海外取引では海外側に開発業務などを委託し,成果物を検収し,その対価として費用を支払うことになります。要求する仕様/品質/コスト/納期とその成果(物)が重要なのはもちろんですが,最近,これらに加えて特に重要と感じているのが「顧客満足度」という視点です。

 今回はオフショアにおける顧客満足度についてお話しします。これは日本でのビジネスにも当てはまることと思います。

「日本企業に満足してもらっている」という誤解

 いろんな海外企業の責任者とお話しすると,「日本市場から継続的に受注することは難しい」という言葉を耳にします。よく聞いてみると,多くの場合,日本からの仕事を一度は手がけた経験があるが,どうも長く続かないようです。

 一般的に,日本企業は実績と信頼関係をベースに仕事を出しますので,前の仕事の成果がよければ次の仕事のチャンスが出てくるものです。だが実際のところ,日本からの仕事にうまく対応できていないために,次の商機を失っている海外企業を目にします。逆に言えば,オフショアをうまく活用できていない日本企業が多いということです。

 日本の企業は,取引関係が長く相手をよく知っていると,比較的遠慮なく話をします。しかし初めての取引先や,ましてや相手が外国の企業となると,慣れていないためフォーマルな硬い対応をとります。

 このため成果(物)が不満足な場合でも,その事実を率直に表明するようなことはしません。体面を重視し,満足しているように振舞うこともあります。不満足と感じているのに,苦情も言わず,さっさと別の企業に切り替えるケースすらあります。このような対応をされた場合,海外企業は本当のところが理解できません。

 海外企業への対応の仕方は,日本の委託元の企業体質によっても異なります。日本側が短期指向の場合は,コスト/納期重視となり,長期指向の場合は長期展望での育成と活用が重要視されます。事業的にコスト削減が狙いの場合と,技術的スキル重視の場合とでも,顧客の要求と満足度のポイントが異なります。

 ある欧米のグローバル企業は,特定業務を海外にアウトソーシングしています。本社機構の責任者の任期は2年で,その期間中に成果を上げることが求められます。そのため責任者はリスクに挑戦しています。たとえ過去に実績があったとしても,業績向上のためには,多少のリスクを冒しても,メリットや効果の大きい新しいビジネスモデルを選択したり,新しい委託先に切り替えることを決断します。

 こうしたダイナミックな決断と行動の中に,欧米型アウトソーシングの強みがあることを実感します。いずれにせよ,アウトソーシングにおいては,ある程度の変化を前提に条件整備することが必要不可欠です。

人間関係がアウトソーシングの仕事を決める

 プロジェクトの実行でつまずいて挫折したり,問題の回復にも失敗した場合,両者の間に悪いイメージが残り,日本側から次の仕事は出にくくなります。意外なことは,海外側の責任者や担当者の多くが,計画を約束どおり遂行し目標を達成したので,自分達には問題はないと考えているという事実です。

 反対に,日本側の担当者は,あのプロジェクトは失敗したと心の底で悩み,相手側の人材に対しても悪いイメージを持つというケースがあります。一般的に,日本側の人々はナイーブ過ぎて,不満に思っている事を相手に言ってよいのだろうかと気にするケースをよく見ます。こうした場合,筆者は,海外側は日本よりドライなので,迷ったり困ったりした時はすぐにface-to-faceで率直に話をすることをご提案しています。

 最終的にプロジェクトが挫折し人間関係が悪化した場合,その担当者のどちらかが交代しない限り次の仕事はないものと思われます。予定の成果が出ずにプロジェクトが失敗したケースを見ると,日本側と海外側の責任者のマッチングが悪い例がよくありました。プロジェクトで一度失敗した海外企業の名は日本側の企業内に知れ渡るため,なかなか次の仕事が出にくいというのもあります。