「データセンターの電力問題、さらにCO2(二酸化炭素)の排出という観点から次世代データセンターを作る」。富士通が07年12月、都心(東京・新宿)に開設する新データセンターの狙いを、サービスプロダクトビジネスグループ長を務める石田一雄経営執行役常務はこう説明する。

 最大の理由の1つは、データセンターへの電力供給に支障が出ること。現在、富士通には群馬・館林(開設95年12月)、兵庫・明石(同97年9月)、東京・蒲田(同01年10月)の3センター体制だが、もし電力供給量に問題があれば自家発電に一部を頼ることなどになる。

 そうした中で、省エネルギー型次世代データセンターを新設する。新センターは1000平米と小さいものの、インテルやHPなどの協力を得て、市販サーバーと仕様の異なる低消費型サーバーなどを開発し設置する。最新技術を活用した電源設備や空調設備も配備し、動力コストやCO2排出量を現状比で10%の削減を目指す。加えて、既存センターに比べて2倍の電力を確保したり、自動化などにより運用要員を10分の1で済むようにしたりもする。

 こうした設備を含めて、欧米で標準化されつつあるデータセンターの最高レベル規格ティア4に準拠させる計画。

 新データセンターの狙いは、もう1つある。関連会社やパートナ企業を含めた50のセンターの体制を見直すことで、大きな収益源に育ってきたアウトソーシングをはじめとするサービス事業を強化することだ。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などオンデマンド型に対応したサービス・プラットフォームの位置付けにもし、CADやERPに加えて、サービス商品を順次増やす計画も立てている。

大きな収益源に

 サービス事業の中核であるアウトソーシング事業の国内連結売上高は順調に推移しており、06年度は前年度比11%増の4603億円、営業利益も763億円に達したという。さらに08年度に6000億円に引き上げ、営業利益率を高める。

 そのためには、運用・保守を起点に新しいサービス需要をいかに取り込むかが課題になる。そこから登場した考えが、「One FUJITSU」だ。事業部ごと、子会社ごとに顧客にバラバラに対応する組織体制を見直し、1つの案件に社内の複数部門を経由することを避けるためでもある。

 運用・保守の場合でも、保守サービス子会社の富士通サポート&サービス(Fsas)、富士通のアウトソーシング部隊、システムサポート部隊などで対応しており、ユーザーから見た富士通のサービスに一体感が見えづらい面も否めない。それが顕著に現れているのは、富士通に50万社の顧客がいるものの、保守サービス契約を交わしていない顧客が出てきたこと。保守サービスやアウトソーシング、SIなどサービス事業の機会損失が起きているというわけだ。

 そこで、この7月に要件定義から設計、構築、テスト、運用までのインフラ業務を、Fsasに集約させる。顧客情報をいちばん蓄積してきたのがFsasだからだ。システム構築から運用・保守までのサービスを一気通貫で請け負える仕組みにするために、富士通のアウトソーシングやシステムサポート部隊から300人をFsasに移動させた。加えて、複数部門をまたがるような無駄な作業を省くために、「オーダー方法も7月までに見直す」(石田氏)。

 サービス事業の意識改革も図る。この4月に富士通サービス(英国)のナンバー3を上級幹部として招き入れ、「サービスとは何か」を伝授してもらう。富士通サービスはサービスやソリューションの標準化、部品化を進め、短納期、高品質、そして低コストを実現させているが、この原点は富士通が提唱するインフラ共通基盤トリオーレである。SIという一過性のビジネスに頼り、一から作り上げる個別案件が少なくないという。赤字撲滅に力を注ぐものの、不採算案件が決してゼロにはならない。従来方法に固執する営業担当者、技術者もいるだろう。

 その解決策のヒントを富士通サービスから学び、富士通はサービスの本質を体得しようとしているのだろう。コールセンターやヘルプデスク、監視、セキュリティといった従来型サービスではない、革新的なサービスを生み出せるか。それが富士通のサービス事業拡大を握っている。