1枚のTシャツアートに秘められた「想い」「こだわり」「ストーリー」を,どれだけ多くの人が,ブログを通じて自分の言葉で語れるか。そんな新しい挑戦を,新サイトArt.T-galaxy.comを核にして始めました。

 この新shopの商品紹介ページでは,単なるカタログのように商品仕様が語られるだけではありません。その作品を生み出したクリエイターやプロデューサーはもちろんのこと,Tシャツメーカーの代表者,ネット編集長,ショップ店長までもが「作り手」や「売り手」の想いを,それぞれのブログで伝えます。

 さらに,その作家を愛し作品を愛用する「買い手」の想いも,それぞれのブログで語られてリンクされていくのです。

 こうして,たった1枚のTシャツであっても「ブログ連携」を通じて,その作品を愛する川上から川下までの人たちの想いが伝わることで,特別な逸品であることが伝わるはずです。

ブログ=CMSで作った情報更新が簡易な仕組み

 まずは,実際にサイトを見ていただくと,そのシンプルな仕組みをご理解いただけるでしょう。

 Art.T-galaxy.comでは,来る5月5日の子供の日に向けて,「戦国武将と変わり兜のデザインブランド【もののふ】」の新作Tシャツを限定販売しています。

 例えば,この超立体的なクワガタのCGをモチーフにした青木健さんの作品,「STRENGTHEN!!」のページを見てください。このページを見るだけでは,一般的な販売ページにしか見えないかもしれません。しかし,商品紹介の下に,いくつかのリンクがあることを見ていただけるでしょう。

 ここに並んでいるのは,デザインを創造したプロデューサーとクリエイターのブログ,素材としてのTシャツをお作りしたメーカー社長のブログ,Tシャツを厳選し販売するネット編集長と店長のブログです。いわば,このTシャツを最も愛する5人の当事者のブログに飛んで,それぞれのメッセージを読むことができるわけです。

 もちろん,昨今は,ショップのトップページから商品ページを来訪する場合よりも,クリエイターのブログや,店長ブログで商品を知ってからたどりつく場合が多いでしょう。そんな場合でも,今一度,商品ページを起点として,立場の異なる5人のブログに飛ぶことができます。そして納得するまでメッセージを読み込んでから,購入するかどうかを決めることができるのです。

 実は,このArt.T-galaxy.comサイトは,以前,当コラムでもご紹介しましたブログベースのドリコムCMSコマースで構築しました。ブログ並みの簡単な操作で,ECサイトを構築,運用できるわけです。

 弊社(久米繊維工業)では,既に無地TシャツやチームオーダーTシャツなどを取り扱うT-galaxy.comというECサイトを運営しています。当初は,このサイトを活かして,さまざまなクリエイターのTシャツを販売することを考えました。

 しかし,ロングセラーの定番品・定番サービスを中心に販売するサイトと,期間限定・数量限定のアートTシャツを多品種少量短サイクルで,さらに情報満載で企画販売するサイトとは,自ずと情報発信の頻度や運営のスタイルが異なることに気づきました。

 そこで,簡便かつ素早くこまめに情報更新ができるブログベースのドリコムCMSコマースを,別途活用することにしたのです。その結果,季節ごとのテーマなどにしたがって,プロデューサーからネットで寄せられる商品情報を元にして,店長が簡単に商品ページを更新できるようになりました。

システムや組織の境界や超えてブログでリンク

 ブログを使う利点の1つは,これまでWebサイトなどでの情報発信に二の足を踏んでいたクリエイターでも,特別なIT知識やコスト負担なしにネットデビューできるところです。

 しかも,クリエイター自身のプロフィールや代表作品について常設展示するような,公式で固定的なWebサイトとは別に作れるところが良いのです。それこそ日記感覚で,新作やその制作プロセスはもちろん,作家のライフスタイルについても,さりげなく伝えることができます。

 また,特別な共通システムやネットワークを使わずとも,パートナー同士が簡単にリンクできるところもブログの特長です。Art.T-galaxy.comでは,統合的なシステムを創らず,パートナー同士のゆるやかな協業という運用で工夫して,濃密な情報連携が取れるようにしました。私たちの理想は,作品制作のプロセスと,そこで繰り広げられる作り手の心を「見える化」することなのです。

 作品制作と情報連携のプロセスは以下の通りです。

1)編集長,店長からのイベント等の呼びかけ
 ショップで,その時節にあったテーマや,共同開催のイベントなどがあった場合は,プロデューサーやクリエイターにメール等で呼びかけます。今回の「もののふ端午の節句Tシャツ」も,まさに子供の日にふさわしい親子で着たいデザインを,戦国武将や変わり兜Tシャツのスペシャリストにお願いしたわけです。

