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企業向けIMに力を注ぐQript

2007/04/11

 「最近は大手からの問い合わせが増えてきた」。企業向けインスタントメッセンジャー(IM)を開発・販売するQriptの森本泰久副社長は、セキュリティと管理機能を強化したセキュア・メッセンジャーYoctoの売れ行き状況を嬉しそうに話す。すでに複写機メーカーやリース会社など約30社(約7000ユーザー)が同IMを活用しているという。

 「フリーソフトのIM利用を禁止されてしまったが、現場からIMを使い続けたいという要望が出ているからだ」と森本氏は見ている。個人情報保護法などセキュリティの問題からIM活用を止める企業もあったものの、外勤の多い営業マンなどは携帯電話からも、技術者らは一緒に作業する他の技術者と細かなやり取りに、IMを利用したいといったニーズがあるという。LAN内で使えるフリーソフトのIPメッセンジャーなどを使い手もあるが、「ログが取れないなど制限がある」(森本氏)。そうした課題を解決した企業向けIMを開発すれば、市場を獲得できると判断し、Qriptは06年にYoctoを本格的に売り出したというわけだ。

 Qriptは、渡辺君人社長が大学院時代の00年3月に創業し、Yoctoの原形となるキャラクターベースのIMを開発した。「隣の研究室に行くのが面倒なので、相手のステイタスが分かるものを考えた。メールを使う方法もあるが、それでは在籍しているかが分からない。また、メールだと内容が感情的になることもある。そこで、キャラクターを使って、自分に代わってキャラクターに謝らせるなどの機能を持たせた。技術者はミスをミスと認めたくないこともあるからだ」(森本氏)。開発したIMを約10万本配布し、バグフィックスしながら、オープンで提供した。

 そのうちに、「企業ユーザーからセキュリティ機能が欲しい。著作権、コピーなどを防止したい」という声が出てきた。03年にある展示会にそうした機能を備えた企業向けIMを出展したところ高く評価されたこともあって、個人向けから企業向けに転換。まず05年にASPでサービスの提供を開始、さらにパッケージ・ソフトに仕立て06年から本格的に売り出す。07年4月からITサービス会社との協業で事業拡大を図る戦略を打ち出した。

2010年に500万人市場に

 Qriptによれば、日本の企業向けIM市場は06年の14万人超から2010年には500万人超へと拡大すると予想している。2010年の数字はインターネット利用者の15%にあたる。こうした企業向けIM市場拡大に対応するには、Qriptだけで対応することは難しいからで、数社のコアとなるパートナの獲得を計画している。全国に拠点がある企業ユーザーなどから、24時間365日のサポートを求められるからだ。パートナには、バックアップをどうとるのか、ログをどうとるのか、など運用を含めた体制を支援する役割を担ってもらう。こうした導入に、大手企業なら3カ月から6カ月かかるという。パートナ企業に、構築や運用に関連する技術を伝授していく。

 組織変更や人事異動に素早く連携させて欲しいというニーズもある。例えば執行役員以上、部長以上、部門内のみに限定した情報内容を、他から見えなくすることは内部統制からも重要になってきた。派遣社員の比率が多い企業の中には、メールの代替に企業向けIMを採用する動きもあるという。フリーソフトを使っていた、あるコールセンターは企業向けIMに切り替え、顧客からの問い合わせに管理者が支援したり、レポート作成に活用したりしているという。「情報漏洩は管理者の責任になるので、クローズなもののニーズが高まる」(森本氏)。

 こうした需要を取り込み、QriptはYoctoの売り上げを今期(07年8月期)の約2億円から来期に5億5000万円に引き上げ、この事業の黒字化を図りたいとする。ちなみに売り上げ比重の高いWeb制作を含めた総売上高は今期8億円、来期13億5000万円を見込んでいる。

著者プロフィール

田中 克己(たなか かつみ)
 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。  30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在は日経コンピュータで「再生の針路」を連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路〜破壊的イノベーションの時代へ〜」(ともに日経BP社)がある。

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