来る2007年11月8日から3日間にわたって,日本財団が提供する公益事業のコミュニティサイトCANPANが主催する「3つの大賞」授賞式が開催されます。これは,CANPANのネットワークを活用している「CSR活動と情報公開に優れた企業」「公益情報の発信に秀でたNPOや個人」「パートナーシップを発揮した企業とNPO」を表彰するものです。

 CANPANオープン当初は「公益というお固いテーマで情報を発信する人がいるのか?見に来る人がいるのか?」と大いに不安もあったようです。しかし,今では,1695ものブログサイトが情報発信を続けて,月間訪問者数が約114万人,月間閲覧数が約467万ページを超える人気サイトになりました(いずれも2007年9月末現在)。

 昨年に続いて,私はCANPANブログ大賞の審査委員長を拝命しました。そして,第1回受賞者とパネルディスカッションもご一緒して「CANPANブログ大賞2006受賞作に見る公益ブログの可能性」について再認識したことを思い返しました。今後,企業経営において「心ある公益ブロガーの視線」は無視できないものになるでしょう。

 特に,企業経営者や幹部が注目すべきは,今年から新設された「CANPAN CSR大賞」でしょう。これは,インターネット投票を通じて市民が「ベストCSR企業!」を選ぶ,日本で初めての試みです。いずれは,このCSR大賞が企業イメージやブランド力を証する重要なステイタスになるはずです。

「CANPAN第1回CSRプラス大賞」候補33企業からネット投票

 CANPANのメニューの重要な1つ「CANPAN CSRプラス」は,「CSR(企業の社会的責任)に関する企業の取り組みのデータベースや,関連ニュースリリース,基礎知識や最新傾向がわかる編集部レポートなど,企業と市民が『CSRでコミュニケーションする』サイト」です

 今回CSRプラス大賞の候補企業としてネット投票の対象に選ばれたのは,以下の33社。東証一部上場企業から15社,非上場中堅中小企業から18社が選ばれています。

旭硝子株式会社,株式会社アレフ,イートス株式会社,岡村印刷工業株式会社,奥田建設株式会社,株式会社尾鍋組,カシオ計算機株式会社,株式会社河合楽器製作所,関西電力株式会社,九州電力株式会社,コマスマーケティング株式会社,株式会社コミュニティタクシー,株式会社サカタ製作所,サッポロホールディングス株式会社,株式会社サンキュードラッグ,市民生活協同組合ならコープ,積水ハウス株式会社,ソニー株式会社,大日本印刷株式会社,太平洋セメント株式会社,株式会社大和証券グループ本社,株式会社タカミヤ,道栄紙業株式会社,凸版印刷株式会社,奈良中央信用金庫,日本電気株式会社,富士ゼロックス新潟株式会社,株式会社富士メガネ,株式会社プラスヴォイス,マツダ株式会社,三井物産株式会社,三菱電機株式会社,株式会社リバイブ(50音順)

 上場企業の15社は,CANPAN CSRプラスが実施した「上場企業のCSR情報公開度調査」の上位企業が順次選ばれました。

 非上場の18社は,全国6カ所の「中間支援組織:NPOへの支援など行政と地域の間にたって様々な活動を支援する組織」が推薦した各3社が選ばれています。

市民の声も伝えるネット投票は票が集まる

 CSRプラス大賞候補の企業33社に対して,2007年9月14日(金)~2007年9月30日(日)までネット投票が行われていました。まだ第1回で知名度も低く,期間も短かったにも関わらず,実に2万174名もの投票が寄せられたそうです。

 私も個人的に「尊敬する企業」がリストに入っていたので投票をしてみました。しかし,ただ選挙のようにネット投票するわけではありません。なぜ,その企業を選び拍手を贈るのか「自分の言葉」で書かなくてはなりませんでした。その理由を書いてみてわかったのですが,心から尊敬をしていないと「なかなか書けない」ものです。

 反対に,理由を書かれる経営者から見れば,企業を取り巻く市民の方々が「自社に何を望むか?どこに賛意と敬意を感じるか?」がわかる貴重な資料になるはずです。「自社商品やサービスに対するお客様の声」は集めていても,「社会的にどんな企業としてあることが尊敬を集め,企業の存続と繁栄につながるかという市民の声」は,ひょっとしたら経営者に届いていないかもしれません。

 もちろん大賞に選ばれるに越したことはありません。しかし「お金では買えない」市民の声を知るだけでも,この候補企業に選ばれる価値がありそうです。

11/9の授賞式で企業CSRのあるべき姿を市民から

 CANPAN第1回CSRプラス大賞の授賞式は,2007年11月9日(金)の14時から17時30分,東京赤坂の日本財団で開催されます。ネットで事前に申し込めば,誰でも無料で参加できるオープンなイベントです。

 この授賞式での注目は,受賞企業の事例発表に加えて「地域展開時代のCSR~情報開示で深める・広める~」と題した記念シンポジウムでしょう。受賞企業に対して,地域のNPO,CANPANのCSR報告書調査員,企業のCSRアドバイザーらが,心からのエールと本音のリクエストを贈るパネル討論です。

 このパネルディスカッションの真の狙いは,「企業が考えるCSR活動」と「市民が期待するCSR活動」とのギャップを明らかにして「企業CSR活動のあるべき姿」を探ることです。

 ただでさえCSR活動や情報公開にも熱心な受賞企業が,この授賞式でさらに飛躍する可能性があります。例えば,CSR担当者のみならず経営のキーマンを参加させて,市民からのエールとリクエストに耳を傾け,即実践していったらどうなるでしょうか?おそらく「嫌々お付き合いでCSR活動をしている企業」との「理念と行動両面」での差はますます開くばかりでしょう。そして,先進企業との差が,企業のブランドイメージの差となって大きく顕れる日が,きっと来るはずです。

 また,大賞受賞企業にとっても,それはゴールではなくスタートとなるでしょう。受賞後もCANPAN CSRプラスなども通じて,活動を進化させながら情報公開をしなくてはなりません。おそらく毎年の授賞式のたびに,過去の受賞企業への情報アクセスが殺到するでしょう。ですから「よき模範企業」として,さらに先を行く必要があるのです。