2)プロデューサーとクリエイターの創造的対話
 続いて,作品のコンセプトをプロデューサーとクリエイターが討議するところから創作は始まります。そのプロセスもブログに書ければ最高です。もののふブランドでも,時にはプロデューサー田中 秀樹さんの意向で,20回を超える作品の改良が行われると,先日のトークライブで知りました。そんな創造のための対話と葛藤がブログで伝われば,作品の価値も大いに読者に伝わるでしょう。

3)作品説明文と作者ブログをセットで登録
 作品が完成された暁には,紹介ページで使われる説明文などのデータをメールでいただきます。その時,プロデューサーとクリエイターが,まさにその作品について熱く語ったブログ記事へのリンクも一緒にいただきます。この貴重なデータを,合わせて買い物ページに登録します。これでお互いの商品登録と更新手間はかなり省けるはずです,

4)完成品と作家ブログを見ながら社長や店長がプッシュ
 いただいた作品画像を元にTシャツを仕上げ,その完成品を撮影して販売ページを制作します。その時,社長の私はもちろん,編集長や店長も作品を目の当たりにします。さらにプロデューサー・クリエイターのブログも拝読します。その上で,自らのTシャツ審美眼を活かして熱いコメントを書いて,販売ページにリンクするのです。

5)作品に惚れ込んだファンが個人ブログで応援
 さらに,その作品に魅せられ購入した方が,個人ブログに書いてくださるケースも増えていくでしょう。Art.T-galaxy.comもアフィリエイトの仕組みをご用意しておりますので,さらにヘビーユーザーのみなさまによるブログ発信も進むと考えています。また,アフィリエイトなどせずに純然とクリエイターのブログにリンクして,利益を還元したいと感じるファンも多いでしょう。

日本でこそ創り得るものを追求することが求心力

 しかし,仕組みだけご用意しても,良いプロデューサーとクリエイターが集まり,自然に魂がこもった商品が並ぶわけではありません。やはり,そこには,時空と立場を超えてでも参集したくなる「強い動機」が必要なのです。そこで,Art.T-galaxy.comで作品発表をしてくださる方々には,こんなサイトにしたいという10か条をお示ししました。

  1. 日本でこそ 作りえるもの(商品品質・環境品質)
  2. あなただけが 創りえるもの(オンリーワン作家の独創Tシャツ)
  3. 「健・美・和・笑・環」の理念に適うもの(心に響く真善美)
  4. 各作家が得手のテーマを追求するもの(適人適T)
  5. プロデューサーが指示,評価したもの(文化品質管理)
  6. できる限りシンプルで個性が際立つもの(俳句の世界)
  7. 継続・シリーズ化でき収集したくなるもの (リピーター)
  8. 想いと物語を作者自ら熱く語れるもの(もの+ことブログ)
  9. 季節の移ろいや「今」が感じられるもの(期間限定販売)
  10. 50年100年後,海外でも評価されるもの(時を越えた商品)

 特定ジャンルの中身の濃いブログを連携させるには,企業で言えば経営理念にあたる,こうしたブログコミュニティ理念が重要になるでしょう。システムのクールさよりも,理念と作品の魅力で惹かれあう磁場を創れればと考えています。

情報発信自在だからこそ作家/作品を厳選

 先日,日本語のブログ投稿数は世界第1位という発表がありました(関連記事)。また,デザインガーデンのような誰もがTシャツショップを開けるような仕組みが続々提供される中で,誰もが情報発信できる時代に突入したと言って良いでしょう。

 だからこそ,私たちは逆に「作家と作品を厳選」して徹底的に絞り込もうと考えました。

 より狭く深く「日本でこそつくりえるジャンル」に特化しつつ,最良のクオリティを誇る素材Tシャツを限定品として使りたかったのです。こうした理念に賛同してくださるオンリーワンの方々とパートナーシップを組みたいと願ったのです。その時にカギを握るのは,得意なジャンルで特別な見識と夢を持つヴィジョナリーとしてのプロデューサーでしょう。ネットで何でも簡単に検索できる時代だからこそ,そのプロデューサーしかなしえない企画力や編集力が重要になると考えます。

 【もののふ】の田中秀樹さんに代表されるプロデューサーと協力しながら,作家と作品の数を厳選して絞り込むことで,情報の量も質が高まります。今この場所で買える一作品あたりの情報を,より「多角的で複眼思考」に,そして「濃密で高品質」にしたいと考えたのです。ブログを,総合カタログのようにして掲載商品を増やす方法も考えられますが,このように,ある作家や作品に特化した徹底解説本を作るようにも使えるはずです。

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 まだはじめたばかりのArt.T-galxy.comですが,心ある熱いプロデューサーやクリエイターの皆さまと一緒に「日本でこそつくりえるもの」を追求していくインフラにしたいと考えています。その理想は,デザインを創造する人や,それをお薦めする人のみならず,綿花を育てる人,糸を紡ぐ人,生地を編む人,裁断する人,縫製する人,プリントする人…,Tシャツづくりに関わるすべての人の笑顔と思いを伝えることなのです。