book)を組み合わせた言葉です。見た目は、雑誌のようなサイズですが、雑誌より販売期間が長くなります。月刊誌の販売期間は、当然ながら1ヶ月ですが、ムックにはその制限がありません。書籍には広告を掲載できませんが、ムックには掲載できます(広告収入は、出版社さんにとってのメリットです)。ムックにも増刷があります。

 ムックに関しては、私は、究極の選択をせまられたことがあります。某コンピュータ雑誌に連載していた記事が、めでたくムック化されることになりました。ただし、雑誌に掲載した記事だけでは、ページ数が足りないので、連載10回分ほど書き足すことになりました。無事に書き終わったとき、「矢沢さん、10回分の原稿料と印税のどちらがいいですか?」と出版社さんから聞かれました。

 私は、悩みました。10回分の原稿料は、10回×8ページ×2万円=160万円です。印税にすると、2,000円×10%×3,000部=60万円です。もしかして、10,000部ぐらい売れたら、印税は200万円になります。しかし、雑誌記事をまとめて加筆したムックは、そんなに売れないでしょう。私は「原稿料でお願いします」という返事をしました。

 ところが、このムックは、増刷がかかって、何とビックリ20,000部も売れてしまったのです。もしも印税を選んでいたら、400万円の収入です。「原稿料でお願いします」という弱気な言葉が、400-160=240万円の差になってしまいました。出版社さんは、ムックが売れたお祝いの会を開いてくれました。宴席に招かれた私は、「今夜は、240万円分飲ませていただきます」と挨拶しました。

ライターだけで食べて行くのは、ちょっと心配です

 夢の印税生活というわけにはいきませんが、がんばればライターだけでも何とか食べて行けるでしょう。ただし、コンピュータ技術に関するライターを目指すなら、ライターだけというのは、ちょっと心配です。実際の開発の現場で仕事をしていないと、何と言いましょうか、技術者としての勘が鈍るような気がするからです。私は、それが心配で、仕事をライター1本にしぼることができません。

 私には、小さいながら自分の会社(株式会社ヤザワ)があります。そこでは、パッケージ開発とシステム受託開発の仕事をしています。いい年こいて、プログラミングをしているのです。プログラミングによる収入は、年収の20%程度に過ぎません。でも、開発の仕事をしているからこそ、私が書く文書に臨場感が生まれるのだと信じています。こんなことを言うと、出版社さんに怒られてしまうかもしれませんが、私の本業は、プログラミングです。私は、プログラマです。増刷という言葉が好きな、ちょっと変わり者のプログラマです。

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