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ネット時代の濃密営業の今後(前編)
効率営業と営業事務の効率化とは違う

2007/07/12

 日本はモノ作り成功の裏で,戦略や営業・販売の高度化,営業効率に後れをとったと言われています。同質性の高さにあぐらをかき,プロジェクトマネジメントの高度化にも後れをとった。そう反省(?)して,プロマネの知識体系である「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」命になった時期もありました。しかし,泥臭い現場プロジェクトでの問題点の早期発見や洞察力がなければ,PMBOKもネコに小判です。このような現場力は現場経験で鍛えられるのですが,伝統や文化といった“DNA”に依存する部分も大きいようです。

 日本人は,プランニングの進め方が特にヘタクソです。上流段階で工程を見通すことや,鳥瞰(ちょうかん)的視点で全体を押さえたり,ヘリコプターでグルグル旋回し,例外部分や問題になりそうな所に下りて確認したり,以降の詳細化段階で考えればよい事を切り離したり…。どうもそこらへんが苦手というか,わからない人間が多く,曖昧なままで次の工程に進みます。「失敗しよう!」と思っているかのごとくです。

 そんな意味で,あうんの呼吸や暗黙知コミュニケーションをベースにした濃密性が,効率的営業や営業プロセスの分解・再構築にマイナスになったのは確かです。ところで,「営業効率」や「営業力」とは果して何なのでしょう?

営業のノウハウは密接なやりとりでしか伝承できない暗黙知

 断わる営業とか極端な見込み客選別・冷やかし客排除という,顧客心理に著しく傾注し過ぎた新手の新規顧客獲得手法がもてはやされた時期があります。納得する部分もあります。新規顧客開拓は既存客営業の何倍もの営業コストがかかりますが,顧客がいないデフレの時期は新規開拓を避けて通れません。断わる営業をはじめとする新しい手法は,新規顧客選別で営業コストを低減させるテクニックの一つではあるからです。

 ただし,今日の売り上げと引き替えに明日の顧客を失うリスクに注意しなければなりません。マーケティングが目指すのは,顧客との間に長期にわたる良好な関係を築き,ライフサイクル全体の中でより多くの利益を上げることです。一過的に売り切ってしまう営業なら,断わる営業のような選別テクニックも理解できますが。

 お客様との接触回数や面談時間をどのようにしたら,営業成績が上がるかを会議したり,調査,QC活動を展開する。すると,会社での営業事務作業が多くなり,外に出られなくなる。だから,「SFA(営業支援システム)を導入し効率営業を!」が定番のシナリオです。何回も繰り返すから定番です。禁煙を何回もやるのと同じ類です。やがてSFAの導入がその本質的解決にならないことを悟ると,SFAは埃(ほこり)をかぶります。外出できる時間が増えたからといって,有効な訪問や価値ある面談が増えるほど,ことは簡単ではありません。

「IT化により煩雑で面倒くさい事務作業から解放されるから,人間しかできない企画的で創造的な仕事ができる!」

 そう言って,本当にやれましたか?やれる人間はそれまでもやっていました。時間ができたら,価値のない新たな雑用を作って,忙しそうにするのがサラリーマンの常です。

 商談で外出していれば文句は言われず,移動時間,休憩時間,見積提案書,作成時間,会議時間…,コストの塊です。ここらは見かけのコストですが,多くは野放し状態です。ここらをコントロール可能な状態にして営業コストを圧縮するのは,企業組織として当たり前のことです。

 でも,これらは営業効率を向上するためのエントリーポイントに過ぎません。それとは別に,お客に行けない本質的な問題や有効面談ができないことが最大の非効率営業です。ここらは,売れたか否かという結果で管理するしかありません。この最重要な問題を避けている限り,同じことの繰り返しです。効率的な営業事務処理と効率的な営業とは似て非なるものです。

 営業会議が多いといっても,会議が多いのは日本の伝統です。決めるための会議ではなく,実体はコンセンサス作り・小田原評定です。ですから,結論なんて先送りしてもノープロブレム。斬新なビジネスアイデアについての侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論ではありません。ほとんどは,数字が行くか行かないか,もっと頑張ろうってな会議ですから,話し合いでコンセンサスを作っておけば,いざというとき連帯責任,責任転嫁で問題にもなりません。そんな内向きの村会議です。

 優秀なSEは,通常のSEの10倍の生産性があると言われています。営業マンの生産性の差は,もっと大きいでしょう。営業はお客様との人間関係の維持学です。面談力や,対面でお客様の心理行動を観察・分析する力が,重要なスキルです。ここらをいかに伝承伝播させるか! このノウハウは暗黙知ですから,一緒に行動したり密接なやりとりの中でしか伝承できない部分がほとんどです。

著者プロフィール

 ユーザー企業のIT部門を振り出しに,多数のプロジェクトのシステム・エンジニア,リーダーおよびマネジャーを経験。その後,コンサルティング,IT雑誌等への寄稿・連載,セミナー講師として活躍。現在はSE研修を主軸としています。情報システムが抱える最大の危機は,戦略上流と構築下流との間,経営と現場とITとの合流点である「中流」が詰まって流れが悪くなっていること。SEが勇気を持ち,中流に上がって行かねばなりません。本音辛口カタルシスで “トナチャン”が熱く語ります。

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