11月9日、NHKの「特報首都圏」という番組を何気なく観ながら仕事をしていた。ナレーションが聞こえてきた。「若年者で結核に感染する事例が増えている」という内容だった。「感染者にはいわゆる『ネットカフェ難民』に類するフリーターが目立つ」。ナレーションはこう続けられた。

 続いて筆者はテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」を観た。「近々法律が改正されて、法定の最低賃金が上昇する。人件費の上昇分は生産性の向上で吸収するしかない」。そんな内容のインタビューが放映された。インタビューで答えていたのは、パートやアルバイトを多用しているという企業の社長だった。

 感染症、そしてパートやアルバイトといった雇用形態の増加。これら二つの話題は、コンタクト・センターのマネジメントに深く関わるテーマである。

コンタクト・センターと感染症対策

 筆者は過去に何度かコンタクト・センターのマネジメントに関わってきた。その立場はセンターのマネジャ、マネジメント・アドバイザー、センター立ち上げ時のコンサルタントなどさまざまだが、必要な知識やノウハウは共通である。

 その経験から筆者が世に提示したいのは、感染症対策をマネジメントが日頃留意すべき必須項目として加えることだ。コンタクト・センターは通常のオフィス・ワークとは少し異なり、数十人、数百人規模の人々が一カ所に集まって同質の仕事を担うという特質がある。だからこそ感染症対策は必須の管理事項なのだ。

 昔、筆者はサイテル・ジャパンというコンタクト・センター代理店の仕事をマネジメント・アドバイザーとして手伝っていた。そのサイテル・ジャパンは一時期MSNの顧客サポートを担うコンタクト・センターを運営していた。元々はNTTテレマーケティング(現NTTソルコ)が英国のエージェンシーを仲介者として受託していた案件だったが、そのエージェンシーがサイテルの米国本社に買収された関係で、サイテル・ジャパンが日本のMSNのコンタクト・センターを担うことになったのだった。

 筆者はマネジメント・アドバイザーに着任直後、そのセンターを訪れて、マネジャに質問した。「従業員の感染症対策は実施していますか」と。なぜコンタクトセンターに感染症対策が必要なのかは、経験豊富なマネジャだったら容易に理解してもらえると思う。

 インフルエンザが流行したとしよう。多数のエージェントやスーパーバイザーがそのインフルエンザに感染すると、欠勤者が多数出ることになる。予定した勤務シフトに穴が空く。専門用語を使えば、adhesive ratio(出勤計画充足率)が達成できない、ということになる。当然、センター運営に支障が出る。待ち呼が多くなったり、話中が頻発したりする。結果、顧客サービス・レベルの低下を招く。

 筆者はアドバイザーとして、少なくとも次の二つのことをエージェントやスーパーバイザーに徹底するよう進言した。(1)出勤時に各自の健康状態を確認すること。(2)感染症の症状が自覚できる人には勤務を停止してもらうこと、である。小学校のように、インフルエンザの感染が拡がったからといって学級閉鎖とか学校閉鎖といった措置を執ることはできない。だからこそ、センター・マネジャは従業者の健康管理に深く関与する必要がある。