Windows Server 2008には「サーバーマネージャ」と呼ばれる強力な管理ツールが付属する。このツールは,サーバーの役割や機能を追加するだけでなく,追加した機能を管理したり,サーバーのヘルス・チェックをしたりできる「管理者のためのポータル・ツール」である。今までの同種のツールと違い,なかなか使いやすいものに仕上がっている。これなら使ってみたいと思う。

Windows NT Server 4.0

 振り返ってみると,この種の「ポータルツール」はWindows NT 4.0の「管理ウィザード」まで遡る。「管理ウィザード」は,複数の管理ツールのラウンチャーで,ログオン時に自動表示することができた(図1)。

図1●Windows NT 4.0の「管理ウィザード」

 従来の管理ツールとの違いは以下の通りである。

・通常の起動方式であるダブル・クリックではなく,シングルクリックで起動。
・起動されたツールはすべてウィザード形式のインターフェースを持つ。

 Windows NT 4.0の発売は1996年,インターネット・ブームの最中だった。Webブラウザによるリンク選択の標準操作であるシングル・クリックを,通常の操作にも導入しようという試みがあった。また,ウィザードは当時のWindowsの最新機能でもあった。

 ただし起動できるツールはすべて専用のウィザードであり,通常の管理ツールは起動できない。そのため,例えばユーザーの追加はできるのに,ユーザーの設定変更も削除もできない。「ユーザーの追加ウィザード」しか実行できないからだ。そもそも,管理ツールを並べるだけなら,スタート・メニューから選択するのも大差ない。マイクロソフトの公式教育カリキュラムでは簡単に取り上げていたが,実際に「管理ウィザード」を使っている人はほとんどいなかったのではないかと思う。

Windows 2000 Server

 その後,Windows 2000では「サーバーの構成」というツールを導入し,管理者がログオンしたときに自動的に表示するようにした(図2)。

図2●Windows 2000の「サーバーの構成」ツール

 「サーバーの構成」は管理ツールのラウンチャーであると同時に,各種のヘルプも装備していた。また,設定可能な役割も大幅に増えた。しかし「管理ウィザード」と同様,「サーバーの構成」から起動できるのは,通常の管理ツールではなく専用のウィザードであった。初期設定には便利かもしれないが,日常の管理には個別の管理ツールを使う必要がある。どうせ通常の管理ツールを使わなければならないのに,初期設定のときだけ専用のウィザードを使うのは,よほど複雑な設定でない限りあまり意味がない。

Windows Server 2003

 こうした反省から,Windows Server 2003では「サーバーの役割管理」が導入された(図3)。

図3●Windows Server 2003の「サーバーの役割管理」ツール

 「サーバーの役割管理」は,以下のように,従来の欠点をある程度解消したツールに仕上がっている。

・役割の追加だけでなく削除もできる。
・標準の管理ツールに対するリンクがある。
・ウィザードを使わずに追加した役割も管理対象になる。
・ヘルプなどの関連リソースへのリンクが充実した。

 「サーバーの役割管理」で役割を追加した場合「サーバーの構成ウィザード」という別プログラムが起動する(図4)。「サーバーの構成ウィザード」自身を直接起動することもできる。

図4●Windows Server 2003の「サーバーの構成ウィザード」

 「サーバーの役割管理」は,標準の管理ツールへのリンクができたことで,日常的にも利用しやすくなった。しかし,ラウンチャーとしての性質は変わらない。つまり「サーバーの役割管理」自身は管理ツールではなかった。結局,熟練者はスタート・メニューから目的とする管理ツールを起動することが多いようだ。

Windows Server 2008

 Windows Server 2008では,「サーバーマネージャ」が実装された(図5)。冒頭で述べた通り,このツールは非常に強力で,これなら実際に使ってみたいと思った。

図5●Windows Server 2008の「サーバーマネージャ」

 まず,Windows Server 2003の「サーバーの役割管理」では,選択できる役割は限定されていたが,Windows Server 2008では制限がない。それならば,コントロール・パネルの「プログラムと機能」(Windows Server 2003の「プログラムの追加と削除」)は不要ではないだろうか。そう思ってコントロール・パネルの「プログラムと機能」を起動したら,サーバーマネージャが起動した。つまり,あらゆる機能はサーバーマネージャで追加するように強制される。Windows標準でないアプリケーションやコンポーネントの削除は「プログラムと機能」から行うのだが,将来的には「サーバーマネージャ」に完全に統合されるかもしれない。

 追加した機能の管理は,サーバーマネージャに組み込まれたMMC(マイクロソフト管理コンソール)スナップインから行う。ラウンチャーではなく,実際の管理ツールが直接組み込まれる点で,従来のツールとは一線を画す。

 さらに,その役割が現在正常に稼働しているかどうかを表示する「ヘルスチェック機能」も内蔵している。これによって,管理者はあるサービスが正しく動作しているかどうかの状況を簡単に確認できる。すべての役割のエラーをまとめて表示してくれるのも便利だ。

 組み込まれている管理ツールは,実際に表示ツリーを展開するまでメモリに読み込まれない。これによって無駄なメモリ消費を抑えているようだ。ただし,ベータ3では十分なパフォーマンスを実現していないため,展開のたびにしばらく待たされるのが気になった。製品化に向けてのチューニングに期待したい。