アップルジャパンは「いつもはWindowsを使っているブロガー50名」にMacを活用してもらう「Start Mac体験モニター」キャンペーンを進めています。

 体験モニターといっても,商品開発のためのモニターではありません。各ジャンルで影響力のある人気ブロガーに「Macのファンになってもらう」ための試みです。Mac活用体験を通じて,それぞれのブログで,それぞれの読者に,それぞれの言葉で,「Macの魅力」を伝えてもらうのが主眼です。

 私もAppleのメールマガジンでStart Mac体験モニターを知り,何気なく申し込んでいました。今回,1万4000名を超える応募者の中から思いがけずモニターに選ばれて,ただいま実体験をしている最中です。このモニターキャンペーンには,専用ブログStart Mac Squareを有効活用しながら「Macが好きになる工夫」が随所に盛り込まれていたのです。

Windowsユーザーのブロガー50名にMacを無償貸与

 このStart Mac体験モニターは,2006年秋に続いて2期目です。前回はMacのヘビーユーザーもいたようですが,今回はWindowsを主に活用しているブロガー50名が募集されました。選ばれたモニターブロガーは,無償貸与されたMacを4カ月間自由に試せます。マンツーマンのレッスンでMacを学び,遊びながら活用して,その感動や体験談を,それぞれのブログで発信するのです。

 ご存知の通り,昨今のMacは最先端のIntelプロセッサを搭載しているので,Windowsも一緒に使うことができます。これまで,Macユーザーというと,クリエイターやデザイナーなどのプロか,旧来からの熱烈Mac愛好者,そしてMacのデザインが好きな自宅ユーザーなどをイメージする人が多かったかもしれません。しかし,これからはMacの彼岸に居た(?)ビジネス系PCユーザーまでも振り向いてくれる可能性があるのです。

 私はというと,十数年前まではMacユーザーだったのです。自社のデザイン部門に当時は高価だったMacのクワドラを導入し,敬愛するJohn Lennon Tシャツのデザインを創作したこともあるのです。しかし,仕事の中心がデザインからマネジメントに移り,ビジネスユースに徹するうちに,いつしかWindowsにどっぷりつかっていたのです。とはいえ,モデルチェンジのたびに美しく楽しくなるMacのデザインが気にならないわけはありません。iPodを愛用しつつ,いつかは再びMacに,と思っていたのでした。

 この「いつかはMac欲」が,インテルMacの登場とStart Mac体験モニターとの相乗効果で「爆発した」と思われます。「Start Mac体験モニター業務を完遂後,アップルの承認を経て機材はモニターの方に譲渡」されるという一言が,多くの潜在的Macユーザー予備軍の心に響いたのでしょう。だからこそ,1万4000人以上のブロガーが「われこそは」と応募したのです。

モニターは4カ月に10回以上のブログ記事を書く

 もちろん「モニター業務」というだけあって,求められる条件も甘くはありません。数ある条件の中でも「ご自分のブログを持ち,アクティブに活動しており,期間中に10回以上関連記事を投稿していただける方」という一項が目を引くでしょう。

 4カ月で10回以上なら,1カ月に3回程度。そんなに大変ではない,と思われるかもしれません。しかし,どなたも特別にMac専用ブログを書いているわけではないのです。本来のテーマに沿ったブログ記事を,その数倍も書かなくてはなりません。例えば,私が社長ブログでMacのことばかりを書いていたら,社長が道楽に走ったと思われてしまうでしょう。

 しかも,慣れないMacの操作を覚えながらのブログ発信になります。当初はブログ記事を作成するスピードも落ちるでしょう。また,Macが上達するプロセスも発信しなければなりませんから,その修練にも時間がかかります。

 無償貸与のMacと前後して届いた厳格な内容の業務委託契約を見て,「選ばれたら選ばれたでどうしよう」と戸惑うブロガーがいたのもうなづけます。

モニターをナビゲートする専用ブログStart Mac Square

 選ばれしブロガーたるもの,Macは初心者でも,PCはある程度使いこなせる人が多いはずです。とはいえ,Mac独特の作法に感動しつつも戸惑うことがないとは言えません。

