新型スカイラインのブロガー向けの記者発表会など,ブログマーケティングの先駆けである日産自動車が,また新たな試みを始めました。
それは,SKYLINE BLOGと経営者会報ブログとタイアップした新企画です。社長ブロガー20名に試乗車を貸し出してドライブしていただき,その試乗記を各社長のブログに書いてもらおうという試みです。
私も経営者会報ブロガーの一員として,さっそく新型スカイラインに試乗させていただき,ブログに試乗記を書きました。そして,SKYLINE BLOGにトラックバックしたのです。
名前もプロフィールも明らかな経営者限定
ご存知の通り,ネットには自動車好きが書いたブログが山ほどあります。その中には,クルマ好きの私が読んでも感銘し,深く共感できるブログも少なくなりません。
しかしながら,多くのブログは仮名で書かれており,所属やプロフィールも明らかではありません。そのため,情報の信憑性や発言の重みに欠けると感じている方も多いのではないでしょうか。残念ながら,私も,まずは実名ブログかどうかで「ブログの質」を判断するようにしています。
日産自動車のWebマーケターの方々も,まさにこの点に注目されたようです。
そこで,社会的に信用があり,名前もプロフィールも明らかにしている社長ブロガーに注目されたのです。その社長選出と情報発信のパートナーとして,6万部発行の中小企業オーナー経営者向け定期購読誌「経営者会報」と「経営者会報ブログ」が選ばれました。
経営者会報ブログは,社長自らが発信する月1万円の有料ブログです。そこには,企業規模,知名度,経営暦に関わらず,志のある進取の精神に富んだ経営者が集まっています。それは,経済産業省のIT経営百選に選出する経営者を輩出したり,著名なネット関係のコンサルタントが参加していることからもわかるでしょう。
試乗して書いてトラックバックするだけ
SKYLINE BLOGと経営者会報ブログのタイアップと言っても,決して特別な仕組みではありません。新たに共同でWebサイトを作るわけでも,特別なイベントをするわけでもないのです。
スカイラインを試乗して,社長自身の言葉でそれぞれの経営者会報ブログを書くこと。そして,SKYLINE BLOGの該当記事にトラックバックすること。それだけなのです。
私もさっそく記事を書かせていただきましたが,試乗記を書く条件が,あまりにシンプルなおかつ太っ腹なので驚きました。
太っ腹と言っても,社長に金品を渡して,いわゆるサクラブロガーになってもらおうというわけではありません。経営者の特典は,新型スカイラインにガソリン代も含めて無償で試乗してもらうだけなのです。だからこそ,気兼ねなく自分の感想を書けるわけです。
試乗ブログに参加する経営者は,スカイラインのユーザー,さらには日産車ユーザーである必要もないのです。むしろ,メルセデスやBMWに,あるいはレクサスに乗っているようなクルマ好きの経営者に,率直な意見を書いてほしいとのことでした。これは,新型スカイラインの中身に自信があるからこそのお言葉でしょう。
さらに,スカイラインの写真を1枚以上含むブログ記事を1回以上書くだけで良い,というシンプルな条件を聞いて驚きました。ですから,もし試乗して印象が残らなかった時には,ちょっとだけ記事に書けば良いわけです。
こうした条件は,すべて,「スカイラインの実車をありのままに見てほしい」というメッセージに聞こえました。この条件だけでも,日産自動車とスカイラインに大いに好感を持ちました。
社長は,なぜこの企画に興味を持つか
一方,経営者会報ブログの事務局は,この「スカイライン試乗記」の企画と条件を,メルマガやブログで社長ブロガーに投げかけます。そして,関心を持った社長ブロガーが手を上げて,試乗記に参加することになります。
果たして,どんな社長が,日々忙しい中,しかも金品がもらえるわけでもないこの企画に賛同するのでしょうか?
