三菱総合研究所 情報技術研究センター研究員 清水浩行です。突然ですがみなさん,Webブラウザは何をお使いでしょうか?Internet Explorer 6.0 (IE6) の方が多いでしょうか。OSSセンターに興味をお持ちの方であればOSSブラウザのFirefoxを使っている方も多いでしょう。IE7,OperaやMac OS X用のSafariを使っている方もいらっしゃるでしょう。

 WebのコンテンツはW3Cなどによって標準が制定され,上に挙げた以外にも音声読み上げブラウザなどさまざまなブラウザから閲覧できるようになっています。しかし,IE6以外のブラウザを使っている方はコンテンツが正常に表示・動作しないWebページに遭遇した経験をお持ちのことと思います。このようなコンテンツが多々あることは知られていましたが,どれくらいあるのかという定量的な調査はこれまでなされていませんでした。

 そこで,今回私たちはこのようなコンテンツが含まれるサイトを定量的に把握するため,独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のオープンソースソフトウェア活用基盤整備事業の一環として「OSSデスクトップ普及に資するWebコンテンツ互換性向上に関する調査」を実施しました。この談話室では調査の裏話を交えながら結果の一部を紹介したいと思います。

 なお,以後,特定のブラウザでは正常に(Webページの作成者が意図した通りに)閲覧できるがその他のブラウザでは正常に閲覧できなくなる原因のことを「非互換要因」と,そのようなコンテンツのことを「非互換コンテンツ」と呼ぶことにします。

調査の概要

 まず,どのような調査を実施したかを簡単に説明します。

(1) 非互換要因のリストアップ

 非互換要因の調査はまず,IE 6.0とFirefoxの2つのブラウザで多くのWebページにアクセスし,表示や動作に差異がないかをチェックしました。差異がある場合はその原因を調査します。ただし,調査対象はHTML,CSS,JavaScriptに限定しました。また,書籍やWeb上の文献も参考にしました。

(2) チェックツールの開発

(1)と並行して,非互換要因の有無を自動的にチェックするためのツールを開発しました。このツールにはあらかじめ非互換要因をチェックするためのスクリプト群を登録しておきます。ツールにWebページを読み込ませるとスクリプトを実行し,各非互換要因が含まれるかどうかを出力します。また,オーサリングツールを判断するために<meta>要素の内容も出力します。

チェックツールの動作イメージ

(3) 非互換要因チェックの実施

 開発したチェックツールに調査対象のページを読み込ませ,非互換要因が含まれていないかチェックしました。Yahoo! Japanのディレクトリに登録されているサイトから20万サイトをピックアップし,そのトップページを調査対象としました。