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2008年度からSIにも進行基準、怒るCFOの真意とは

2007/07/20

 この前、大手SIerのCFOと“SI進行基準”の件で話す機会があったが、彼はその導入に憤懣やるかたなしだそうだ。2008年度から会計処理に導入されるこの進行基準は、システム開発の進捗状況に合わせて売上を“分散計上”するやり方で、内部統制制度と合わせ、経営管理能力に劣るITサービス会社には恐ろしい負担になるだろう。だが、このCFOが怒っているのは、そこではない。

 進行基準の話はこれまでも何度か書いたので、そちらも読んでいただきたいが、要は国際会計基準とのコンバージェンスの関係で、SIの売上についても従来の完成基準から進行基準に変更しなければならない。今では検収書をもらってから売上を計上していたが、これからは毎月投入したSEコストに見合う売上を計上するようになる。

 ちょっと考えただけでも、これは大変だ。プロジェクトに遅れなどの問題が生じ、大量のSEを投入した場合、そのコストに見合う売上を建てるとヘンなことになる。そのコストがプロジェクトの進捗のよるものか、トラブルによるものかを判別し、トラブルなら“損切り”する管理が必要になる。そもそも顧客との商談・契約段階で、詳細な契約書や仕様書を作っておかないと進行基準の採用など不可能だ。

 さらに2008年度と言えば、日本版SOX法の適用初年度。日本版SOX法は「財務報告に係る内部統制」の整備を求める法律だから、当然、進行基準で計上された売上や利益にミスや不正が入る余地をつぶさなければならない。つまり、トラブルをその場で損切りできる仕組みがないと、即、内部統制に重大な欠陥があるとせざるを得なくなる。まあ大変だが、見方を変えると、これで上場ITサービス会社の経営管理、プロジェクト管理は完璧なものになる(はずだ)。

 冒頭で紹介したCFOが怒っていたのは、そのことではなく、進行基準がお客との取引の実態に合わないことだ。SIで作るソフトウエアは完成しなければ“売り物”として意味をなさない。意味のある単位での分割検収ならともかく、まだ検収してもらってもいないのに、毎月売上を建てるなんていうのは不合理とのことだった。それに、まともなSIerなら進行基準ライクな管理会計で統制しており、なにも財務会計でやることもなかろうと話していた。

 おっしゃること、ごもっとも。工事の進捗で形あるものが出来上がっていくビルやプラントならともかく、形が見えず完成できなければ、すべてが無になる恐れがあるのがソフト開発だ。その会計処理で、お客の了解もなく売上を建て、おそらく未請求売掛金の類で計上して、利益も出すというのは確かに不合理だと思う。いくら“利益はオピニオン”と言っても、現実のビジネス、取引実態との乖離があまりに大きすぎる。

 ただ、こうした“不合理な進行基準”の導入は、そこまでしないと財務報告を信用できないという株主や投資家の厳しい評価の反映だと見ることもできるだろう。実際、IT業界、ITサービス業界は不正取引や“予想もしなかった大赤字プロジェクト”が続発したから、株主・投資家からはほとんど信用されていない。本来なら、経営者にやらせておけばよいはずの管理会計的な統制があてにならない、と見なされていると思った方がよい。

 そんなわけだから、株式を上場するITサービス会社で経営管理能力がイマイチだという自覚のある企業は、株主・投資家、そしてマーケットによって経営管理能力を鍛えてもらう機会として、進行基準の導入や内部統制の整備に取り組んではいかがだろうか。私は、資金需要がほとんどないSIerが株式を上場する意味がよく分からなかったが、株式上場に思わぬ効用が出てきたわけだ。

 ところで、経営管理能力があるまともなSIerが“不合理な会計処理”を受け入れてまで上場を続ける意味があるのか。まあM&Aをしないならば、上場している必要はあまりないだろう。ただ、それは別の話になるので、またの機会に。

著者プロフィール

東葛人(とうかつじん)
 「IT業界の最新の話題、ニュースを独自の視点で切る」ことを目標に、ブログを立ち上げたのは2004年6月のことです。以来、ブログサーバーの2度の移転を経つつ、特にITサービス業の課題・問題点をウォッチし続けてきました。ユーザーの視点ではなく、“供給側の論理”と独断で、話題やニュースを騒がしく語ります。

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