読者の中には,新しくCIOに就任された方もおられるかと思います。激動の経営環境の中,情報統括責任者であるCIOの使命は,たいへん大きいと言えます。今回は,新任CIOが最初にやるべきことは何か,についてお話します。

ITスタッフとのコミュニケーションは,要注意

 これまでのITスタッフ(主にIT部門の社員です)とのコミュニケーションをとることが,重要であることは,すぐにご理解いただけるでしょう。

 これは,何もCIOに限ったことではなく,経営企画室長であっても,マーケティング本部の担当であっても,製造担当の役員であっても同じことです。「そうしないという意図的な経営者の意志がある場合」をのぞきますが。

 ところが「これまでのITスタッフと,ただコミュニケーションをすれば良い」というのでは,新任CIOとして先が危ぶまれます。

 方針や計画を持たないコミュニケーションは,「いわゆる良い人」の第一印象を与えることになり,軽く見られてしまいがちです。

「IT部門の内部統制の現状を把握する」姿勢で臨む

 いきなり内部統制の言葉が出てきましたが,難しく考えることはありません。これが,「内部統制の評価」であれば,いきなりは難しいでしょう。しかし,ここで言う「IT部門の内部統制の現状を把握する」ことに限れば,専門家である必要はありません。

 むしろ新任CIOの目で現状把握をすることが,「内部統制の評価」に対して,重要な情報を提供します。

 それでは,新任CIOとして,就任間もない2カ月に何をしたら良いでしょうか。

最初の2カ月ですべき,7つのこと

 それでは,具体的に何をすべきでしょうか。

1.IT部門の組織と職制を把握します。

 IT部門の組織図とITスタッフの個人名と仕事の役割が明記されている職制表(分掌規程でも良い)を手に入れましょう。

 この時,「現状を把握する」という,意図を公表することが大事です。その上で,ITスタッフとのコミュニケーションを行います。各スタッフにヒアリングをしながら,組織図や職制表の内容と現実の業務とを照合していくのです。

 人数が多い場合は,リーダー以上の職制について行うのですが,重要なITプロジェクトのプロジェクトリーダーは,全員が対象となります。

2.重要なITプロジェクトを把握します。

 前任のCIOから得た情報やこれまでのヒアリングでわかった重要なITプロジェクトについて,一覧表を作って整理します。

 整理する項目の内容は,プロジェクト名,目的,経営優先順位,責任者,システムパートナー,予算と消化実績,進捗の評価,トラブルの有無,現状と今後の課題,予想されるリスク,体制の信頼度(貴方の印象で良い)などです。

 ここでも調査とヒアリング(意図的なコミュニケーション)が必要になることは,言うまでもありません。

 この作業は,上記の1と並行して行う部分があります。

3.IT業務に関するルールを収集します。

 次に,少し細かくなりますが,ルール(規程や手順など)を収集します。これには,明文化されているものと,されていないものがあります。ここでも,現状把握をするということを宣言して調査とヒアリングを行います。

 この時,「CIOへの道」第16回「IT内部統制の優先策に取り組む」で取り上げている,IT業務に着目します。

4.IT部門に対する経営トップ,他の経営幹部の評価を明文化します。

 経営者や経営幹部が抱いているIT部門の評価,満足度,問題点,課題などをヒアリングなどの手段を通して収集し,自分なりに明文化します。

5.監査人の意見を聞いてみましょう。

 金融商品取引法の対象企業であれば,当然ですし,そうでない企業においても,「財務報告に係る情報システムに対する評価」を聞いておきましょう。
貴重な評価コメントや意見が聞けますから,シッカリ記録しておきます。

6.2007年度のIT部門の課題を整理しましょう。

 これまでの現状把握のための調査とヒアリングの結果を踏まえ自分なりの分析をし,問題点と課題を整理してみましょう。

7.以上をまとめて経営者に報告しましょう。

 まとめの型式は,自由です。中には,役員会やIT部門会議で,IT部門の現状把握のための調査とヒアリングを進めることを指示するなど,経営者が積極的に後押しをしてくれる場合もあるでしょう。

 このような後押しがない場合もありますが,これまでの6つの活動の成果を順にまとめれば,「IT部門の現状と課題」なる立派なレポートが完成します。

 できればここまで,2カ月で行いたいのですが,IT部門の規模や新年度行事と重なって,時間が取れないことも予想されます。それでも3カ月程度のところでは,「IT部門の現状と課題」について,経営者に報告をして,意見を拝聴したいところです。

 CIOに必要な知識とスキルを体系的に修得することで,業務に自信が持てるようになったという方がたくさんいます。また,日経ビジネススクールCIO養成講座などで,他社のCIOの方と一緒に学ぶのも,大変良いことだと思います。

 新任のCIOの皆様を応援いたします。今後とも,この「CIOへの道」をご愛読いだければ幸いです。

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