都内の某職業訓練校で「インターネット安心教室」と題した特別講義を実施してまいりました。私の講義に参加してくださったのは、OA科の学生さん約30名です。コンピュータの知識を学んで、事務職または技術職で再就職を目指しています。学生さんの年齢は、20代~50代ぐらいまで様々です。いつもの新人研修よりは、気分的にぐっと楽でした。なぜなら、私のオヤジギャグを笑ってくれそうだからです。ギャグはカットして、講義の一部を再現させていただきます。今回はPowerPointを使わず、黒板で講義しました。
●この講座の目的
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皆さんには、講義の前にアンケートを取らせていただきました。その内容は、インターネットに潜む危険の種類と、それを回避する方法を挙げていただくものでした。たくさん書いてくれた人も、ほとんど何も書けなかった人もいました。この講義の目的は、講義後に実施する同じアンケートに、皆さん全員がたくさん書けるようになることです。さらに、もう1つ重要な目的があります。
皆さんは、この学校を卒業されたら、コンピュータを使う企業に就職されますね。企業の面接を受けたとき、もしも「あなたは、インターネットのセキュリティに関してどのような考えを持っていますか?」と質問されたらどうしましょう。答えとして、危険の種類と回避方法を挙げるだけでは、十分ではありません。自分の考えも、はっきり述べられるようになりましょう。
●皆さんの情報に対する意識をチェックします
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ずいぶん前から「企業の財産は、人、物、金、そして情報である」と言われてきました。最近では、あらためて情報の価値が重要視されるようになっています。情報に関する被害が出ているからです。「情報は大事だ」ということは、皆さんも十分にわかっていると思います。
それなのに、大事な情報をパソコンに、そのまま記憶していませんか。たとえば、「備忘録.doc」のような文書ファイルに、大事なIDやパスワードなどを書き込んでいませんか。パソコンは、情報の金庫ではないのです。パソコンの中に記憶された情報は、盗まれる危険があるのです。
●危険の存在
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インターネットに潜む危険の種類や回避方法には、一見して難しそうな名前が付けられています。ただし「私は、技術が苦手だから...」と尻込みする必要はありません。コンピュータ関連の用語の多くは、一般用語をそのまま使っているからです。
たとえば、「スパイウエア」という言葉は、「スパイをするプログラム」という意味です。「スパイ」とは、何でしょう? 「情報を盗む人」確かにその通りですが、スパイならではの特徴がありますね。たとえば、もしかするとこの教室の中にスパイがいるかもしれません。なぜなら、スパイは、見た目は普通の人と同じだからです。つまり、スパイウエアは、普通のプログラムのふりをして、こっそり情報を盗むのです。インターネットからゲームやユーティリティをダウンロードして使ったことがあるでしょう。「なかなか面白い」「なかなか便利だ」と喜んで使っているプログラムが、実は皆さんのマシンから情報を盗むスパイかもしれないのです(この後、たっぷり1時間ほど熱弁する)。
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それでは、最後に皆で「模擬面接」をやってみましょう。この講義で得た知識を使って、各自1つ以上の質問を考えてください。皆さんに、質問者と回答者を交替でやっていただきます。
質問の例を1つあげておきましょう。これは、以前この学校におじゃましたときに、皆さんの先輩が考えてくれた質問です。「ウイルス」「なりすまし」「チェーンメール」「情報の信憑性」といった危険を含んだ、なかなか上手な質問ですね。実は、この質問は、実際にあったことだそうです。メールを受けた人は、友達に転送したのですが、後でデタラメなリストであることがわかり、あやまるのが大変だったそうです。
さあ、どんどん質問を考えてください。自分が知らないことを質問するのでもOKです。できましたね。では、質問からどうぞ。
「仕事が間に合わない場合、あなたは会社の情報を自宅に持ち帰りますか?」いい質問ですね。質問した人は、回答者として誰かを指名してください。「持ち帰らない」それがいいでしょう。でも、仕事が間に合わないのも困りますね。「持ち帰らずに、会社に泊まって仕事する」それならOKでしょう。
次の質問をどうぞ。「あなたは悪質なサイトを見たことがありますか?」あはは、これは答え難い質問ですね。回等をどうぞ。「いいえ、一度も見たことがありません!」本当ですか。まあ、本人がキッパリ断言するのですから、きっと本当なんでしょう。
●まとめ
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それでは、最後にまとめをさせていただきます。私は、小学校の先生をされている野間俊彦さんと共著で「親と子のインターネット&ケータイ安心教室(日経BP社刊)」という本を書きました。現在も発売中ですので、よろしくお願いします。この本の趣旨は、「インターネットを安全に使うには、マナーと技術の両方が必要である」です。マナーを守れば、ある程度は危険を未然に防げるでしょう。ただし、大事な情報を守るには技術も必要なのです。「マナーで防いで、技術で守る」です。
これから就職される皆さんに、お願いしたいことがあります。それは、マナーに関して心配なことがあれば、会社の同僚や上司に相談することです。技術に関してわからないことがあれば、恥ずかしがらずに何でも質問することです。もしも企業の面接でセキュリティに関する質問をされて言葉につまってしまったら、「自分はセキュリティに関する知識が十分でないと感じているので、心配なことがあればすぐに相談し、わからないことがあればすぐに質問します」と答えてください。素晴らしい答えだと思います。それでは、講座を終わります(起立、礼、着席)。