社長が,主体的に参加してくれなければ,この企画は成り立ちません。そこで,私自身,なぜこの企画に興味を持ったか,胸に手を当てながら,その理由を考えてみました。
1.クルマと運転が好きだから
中小企業の経営者には,クルマ好きも多いはずです。クルマで通勤したり移動している方も少なくないでしょう。さらに,会社や自分の成長と合わせて社用車を進化させる楽しみや喜びを味わっている方もいらっしゃるでしょう。
2.スカイラインが好きだから
私よりも先輩世代の経営者であれば,おそらく運転免許を手にする前後から「スカイライン栄光の歴史」を目の当たりにしていることでしょう。そして,好きであるがゆえに,昨今の日産とスカイラインの変貌について独自の意見を持っているかもしれません。
3.新しいものやことが好きだから
中小企業の社長,それもブロガーとなれば,新しいものやことにいつも好奇心を抱く人がほとんどでしょう。自動車雑誌などでも評価が高い新車にも,ブログで試乗記を書くということにも,挑戦しがいを感じるはずです。
4.社長ブロガー冥利につきる
ブロガーにとって,誰もが知っている大企業から公式に依頼されて,自らのブログで商品を評価して欲しいと言われることは,大いなる喜びなのです。いわば,ご意見番としてのお墨付きをもらったような心地がするはずです。
5.お金よりも信用や中立性を好む
多くの経営者は,お金よりも自分の信用を大切にするはずです。また,偏ることなく中立の姿勢で,自分の意見を堂々と発言することを好むでしょう。この企画では,謝礼をもらわないからこそ,逆に堂々と助言・進言できるとも言えます。
6.自分の意見が確実に届く喜び
自分の意見を自分の言葉で語る機会が多い中小企業経営者であっても,その声が確実に相手に届く機会は限られます。ましてや大自動車メーカーとなれば,そんな機会は滅多にありません。しかし,今回ブログで書く意見は確実に日産の中枢にも届くでしょう。
7.日産パワーでブログアクセス増加
今回の社長ブログ記事には,スカイライン試乗というキーワードが含まれ,多くの人から検索されるでしょう。ましてや日産スカイラインの公式ブログにトラックバックすることで,社長ブログのアクセスが急増して,将来の固定ファンを増やすことができるのです。
すなわち,このタイアップ企画のメリットは,試乗を依頼する日産側だけにあるのではないのです。記事を書く経営者会報ブロガーの方々にも,大きなメリットあるのです。
私ならこう書く-試乗記7か条
さて,光栄にも経営者会報ブロガー第一号として,私もスカイライン試乗記を書くことになりました。その時,最初に考えたのは試乗記の連載予定でした。1回だけ書けば良いと言われたものの,それではブロガーとしての気が済みません。ましてや,半日乗った時点で,このクルマには書くべき魅力がたくさんあることに気づいたのです。
この私の連載予定の構成は,誰でも使えるものです。おそらく,次回以降にお書きになる社長ブロガーのみなさんの役にも立つでしょう。
1.私とスカイライン~スカイラインの想い出
スカイラインにかつて乗ったことがある方はもちろん,スカイラインに憧れていた方なら,まずそのエピソードを書くことが序論にふさわしいでしょう。私の場合は,小中学時代ケンメリなどのスカイラインTシャツに囲まれて育った話を書きました。
2.私のクルマ偏愛歴~どんなクルマに乗ってきたか
ある人のクルマ観は,これまでどんなクルマを所有し,乗りこなしてきたかを見れば想像がつくはずです。そこで,私が免許を取得してからこれまで乗ってきたクルマを,社用車も含めて列挙して,想い出と共に書いてみました。
3.試乗記~街乗り編
いよいよ試乗記ですが,やはり都市部で日常乗る人は,そこで快適か? 運転していて面白いか? が大切な情報でしょう。都市高速道路のカーブや継ぎ目越え,渋滞待ちや抜け道走行も含む,都市部ならではの環境下でも走っていて楽しいかをブログに書くのです。
4.試乗記~ドライブ編
