前回,ミッキー流英語攻略法5カ条をご紹介しました。もう試していただけましたか?

 英語はもとより,今,日本語がブームになっていますね。北原保雄先生の『問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい? 』や『みんなで国語辞典!―これも、日本語』は私も愛読させて頂いています。日本語,英語を問わず,ことばへの関心を高めると,英語の勉強がおもしろくなり,自然に習得できるようになります。

 忘れてはならないのは,「ことば」はあくまでも表現方法であり,自分の考えなどを理解してもらうための手段ということ。まず日本語という土台や基礎がしっかり築かれ,豊かな知識や思考力があってはじめて素晴らしい英語表現ができるのです。いくら英語がぺらぺらになったとしても,内面が充実していなければぺらぺらな人格しか表現されないのです。

中学・高校で習うレベルの文法知識は必須

 さて,ミッキーの英語攻略法5カ条の中には「文法」が入っていませんでしたが,決して「文法」をおろそかにしてよいということではないのです。仕事上で必要な英語をモノにするのが目的であれば,高校レベルの文法力は最低限必要です。

 中学,高校で習う文法は,日本語(国語)というインフラの上にのせるOSのようなのもので,必須アイテムです。私も渡米した時は,中学,高校の文法の教科書を一番先にスーツケースに詰めました。いざ本場の英語圏でネイティブモードの英語に触れると,このレベルの文法知識は,現地の小学校低学年レベルでしかないことに気がつくわけですが,それでもこの「基本機能」がないと先に進むことはできません。

 日本語と英語とでは,文の構造も発想のプロセスもかなり異なります。言語学的な説明は専門家に任せるとして,日本語を単純に単語単位で英訳していったのでは自然な英語からは程遠く,かろうじて通じるかどうかの英語にしかなりません。

 そこで発想の転換が必要になります。元々,日本語の思考回路しか持っていない私達にいきなり「英語的発想」を求めてもそれは無理というもの。それならどうすればいいかと言えば,とりあえず,数通りの訳を試みましょう。これが,「発想の転換」の練習にもなるのです。

 数通りの訳を作るには,それなりの文法力が必要になりますが,難しい単語を知っている必要はありません。英検3級レベルの語彙で十分です。

「単純明快」な表現を心がける

 それでは,英訳を数通り作る練習をやってみましょう。あるルーターの検証手順の例です。

【例文1】トラップ通知処理を行うようにコンフィグを設定する。

 まず,何を主語にするか考えます。「あなたが設定する」と読み取れますが,受動態にするか,命令形にするというオプションがあります。コンフィグというのは隠語(カタカナ英語)なので気をつけましょう。

訳例1. Config is set to do trap notification process.

訳例2. Set configuration to perform trap notification process.

 英語のconfigureは「コンフィグを設定する」という動詞です。

訳例3. Configure to perform trap notification process.

 Configureは他動詞なので,「何を」コンフィグするのかがわからないと文が成立しません。「トラップ通知処理を行う」というのは,トラップを発出するということを意味しています。

訳例4. Configure xxx to generate trap.

 前後関係から,SBC(セッション・ボーダー・コントローラ)をコンフィグしていることが判明したとします。

訳例5. Configure SBC to generate traps.

 訳例1.の文と比べると,だいぶ英語っぽくなってきました。Trapは可算語でしょうから,この場合は複数形がよいと思います。日本語では,単数と複数とをほとんど区別しないので気をつけましょう。また,次のような訳も可能です。

訳例6. Enable traps in SBC.
 
 SBCのコンフィグであることが明確な場合,特に手順書で記述の省略が可能な場合には,Enable trapsで十分です。

 どうですか? 訳例1や2の文と比べると,英語らしくなったと思いませんか。単語の数が少なくても意味は明確に伝わります。単純明快を心がけることこそ,英語上達への近道です。

 この例文の場合,日本語に「何をコンフィグ設定するか」が書かれていませんでした。推測できることは省略する(今回はSBC)というのが日本語の特徴ですが,英訳する時はそれが裏目にでることがあります。特に,翻訳サイトを利用する場合,省略されている単語を補ってはくれませんから注意して下さい。

 次にもう一つ,英訳をやってみましょう。