小飼弾です。今回の記事は、ITPro編集部からの依頼がきっかけです。

実は,ゴールデンウイークのイベントとして「ITpro Watcherおすすめの仕 事に役立つWebサイト」企画も開催いたしたく考えております。
URLのリストをいただくだけでもかまいませんが,URLにコメントを添えていただく 形でもかまいません。特にお気に入りのサイトにコメントを添えていただいて,残 りはURLのみという形がよいのではと考えております。サイト数は,10~20程度を 考えております。特に「知る人ぞ知る」サイトでなくとも,定番的なサイトでかま いません。

これを見て困ってしまいました。

なぜかというと、私はブラウザーのブックマークをほとんど使わないからです。こういった記事を書く場合、自分のブックマークのリストを見ながら選んで行くのがまっとうなやり方かと思いますが、ところが私のブックマークは、逆に滅多にアクセスしないけど、忘れたら自分にとって困るというものばかりです。例えばオンラインバンキングの入口だとか。本当に個人的なものばかりなので、記事の下敷きにはとても使えません。

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それではブラウザーの履歴はどうかというと、これはもっと使えません。私は主に Firefox を使っているのですが、常時10ウィンドウ、そしてそれぞれのウィンドウの上で10タブ以上平気で開いています。これでは履歴を見ても、何のことやら本人もさっぱりわかりません。

それでなんでこの広いWebの世界でなんとかやっていけるかというと、理由は三つあります。

  1. アドレスバーの履歴機能

    最近のブラウザーでは、サイトのURIを全部入力しなくても履歴の中から候補を表示してくれます。いちいちメニューからブックマークを選択するより、慣れるとこの方が速いのです。

  2. 検索エンジン

    Googleの登場以前は、あるWebページにたどりつくには、URIを覚えるか、ブックマークを確認するか、ポータルサイトを確認するかの3つでしたが、Google登場後の現在では、検索エンジンの精度が格段に上がったので、いきなり検索した方が狙いのページにたどりつきやすくなりました。最近ではTV CMなどでも、http://ではじまるURIの代わりに、検索窓に検索語を入れて検索ボタンを押すアニメーションを見る機会が増えてきました。

    さらにFirefoxではスマートキーワードと言って、アドレスバーにURIの代わりにキーワード + 検索語と打つ事で、キーワードに登録した検索サイトでいきなり検索してくれます。これのおかげでますますブックマークを確認する機会が減りました。詳しくは

    をご覧下さい。本当に便利ですよ。これだけでもFirefoxに乗り換える甲斐があります。

  3. ソーシャルブックマーク(SBM)の登場

    あ、やっと本題の一つにたどりつきました。

そうなのです。私がブックマークしなくなった最大の理由、それは私の代わりにブックマークをしてくれる人たちがたくさんいて、それを私も見る事が出来るからなのですね。こうした人々は、まだ検索エンジンすら見つけていない優れもののページを先回りして見つけて、それをSBMで「ここにある」と教えてくれるのです。

人に教えるべきURIはSBMで公開。そうすれば自分だけではなく他の人も幸せになれる。My BookmarkからOur Bookmarkへ。このOurの考えが、Web 2.0の根底にあります。SBMというのは、まさに Bookmark 2.0 だったのですね。

本記事に限らず、ITProのページの右肩には、[はてなB]というボタンがあります。これを推す事ではてなブックマークにこの記事を登録することが出来るわけです。最近はこのボタンが付いたウェブページも増えてきました。特にブログには顕著で、私の404 Blog Not Foundにも、はてなブックマークだけではなくソーシャルニュースサイト - newsing(ニューシング)Buzzurl [バザール] 、そしてlivedoor クリップ への登録ボタンをつけてあります。

とはいえ、こうした登録ボタンが付いていないページの方がまだまだWebにはずっと多い。そうでないページを、ソーシャルブックマーカーたちはどうやってブックマークしているのでしょう?

その答が、 Bookmark 2.0 のもう一つの主役、Bookmarklet です。

Bookmarklet(ブックマークレット)とは何でしょうか?実はこれ、とっても短いJavaScriptプログラムなのです。なぜそれがBookmarkletと呼ばれるかというと、JavaScriptプログラムなのにブックマーク可能だからです。<a href="...">のhrefの中身には、大抵http:で始まるURIが入りますが、ここをjavascript:ではじめると、その後ろにある部分がJavaScriptプログラムとして解釈されるのです。<a>タグなので、当然その上で(右クリック[Windows]|ctrl-クリック[Mac])すると、「このリンクをブックマークする」というメニューが表示されますし、そしてここが大事なのですが、実際にブックマークしてそのブックマークを選択すると、ブックマークされたWebページに飛ぶかわりにJavaScriptプログラムが実行されます。

ちなみにこのブックマークレット、アドレスバーに直に入力しても動きます。試しに

javascript:alert(Math.atan2(1,1)*4)

と入れてみて下さい。何が起きましたか?

SBMでは、このBookmarkletを利用することで、Webページ「を」ではなくWebページ「で」ブックマークするという作業にかかる手間を、ふつうのブックマークとさほど変わらない程度まで下げたのです。

例えば、現在表示しているページが、はてなブックマークではどうブックマークされているかというブックマークレットのhrefの中身は、以下のようになります。

同じウィンドウで開く場合:
javascript:void(location.href='http://b.hatena.ne.jp/entry/'
            +location.href)
同じウィンドウで開く場合:

javascript:void(window.open('http://b.hatena.ne.jp/entry/'
            +location.href,'_blank'))

Webサイトが出来ると、今度はそのWebサイトが提供するサービスを使ったWebサイトが登場する。これもまた「マッシュアップ」という Web 2.0 の特徴の一つですが、SBMも例外ではなく、例えばMixClipsという、複数SBMを横断的に眺めるサイトがあります。

Web 2.0という言葉が大流行してから1年あまり。筒井康隆の「マグロマル」(ベトナム観光公社収録)ではありませんが、「結局なんのことかさっぱりわからない」「そもそも意味あるの?」という言葉もよく聞きます。しかし、実はWeb 2.0というのは実に簡単な概念です。Web 1.0が「ながめるWeb」だったのに対して、Web 2.0というのは「使うWeb」なのです。「ながめる」だけであれば目を向けるだけで事は足りますが、「使う」ためには手を動かさなければなりません。逆に言えば、「ながめるWeb」の世界では、「手を動かせる」人はWebサイトの「中の人」だけだったのに対して、「使うWeb」の世界では、Webサイトの「外の人」、すなわち誰でも手を動かして、世の中に対して働きかけることができるのです。

はなしが大きくなってしまいました。大きな話はあとは「ソーシャル・ウェブ入門」にまかせて、話を Bookmark に戻すと、この「ながめる」から「使う」への変化が一番大きいのが、ブックマークだと私は考えています。「もういちどながめるため」のブックマークは、確かに使わなくなりました。しかし「もういちど使うため」、そして「みんなで使うため」のブックマークは、まだ始まったばかり。ブックマークの世界ではもはや老舗の感があるはてなブックマークでさえ、β版から2年あまり、正式版となってからは今年の8月でやっと二歳なのですから。

Bookmark 2.0の世界へ、ようこそ。

Dan the Bookmarker 2.0


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