しかし,試乗記の「華」は,何と言っても郊外へのドライブでしょう。高速道路での安定性,山道のアップダウン,海岸線沿いのワインディングロードの印象などは,ぜひ知りたいところです。田園風景や昔ながらの街並にデザインがなじむかも楽しみです。
5.装備・内装の魅力編
昨今のクルマは,まさにハイテク機器の塊です。ハードディスク付きのカーナビ兼オーディオなど,純正品であっても,昔では考えられない高性能の危機が満載でした。その使い勝手やクオリティなども,雑誌などでは詳しく触れられないのでブログ向きです。
6.リクエスト~ここをこうして欲しい
試乗ブログで,最も重要で読み応えのある記事の1つは「リクエスト~改善提案の記事」でしょう。これがあるかないかが,サクラブログかどうかの分かれ目かもしれません。この記事が一番,日産社内でも回覧されそうです。
7.まとめ~このクルマでどうしたい
最後に書くのは,結局,このクルマを欲しいかどうか。このクルマを手に入れたとしたら,どこを走ってどんな楽しみ方をしたいかという素直な気持ちでしょう。おそらく十人十色の主観的な社長の感想が書かれるはずです。これぞブログならではの生きた意見なのです。
忙しい中,わざわざ7回も書くのは大変だと思えるかもしれません。しかし,私も試乗をした瞬間,もっと遠くに行きたくなって,週末に軽井沢へ,そして小布施にまで足を伸ばして,ドライブを楽しんでしまいました。そして,書きたいことが次から次に見つかってしまったのです。
イベント招待でブログ記事を書く
こうして書いたブログ記事をトラックバックしようとSKYLINE BLOGをチェックしたら,これはぜひ足を運ばなくては,という興味深いイベントが見つかりました。
スカイラインは今年発売50周年を迎えるそうで,数々のイベントが予定されているそうです。例えば,2007年4月24日(火)~5月6日(日)まで,話題の東京ミッドタウンで,初代「スカイライン」から現行の12代目スカイラインまで,歴代スカイラインが一同に展示されるイベントが開催されるそうです。
これなどは,誰もが思わず写真に撮りたくなり,ブログにも書きたくなる絶好のイベントです。今回の企画に賛同した経営者会報ブロガーが招待されれば,おそらくブログ記事の量と質が大いに向上するはずです。
ですから,一度ブログ試乗記を通じて深い関係性ができあがった社長ブロガーとは,同報メールでも良いので日産自動車との間にホットラインを結んで,イベント告知をしていただきたいものです。
なにしろ,年内にも,話題の超高性能車スカイラインGT-Rが発売されるという大きな大きなニュースが控えています。そこでも,何か関連イベントが行われ,社長ブロガーが好んで書くような企画が進められたら,ネットコミが広がりそうです。
社長ブロガーのモニターがますます増える
今回,半年近くにわたって20名の社長ブロガーがスカイラインに試乗するのですが,誰がどんな記事を書くのか,今から楽しみでなりません。会社の看板を背負って社長として書くのですから,きっと気合いが入るでしょう。また,人と同じことが嫌いな個性的な中小企業経営者が揃っていますから,個性的な記事も集まりそうです。
今回の企画が,多くの読者と日産自動車のキーマンに評価されたら,さらに面白い展開が始まるでしょう。例えば,社長向けの社用高級車はもちろんのこと,オフに乗るスポーツカーやSUVなどのブログ試乗記も良いかもしれません。さらに,複数台の社用車を所有している経営者なら,そのトータルコストダウンの手法など金融とからめたブログレポートもありそうです。
また,今後は自動車に限らず,様々な商品やサービスが「経営者会報ブロガー」の目と手で評価されるようになるかもしれません。衣食住にまつわる特選品はもちろんのこと,不動産,旅行,リゾートなどの社長によるモニターブログが増えそうです。
もちろん,大企業の商品のみならず「経営者会報ブロガー」同志の相互評価も進むことでしょう。いわば,社長同士が,お互いの特選商品を体験・評価する「ブログ頼母子講」です。
社長同士のWeb2.0的ネットコミが注目される時代が,すぐそこまで来ています。