せっかくわざわざ日本から来たという理由からでしょうか,シリコンバレーでの商談や打ち合わせは,丸一日かけて行うことがとても多いのです。大手企業ではEBC (Executive Briefing Center)やCCC(Corporate Conference Center)と呼ばれる会議施設が設けられており,会議室のほか,ダイニングルームや訪問客用電話ブースなども用意されています。

 セキュリティを厳しく管理しているIT企業でも,ちゃんとゲスト用のネットワークアクセスが用意されていることが多いです。日本企業の方が訪問客用のネットアクセスを提供しているところが少なく,私のような海外からの出張者は不便を感じることがあります。

商談の始まりは,適切なあいさつから

 さて前回に続き,米国出張ですぐにでも使えそうな表現を集めてみました。今回は米国企業のオフィスで商談を行う場面を考えます。まずは,あいさつから。

・残念ながら,今回,上司の日経が来ることができませんでしたが,よろしくとの伝言を預かってきました。

My boss, Mr. Nikkei, could not come today. He was sorry but he sent his best regards.

My boss, Mr. Nikkei, could not make it this time. He said Hi.

 後者はインフォーマルは表現です。かなり親しくなっている相手に対して使えます。

 「急に用事ができて」「緊急案件が発生して」などの理由を追加する場合は,次のように言います。

My boss, Mr. Nikkei, had to cancel his trip due to an unexpected event.

My boss, Mr. Nikkei, had to cancel his trip for an unexpected issue.

My boss, Mr. Nikkei, had to cancel his trip due to an urgent matter.

 前回,名刺交換をする時のあいさつの文例を紹介しましたね。あいにく名刺を切らしてしまったらどうしましょうか?

・すみません。名刺を切らしてしまいました。

I am sorry but I've run out of my business cards.

I am sorry but I have given all my cards away.

I didn't bring enough of my cards. I am sorry.

 I didn't bring my business cards と言うと,「持ってくるのを忘れた」ように聞こえてしまいますが,上記の表現のように“enough”を追加すれば,持って来たけれども品切れになったというニュアンスが伝わります。

・名刺をホテルに忘れてきてしまいました。後日,お届けします。

I left my business cards at the hotel. I will bring it to you later.

 訪問先でネットワークにPCをつなぎたい場合は,アクセスポイントがあるかどうか聞いてみましょう。

・ゲスト用のネットアクセスはありますか?

Do you have the internet access for guests?

Do I have the internet access here?

Can I use the internet here?

“Quality Time”を大切にする米国のビジネスマン

 シリコンバレーのビジネスマンは,仕事と家庭を上手に両立させている人が多いです。時間の管理が上手というか,密度の濃い生産性の高い仕事をしているというか,効率よくタスクをこなしているというか。

 逆に言うと,何でもかんでも仕事優先というわけではない,ということになります。会議が長引いているのに,「子供を迎えに行く時間だから」とか,「今日は子供のサッカーの試合だから」とかいう理由で帰っていきます。中には,終電でもないのに「帰りの電車に乗り遅れるから」と言って帰ってしまう人もいるくらいです。日本人からすると「アンビリーバボー」(信じられないような)ことかも知れません。

 けれども,そこでアメリカ人を批判してはいけません。効率よく仕事を片付け,密度の濃い生活を送るためには上手な時間の管理が必須です。スケジュール通りに仕事をこなすことが前提で、会議が時間内に終わらないのは,生産性の低い議論の仕方に問題があるという考え方なのです。

 商談を進めていくうちに,予定以上の時間を拘束することになってしまった場合には,それなりの配慮を心がけたいものです。割り当ててもらった時間を常に意識することが必要です。

・(もう時間になりましたが)あとどのくらいの時間,残っていただけますか?

How much longer can you stay?

How late can you stay?

・この後,何か予定が入っていますか?

Do you have anything planned after this?

 もし,“I am sorry but I must go now.”(申し訳ないけど,ここで打ち切りです)と言われてしまったら,次の打ち合わせの時間を取ってもらいましょう。

・いつ,打ち合わせの続きができますか?

When can we continue this discussion?

・午後(今日中,今週中)に,時間が取れそうですか?

Are you available again this afternoon?

Can we get together again before the end of the day?

Are you available some other time this week?

 学童児を持つシリコンバレーのビジネスマンは,夕食はできる限り家族(子供)と一緒に取るという人が大半です。夕食の時刻は,6時~6時半,遅くても7時にスタート。食卓を囲みながら,子供の学校の様子を聞いたりする夕食の時間は“Quality Time”と呼ばれています。

 彼らは夕食後,9時頃からまた自宅で仕事を始めるのですが,そこで活躍するのがVPN。自宅で使うブロードバンドサービスを会社が負担してくれることもあります。日中はほとんど会議や接客で時間がない時,メールのチェックや部下への指示,上司への報告,出張経費の精算などを自宅でこなしていくのです。もちろん,自宅で電話会議もOK。日本でも徐々にこうした在宅ワークが普及しているようですね。