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「成果主義」のコンセプトを正しく伝える英語は?
先日,日経ビジネスの特別編集版「新日本的経営の姿」を読んでいて,成果主義を偏重し過ぎたツケが今,日本の働く現場に出ているという記事を見かけました。 「成果主義」──確かにアメリカ生活が長くなると,結果や成果が重視されるカルチャーに慣れてきます。結果が出せるのであれば,在宅勤務もOKとか,ランチ休憩を2時間取って外食しても,ランチの時間にフィットネス・ジムに行っても構わないという会社は,シリコンバレーにはたくさんあります。 官公庁や工場のように,営業(就業)時間がきっちり決まっている職場はだめでしょうが,IT関連企業は,やるべきことさえちゃんとやっていれば,ある程度の自由は認めるというポリシーになっている会社が少なくないのです。 例えばOSの更改で,いくら新しい機能を考案し,設計しても,コードを書いてQA(品質保証)にかけてリリースにこぎつけなければ,ソフトウエアを開発したことにはならない。結果を伴わなければ,その途中のプロセスをいくら頑張ったとしても,全く何もやらなかったのと同じと見なされてしまう場合は確かにあります。 けれども成果主義は“成果オンリー”という意味なのでしょうか? 私には,成果主義という熟語が出来たときのコンセプトは,「結果は必須」だが,「過程を無視してよい」と言うつもりはなかったと思えるのです。頑張ることが大事,努力することが大事,そして成果を出すことも大事,という意図であって,「途中の努力は評価の対象にならない」とは誰も言っていないはずです。
Result-oriented(成果指向型)が伝えるニュアンス「成果主義」を英語で言ったらどうなるのかを調べてみました。 とりあえず,オンライン辞書を引いてみると次の言葉が見つかりました。
・Pay-per-performance system なるほど,給料や報酬が結果と連動している,というあたりがキーのようです。でもこのように訳す(解釈する)と「成果だけで報酬を決める」と言っているように聞こえます。「努力した過程も,成果も考慮する」というニュアンスは伝わってきません。 「〜主義」といったからニュアンスが変わってしまったのでしょうか。何かイデオロギー化した,硬直した観念が感じられるような気がします。 「成果」だけに着目すると,いろいろな訳語があります。
・achievement, accomplishment, attainment (目標に到達した) とりあえず,ここではResult(結果)を使うとして,こんな言い方はできないでしょうか?
・Result-oriented オブジェクト指向型で一躍,日本で市民権を得た〜oriented。顧客中心のビジネスモデルなどとCRMの世界でよく使われる〜centric。インテリジェントネットワークはapplication-awareでアプリを認識している。80年代はボディコン,ワンレンのお姉さん達で知られるようになった〜conscious。 英語の語感からするとResult-orientedが一番「成果主義」に近いでしょうか。Resultの方を向いている,第一義に考えているというニュアンスが感じられます。でもResultオンリーではなく,他の要素も考慮しているように察せられます。 Result-centricはどうでしょうか。例えば業務査定の方法で,“Our evaluation is result-centric. Teamwork and process are contextual.”と言うことがあるかもしれませんが,ちょっとこじつけたような英文です。Result-centricという表現は英語としてはしっくりきません。 Result-awareは,評価に「結果も一応考慮にいれる」といったニュアンスです。Resultを特に重要視しているというイメージは全くありません。Resultは,いくつかの要素の一つに過ぎないという感じです。 Result-consciousもしっくりきません。コンシャスを使うと,当の本人がかなり結果を意識している(気にしている)という感じになります。ノルマを気にする営業担当みたいな感じです。 「成果主義」という言葉が,「成果指向」とか,「成果中心」とか,「成果コンシャス」という日本語になっていたら,現場で働く人達が被っている“成果主義の弊害”が少しは軽減されていたでしょうか。
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著者プロフィール臨床医学を目指し、単身アメリカへ渡米。85年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児精神科看護修士課程を卒業するも、運命の糸に導かれ、会議通訳の道へ。政府間交渉や官公庁をはじめ、主にIT業界において20年にわたり会議通訳を務める。「自然で専門的レベルが高い」通訳にはファンも多い。2003年にグレースコンサルティング設立。業務/経営コンサルティングへ守備範囲を広げる。名古屋大学大学院地球科学学科非常勤講師。 |