らでぃっしゅぼーやは,有機・低農薬野菜と無添加食品や環境に配慮した日用品などの会員制宅配サービスの会社です。1988年に「持続可能(サスティナブル)な社会の実現」を理念に掲げた環境NPO(非営利組織)を母体に誕生した,ユニークな企業として知られています。

 同社が企画運営する「おいしくて安全な食べもの」に関するみんなのブログポータル。それが「たべるん♪Voice」です。

 「たべるん♪Voice」は,一見すると「よくある料理レシピ」サイトに見えるかもしれません。しかし,そこには,ブログならではの効果が満載です。料理好きの個人ブロガーを巻き込みながら,生活者目線の社員ブロガー,農家ブロガー,幹部によるオフィシャルブロガーが同心円状にゆるやかに連携する姿は,新しい企業ブログポータルの理想像に近いかもしれません。個人ブロガーを巻き込む集客・販促効果はもちろんのこと,社内ブロガーの情報発信による広報効果や社内活性化効果まで期待できるのです。

安全な食品が知りたい今,最適なブログ向きテーマ

 このブログポータルが人気を博しているのは,何より時流に乗っているからでしょう。昨今の「ゆるやかなエコロジー&オーガニックブーム」に加えて,「海外産の危険な食品」関連ニュースが生活者の意識を変えようとしているからです。

 生活者が「危険な話」のウラを取ろうとする手段は,今ではマスメディアに頼るばかりではありません。まずは,ネットで検索をする人が増えていることは間違いないでしょう。例えば,思わず「無農薬野菜」「有機野菜」「減農薬野菜」「国産野菜」といったキーワードで検索したくなるのは,私だけではないはずです。

 しかし,いざ検索をしてみれば,これらのキーワードは激戦区で,今やネット上でも競争が繰り広げられていることがわかります。主要キーワード広告を「らでぃっしゅぼーや」でも活用していますが,これらの広告費はかなり高額になっているはずです。

 願わくば,検索結果の最上位に「無料」で表示される道を目指したいところでしょう。検索エンジン対策にブログが役立つのは,以前ご紹介した「カメラのキタムラ事例」で見た通りです。おそらく,この「たべるん♪Voice」サイトが活性化するほど,そのリンク効果で「らでぃっしゅぼーや公式サイト」の検索結果の表示順位も上がるはずです。

 また,生活者のインターネットリテラシーが高まるほど,お金にモノを言わせた広告よりも,生活者のネットコミを信じたくなるはずです。特に,「食の安全」に関するものは,企業発の「大本営発表」よりも「ユーザーの声」を気にするでしょう。こうした潮流の変化を考えても,ブログを通じてユーザーの声をいかに集約するかが重要です。

教条的に構えずにレシピ中心のソーシャルメディア

 「たべるん♪Voice」を素晴らしいと感じたのは,有機栽培野菜のサイトに時に見られるような教条的・エコロジー原理主義的な色合いがないことです。いくら重要とはいえ,毎日,地球環境の話や「危険な話」を聞かされていては,毎日見たくはなりませんし,会話もはずまないでしょう。

 そこで,「たべるん♪Voice」では,あえて「らでぃっしゅぼーや色」や「エコロジー色」を前面には出さずに,ネットで人気の「料理レシピブログ」の色合いを濃くしています。その狙いは,一番目立つトップにある「自慢の○○レシピを教えてください」というコーナーや,最新人気記事ランキングを見ても明らかでしょう。

 料理レシピサイトの特長は,何と言っても,日々献立に悩める主婦や主夫が「毎日見たくなること」です。これこそ,「毎日誰かが更新してくれる」ブログポータルにぴったりのコンテンツでしょう。加えて,誰もが知っている料理であっても「ひと工夫」「ふた工夫」すれば,いくらでもバリエーションが考えられ,ネットコミが盛り上がりやすいところも料理レシピサイトの美点です。

 さらに「らでぃっしゅぼーや」にとってありがたいのは,レシピを見れば自ずと食材を意識することになる点でしょう。美味しい料理を支えるのは,やはり素材の力だからです。

気になるキーワードで思わず読みたくなる

 「たべるん♪Voice」を見ると,すぐに目を惹く「デザイン上の特色」があります。それは「気になるキーワード」が,巨大なフォントで並んでいることです。野菜,らでぃっしゅぼーや,レシピ,ゆうき伊賀の里,美味しい,赤ちゃん,妊娠,育児,授乳…,といった具合に,重要キーワードほど,最初に大きく表記されています。

 見た目重視のWebデザイナーなら嫌うデザインかもしれません。しかし,目にした時のインパクトは十分です。まさに「たべるん♪Voice」の特色を印象付けられましょう。ぱっと見ただけで,同社の顧客層なら誰もが「気になりそうなキーワード」が目に飛び込んでくるからです。さらに,検索エンジンのロボットも「大きなテキストを重視する」と言われていますので,検索エンジン最適化効果も狙えるかもしれません。

 これは,単なる画面デザインではありません。サイト設計者は,おそらくブログ記事に書かれるであろう,そして書いてほしいキーワードタグをあらかじめ考えているはずです。その上で,社内ブロガーを中心に書いていただいているのでしょう。これこそ,本来のブログ設計,グランドデザインだと言えます。