 今回,良く考えられていると思ったのは,あらかじめモニターをナビゲートする専用ブログStart Mac Squareが用意されていたことです。このブログは一般公開されているので,ぜひご覧ください。きっと多くのMac初心者ユーザーに役立つはずです。

 一見すると,左下にあるメニューは,あらかじめアップルが用意した「教科書の抜粋」か「よくある質問」のようにも見えます。

 しかし,これは第一期のモニターが書いたブログ記事=経験や見識が「元データ」になっているのです。それらのブログ記事から選抜され,わかりやすく分類整理されて「知恵の共有サイト」に仕立てられています。今後,このモニター制度と専用ブログが継続すればするほど,記事の中身が充実するはずです。同時に洗練されて,より使いやすいものになるでしょう。まさにStartMacの文化遺産になるわけです。

二重投稿無しで体験モニターのブログ記事を集約

 Start Mac Squareは,その名の通り「体験ブロガーたちが集う広場」でもあります。例えば,私がMac関連記事を自分のブログに書いたら,それがStart Mac Squareに最新記事のリンクとして表示されるのです。つまり,体験モニター50名の最新ブログ記事を,一カ所のブログ経由でまとめて読めるのです。

 多くのブロガーが結集するキャンペーンブログを作る場合,スカイライン×経営者会報ブログの事例のように,トラックバックをしてもらうケースが普通です。

 しかし,Start Mac Squareでは,ブロガー各自が,自分のブログ記事を書いて登録する時に,たった二つのことをするだけで記事が掲載される仕組みになっています。詳しくはお話できませんが,ブロガーが専用サイトにわざわざ記事を二重に書き込むなどの手間がなくて便利です。楽に,モニター仲間の記事を一覧から読むことができ,同時に自分のブログへのアクセスも増えるのですから言うことはありません。

 個人ブロガーが自分のブログを「入力窓口」にしながら,様々な専門サイトと記事を関連づけて提供し,情報を相互に蓄積・共有する。そうした仕組みは,これからどんどん普及していくことでしょう。

アップルストアで好きな時間にマンツーマンのレッスン

 モニターの私あてに届いたのは黒いMacBookだけではありませんでした。Apple one to oneと書かれた1枚のカードが入っていたのです。

 そこには,このone to oneカードがあると,1年間にわたってアップルストアでパーソナルトレーニングが受けられる,とのメッセージがありました。ネットで事前に予約して,好きな時に好きなアップルストアに出向いて,トレーナーと1対1の個人授業を受講できるのです。これを利用しない手はないでしょう。

 私も既に3回にわたって個人授業を受けてきましたが,今まで受けたどんなコンピュータのレッスンよりもオープンで,気さくに楽しめました。間仕切りのないワンフロアの一角で,3組の受講生と先生が,それぞれ一対一で向かい合うカウンターバーのような教室?なのです。内容は,わからないことややりたいことを,受講生が先生に問いかけて,実際に一緒にMacを操作しながら解決するというスタイル。

 教科書があるわけでもありません。例えば,前回の私のレッスンは,自分のデジカメから抜き出したメモリーカードを先生に渡して,それをMacに取り込むところから始まったのです。自分が撮った写真を題材にして,自分のMacに取り込んで活用するのですから,自ずと気合いも入ろうというものです。

 1回の授業だけで,こうして一つか二つずつ技を覚えていけそうです。地道なトレーニングではありますが,できれば毎週ないしは2週に1回ずつ,1年間も続けたら,相当上達するはずです。

アップルストアに行くとMacが好きになってしまう

 さらに,one to oneのトレーニングには,もうひとつの効果がありそうです。アップルストア通いを繰り返すうちに,今以上に,Macとアップルが好きになってしまうのです。

 もちろん,スキルアップすることや,貴重なデータや作品が自分のMacに集積してくることも,Mac好きになる大きな要因でしょう。しかし,ひそかに見逃せないと思うのは,アップルストアそのものが持つプレゼンテーション効果です。

