数学的センス

著者:野崎 昭弘
出版社:ちくま学芸文庫
価格:1050円(税込み)
ISBN-10: 4480090568
ISBN-13: 978-4480090560

 この本は,以前,雑誌「数学セミナー」に連載されていたものをまとめたものです。私の持っているものは,日本評論社が1987年に発行したハードカバー版ですが,最近(2007年3月),ちくま書房から復刊され,現在では文庫で入手可能です。

 内容的には全く古さを感じさせず,読み返してみても面白さは変わりません(だからこそ復刊されたんだと思います)。

 「数学的センス」というタイトルからして衝動買いしそうなくらい魅力的なのですが,内容も期待を裏切ることなく,数学的センスをいろいろな面(判断のセンス,分析のセンス,集中のセンス,「わからない」ということ,など)からとらえたエッセイ集になっています。

 実存した数学者のエピソードや数学の有名問題などが各所にちりばめられており,章ごとに完結しているので,長いストーリーが苦手な方でも通勤電車の中で気軽に読むことができます。

 数式がたくさん出てきて計算用紙が必要ということもなく,数学の本にありがちな,途中から難しくなってついていけない,というタイプの本でもないので,数学嫌いの人でも楽しむことができるのではないかと思います。

 なかでも,「判断のセンス」「分析のセンス」などは,プログラムのアルゴリズムを考える際に参考になる部分もあるかもしれません(ただ,直接的にプログラムに役立つわけではないので期待しすぎないでください)。

 「美的センス」「知的センス」といった章もあり,ここでは(当然ながら)数学の「美的」「知的」センスについて数学を専門とする人たちがどういうものの見方をするのか,ということがわかって面白いです。

 軽く気分転換したいとき,ちょっとした暇つぶし,仕事に行き詰ったとき,冷静さを取り戻したいときなどにいかがでしょうか。

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