前回は,文書添削に必要なノウハウとして5つのテクニックを説明しました。
(2)事実と意見,推定は分ける。 (3)意見,推定と主張には根拠を。 (4)主語を明確化する。 (5)省略しない。 |
また,その他の留意点として,以下も非常に重要な文書のポイントになります。
(1)結論が先,各論が後 (2)大事なことが先,そうでないものは後,どうでもよいことは書かない。 (3)(交渉録的要素が強い報告書や議事録などの場合) 「ペンディング項目を一覧化する」,「決定事項を一覧化する」,「いつまでに決着させるかを明確にする」 |
さて,今回は前回の続きとして,藤井が書いた報告書について,添削のチェックポイントを私が坂本にアドバイスしたときのエピソードを紹介します。
添削するにはチェックポイントがある
芦屋: | 坂本,添削はどう,見せてくれる?元の藤井の報告書と,君が添削して書き換えた報告書を並べて見せてほしい。
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坂本: | ・・・ええ・・・こんな感じですかね。
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芦屋: | なるほど,では,この添削結果を説明してみてくれないか?
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坂本: | はい・・・まず,構造化して,概要と詳細に分離しました。概要には,「大きな問題はなく,このまま進めていくことに問題はない」ということ,「次回の打ち合わせを後日調整」というスケジュールの話しをもっていきました。また,2.の詳細には,先方意見と当方の対応(案)を含めて「a.先方意見と対応」というタイトリングにしました。
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芦屋: | 了解。坂本,いいか。両方を見比べると,君が添削した方がかなり分かりやすいだろ?概略と詳細という具合に「結論や総論」と「各論,個別意見」を分離して表記分けをするだけでこんなに読みやすくなる。
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坂本: | そうですね。
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芦屋: | 読みやすい文書という意味では,雑誌なんかが参考になる。雑誌は大見出し,小見出しを上手くつけている上に,情報のグルーピングが上手いんだ。これは,読者に読みやすくするためだよ・・・ビジネス文書も一緒だ。まず,読んでもらう工夫が非常に重要になる。
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坂本: | それは,そうですね。
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芦屋: | でもな坂本,まだまだ添削の余地はある。
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坂本: | ・・・そうですか。
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芦屋: | そうだ・・・僕は前回5つのテクニックを説明した。でも,残念ながら君の添削はそれを全部網羅できていない。だから,僕と一緒に考えていこう。ところで,坂本,文書をチェックするポイントはどれくらいあると思う?
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坂本: | ・・・そうですね・・・よく分からないな。いろんな目的で,いろんな文書があると思うし。
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芦屋: | そうだ。文書はいろいろな目的,さまざまな内容で表現される。でも,基本的には同じルールでチェックしていけばいいんだ。
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坂本: | 同じルール?
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芦屋: | そう,当然,細かく言うといろいろなポイントがある。学術論文なんかはいろんなルールがあると思う。でも,僕らが書くのはビジネス文書。それも,大半は報告書や議事録,企画書,指示書など,他人に理解してもらうための文書。だから,そういう観点・・・わかりやすく,説得力のある・・・納得感のある文書を書けばよいんだ。だから,そういう観点がチェックポイントになる。
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坂本: | それは,そうですね。でも,どんなポイントが説得力をもって,分かりやすいものに貢献するのか・・・
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芦屋: | 了解。それを説明していくよ。君も知っていると思うけど,僕はこの会社で働く前には教育コンサルタントをしていた。コミュニケーションやヒューマンスキルを指導する立場の人間だ。そして,僕は多くの人が書いた文書を添削する仕事もしていた・・・そして僕は,たくさんの文書を添削してきたのだけど,いつも指摘する内容は同じようなことであることに気づいたんだ・・・つまり,いくつかのポイントを押さえれば,わかりやすく,説得力の高い文書は書けるということに気づいた。それから僕は頭の中にチェックポイント集を持つようになった。
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坂本: | 文書を上手く書くためのチェックポイント集ですか?
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芦屋: | そう。非常に簡単なチェックポイント集なんだ・・・それを暗記していれば,文書を上手く添削できるようになる。当然,それは僕のケースであって君や君を含む他人にもそのまま適用できるかは保障はできない・・・でも,かなり参考になると思うし,たぶん,ほとんどそのまま使えるかも知れないと思っている。
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坂本: | それは,助かりますが・・・でも,僕に教えてもらってよいのでしょか?
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芦屋: | 僕は君に僕のノウハウを伝えていきたいと思っている。だから,君に教えたいと思う・・・君がこれを理解して,自分のものにできれば,君のオリジナルなものを追加して君の部下・・・藤井に伝えていってほしいと思ってる。どうかな,聞いてみたいか?
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坂本: | はい,お願いします。
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芦屋: | では,僕が文書をチェックするときのポイントを言うよ。
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芦屋: | この(1)~(5)が5つのテクニック。前回説明したものだよ。僕はこの(1)~(5)を重視しているけど,さらに,これに加え以下のような基本的なチェックポイントも見てる。
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芦屋: | 僕は本当に多くの文書の赤ペンを入れてきたけど,チェックポイントはだいたいこんな感じかな。これを覚えてくれればよい添削ができると思う。ちなみに,最も大事なのは(10)だ。文書が駄目な理由はだいたいこのチェックポイントに含まれるんだけど,最も駄目なのが,目的,読ませる相手をターゲッティングしていないものなんだ・・・相手不在の文書は駄目文書になるんだよ。
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坂本: | 確かにそれは・・・でも,私はこんなに覚えられないですよ。どんな文書のどの表記がこれらのチェックポイントにあたるのかまだ分からないですし・・・。
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芦屋: | 問題ない・・・君によいものをあげるよ。僕がチェックしているポイントをシートにしたものだ。
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坂本: | それは助かりますが・・・
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芦屋: | 問題ないよ。実は,僕が今使っているチェックポイントは,これまでの僕の上司が教えてくれたものがベースになってる。それに,論理学の書籍などで学んだことを加えて考えたものなんだよ。だから,気にすることはない。前に僕は,仕事上のノウハウは上司から部下へ,先輩から後輩へ伝えていくものだと言った。だから君にも伝えたいと思っている・・・いいか坂本,今から藤井文書の添削の答え合わせをするよ。 |
私は坂本とこんな話をして,自分の頭に中にしかなかった文書のチェックポイントシートを,坂本や藤井のためにはじめて紙に落としました。
非常に単純で当たり前のことしか書いていない表なのですが,これが「文書が上手いと言わせる」ためのチェックポイントシートなのです。
簡単なシートで恐縮ですが,よろしければ,この連載をお読みいただいている方にもお使いいただければと存じます。
芦屋式 ドキュメント・チェックポイント・シート![]() |
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次回は,このチェックシートを使い,具体的に藤井の文書を添削しながら,チェック項目を解説します。
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