 私は,銀座三越と松屋の斜め向い,ミキモトの並びにあるアップルストア銀座に通っています。シンプルで美しい外装にまず魅せられ,中に入った瞬間に,オープンかつクールな雰囲気に息を呑むはずです。そして,無人自動運転の総ガラス張りのエレベーターで目的のフロアへ上がっていけば,胸がときめきます。

 アップルストアに並んでいるのは,アップル製のマシンばかりではありません。公認サプライヤーが作っているiPod用のケース・ホルダーからスピーカーまで,そしてMacBook用のバッグやリュックまで,デザインが秀逸な商品が美しくディスプレイされています。これらを見ているだけでも楽しく,私もレッスン後に眺めたり触ったりしています。

 そう,気がつけば,Macを中心としたライフスタイルを,毎回見せつけられ,魅せられているのです。

モニターがアップル本社に集まるオフ会も実施

 6月23日に,50人のブロガーの有志が,東京オペラシティにあるアップルジャパン本社に集まるイベントが開催されました。もちろん初めて入るオフィス,初めて顔を会わせる同志たちです。

 スケジュールは,出席者の簡単な紹介に続いて,アップルの何でもソフト「iLife」のご紹介とデモが始まりました。「わが家に眠るデジタル資産を活用しよう」「わが心に秘めたクリエイティブマインドを喚起しよう」というメッセージに,まず心が動かされました。

 しかし,私にできるでしょうか?

 そんな気持ちを察知したのか,インストラクターは実際にムービーをつくりはじめました。先ほどデジカメで撮ったばかりという動画を使って「オペラシティにやってきた」というムービーを,あっという間に編集,完成させてしまったのです。その甲斐あってか,デモを終えた後の懇親会では,動画にチャレンジしようという方が多かったのが印象的でした。

 もちろん,既に活用しているモニターもいました。偶然にも隣り合わせになった【ポッドキャストとけものみち「BONCHICAST.Log」】のTINさんは,一足先に実験して「iMovieが凄すぎる」と激賞されていました。これまで,Windows環境で,アドビなどの本格的な動画編集サイトを活用してきたそうですが,MacとiMovieの組み合わせでいとも簡単にできてしまったとか。

 50分間撮ったビデオを5分の短い動画「QP福岡vol.015うまかもんガイド「紗樓夢のもつ鍋」」に編集するのに,小一時間しかかからなかったそうです。TINさんのように熱い体験をしたモニターが,アップル社員以上に(?)熱く語って,口コミを作っていく理想的なマーケティングの現場に私は居合わせたのでした。

 さらに,懇親会に参加したアップル社員のみなさんの対応でも驚いたことがあります。Macの活用法などについて,担当のいかんに関わらず,誰にどんな質問をしても答えられたのです。それも,マニュアル的な対応ではありません。「ご自身はどう活用していますか?」とお聞きしても,それぞれ自分の体験を,自分の言葉で話してくれました。そこには,Macへの深い愛情も感じられたのです。

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 企業発の情報以上に,口コミやネットコミが重視される時代,こうしたブロガー向け商品モニターの企画は,今後あたりまえのPR手法になるでしょう。

 しかし,MacBookのような高額で高いブランドイメージを持つ人気商品であっても,ただ無償貸与しただけでは,熱い言葉の連鎖は生まれないはずです。やはり商品からも店員・社員からも「こだわり」や「ストーリー」が感じられ,ひしひしと伝わってくる必要があるはずです。

 そのため,バーチャルなサポートとしては,モニターが集いナビゲートしてくれるブログや,そこの座長をつとめるモデレーターの存在が大切です。

 リアルなサポートとしては,アップルストアに足を運んでもらう,マンツーマン指導で感激してもらうといった実体験の積み重ねが重要になります。さらに,体験モニターブロガーが一同に介して,アップルのキーマンと懇談するオフ会が「共感の絆を結ぶ鍵」になると,今回ブロガーの立場で実感いたしました。