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多様性を失った組織(後編)
異質への寛容と進化の逆流現象

2007/07/05

 「異質への寛容を放棄した社会は厚みを失い,多様性という未来への資産を切り捨てた人類は,進化の袋小路へ迷い込む」。好きなフレーズの一つです。

 地球の生態系は,人間が認識しているより遥(はる)かに膨大な多様性によって構成されています。人間にとって役に立つもの,都合の良いものだけを取捨選択し,身の回りに配して一方的に利用するという効率優先の自然との付き合い方では,この多様性は維持できません。そればかりか,人類自体が衰亡減退する可能性も大きくなる,と言われています。

 生物進化も人類社会の進化も,異端異質を穏やかに内包する一種の寛容さによって支えられています。単細胞生物は自然の脅威から身を守るために仲良くくっつき,多細胞になりました。人間は60兆の細胞の協調分散システムとして,機能構成しています。無性生殖で命を繋いできた生命体が有性生殖を獲得してから,進化は急速に複雑化・高度化し,現在の豊潤な生命体が生まれ,種の多様性は爆発しました。

 有性生殖では,役に立たないジャンク遺伝子やマイナスな突然変異なども,表に出ない因子として集団の中にそっとため込まれています。これが未来の環境変化への対応や,新しい能力を身に付けていくための重要なインフラとなっています。

 しかし,人間と共に暮す植物の中に最近,有性生殖から無性生殖への進化の逆流現象が起きているそうです。有性生殖は,多様性を育むための時間とコストがかかる“民主主義”のようなものです。それに対して,効率性を優先した“独裁主義”のような,無性生殖への逆流現象。

 異質への寛容を放棄し,多様性という未来への資産を切り捨てる。これこそ,複雑な要素の巧妙なバランスにより成り立っている地球システムを壊す本質的な環境破壊です。

環境への過剰適応は適応力を衰退させる

 「ガイヤ(地球)を守れ!」は,人間のとんでもないエゴ欺瞞(ぎまん)です。世界の人口は,6月末か7月初めに66億人を突破します。有限な地球資源を,高速かつ大量に人間の望む富に転換し,地球上を高速移動させ消費しています。そんな人間世界は,地球システムの負の圧力を強烈に受け始めている。それが,人間が言う“環境問題”です。

 地球が本来の美しい自然を取り戻したり,人間に搾取されてきた他の生命体が命を吹き込まれることが「ガイヤを守る」ことなら,万物の霊長を豪語する傲慢な人間世界が縮小・消滅するしかありません。そのためには,人類がこのまま好きなように,欲望の赴くまま生きていけば,そう遠くない時点で,有限地球の強烈巨大なプレシャーにより人間世界は縮小され,理想通りの地球になります。それはまさに自然淘汰です。

 着床前診断による受精卵の人為的選択や遺伝子工学は,悠久の時間のなかで育まれてきた進化のメカニズムを破壊します。“現在”への過剰適用や著しい効率化は,“未来”への様々な可能性の放棄です。短期的には成功するが,進化の袋小路に迷い込む衰亡への危うい一歩とも言われています。弱者は必死に生きようとして思わぬ進化を遂げる。環境に適応すればするほど,環境適応力は衰える。

 そう言った意味で言えば,組織を構成する「2:6:2(優秀な人が2割,普通の人が6割,役立たずが2割)」法則における「役立たず」の2割も,ジャンクや異端です。目的が明確な効率的組織は,下の2割を切り捨てます。その人間のキャパシティの絶対値の大きさと,2:6:2のどこに入るかはあまり関係がありません。組織目的に反するマイナス人間でも,環境変化がキャパシティのマイナス値をプラスに転換させることがあります。そうなったときキャパシティの絶対値が大きければ,絶対値の小さいプラス人間より遥(はる)かに役に立ちます。絶対値を大きくすることは至難でも,プラスマイナスの反転は簡単です。逆にプラスの人間でも,組織のモチベーションが下がれば,一気にマイナスへ転落します。

 高度成長時代は,無性生殖のような垂直型金太郎飴企業がうまく機能しました。ムービングターゲット,目的も動く環境変化が激しい今は,垂直 vs フラット,組織 vs 個人,独裁 vs 民主,金太郎飴 vs 多様性,上意下達 vs 自主自立,野球型 vs サッカー型…,というシーソーバランスの重心移動が俊敏にできるかどうか?

 過去の成功体験の路線延長的な,単なるガンバリズムは効果無しです。ニーズや需要の構造が変わってしまっています。そんな危機的な状況では,辺境にある下2割のジャンクから,キャパシティの絶対値が大きい異端者が表舞台に登壇し,脅威を機会に転換するため八面六臂の活躍を見せます。ただし,それはその企業や組織に寛容性や冗長性があればこそ。超効率的で,環境に適応し過ぎた無駄のない組織では,環境適応力は衰退し,組織は煮詰まっていきます。

著者プロフィール

 ユーザー企業のIT部門を振り出しに,多数のプロジェクトのシステム・エンジニア,リーダーおよびマネジャーを経験。その後,コンサルティング,IT雑誌等への寄稿・連載,セミナー講師として活躍。現在はSE研修を主軸としています。情報システムが抱える最大の危機は,戦略上流と構築下流との間,経営と現場とITとの合流点である「中流」が詰まって流れが悪くなっていること。SEが勇気を持ち,中流に上がって行かねばなりません。本音辛口カタルシスで “トナチャン”が熱く語ります。

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