私の勤務先グローバルナレッジネットワークは,主としてITエンジニア向けのトレーニングを提供する会社である。この季節は,各社の新人研修の打ち合わせで忙しい。

 「NEW TRAIN」 と呼ばれる新人研修パッケージは,ビジネスマナーから始まり,コンピュータとネットワークの基礎,プログラム言語,システム設計構築,そして成果発表などが含まれる。通常の教育コースが1日から5日なのに対して,NEW TRAINは数週間以上続くことも多い。講師にとってはハードだが,やりがいのある仕事だ。

 NEW TRAINのパッケージはカスタマイズ可能であり,顧客の要求に従ってカリキュラムを組む。プログラム言語の代わりに,運用管理が入ることもあるし,営業色が強まることもある。ただし,主力は昔も今もプログラマ向け教育である。

 NEW TRAINで採用される言語には流行がある。かつて,グローバルナレッジネットワークが日本DEC教育部だったころはFortranが多かった。意外に思われるだろうが,DECのFortranはビジネス分野にも広く使われていた。構造化プログラミングに必要な拡張構文を備え,構造体やポインタも利用できた。ウインドウ・システムのプログラミングも可能だったくらいだ。現在UNIXやLinuxで使われているX Window Systemは,C言語インターフェースとFortranインターフェースの両方を備えていた。これはDECのための仕様だったのである。

 DECの衰退とともにFortranは消え,C言語が増加した。ただしCの時代は短かった。その後に大流行したのはVisual Basicである。Visual Basicは,簡単な言語仕様と優れたIDE(統合開発環境)のため,新人研修に最適であった。ただ,実際の業務ではVisual Basicを使うとは限らない。Microsoftという一企業の独占言語だということもあって,敬遠した会社もあったようだ。Access+VBAという組み合わせも多かった。データベースを簡単に体験させるのに適していたからだ。

 次の流行はJavaである。VB同様,実際の業務でJavaを使うとは限らないのだが,一応プラットフォームに依存しないということになっていたので,新人研修に広く採用された。今でもJavaは多い。ただ,新人研修以外にはJavaの需要はほとんどないのが現状である。これが世の中一般の傾向なのか,弊社固有の状況なのかは分からない。

 興味深かったのはCobolである。Cobolというと,Fortranと並んで最古のプログラム言語の部類だが,まだまだ現役である。特に1999年にはかなり増えた。恐らく2000年問題対策要員だったのだろう。今でもゼロではない。

 最近,徐々に増えているのがC#である。米国では,.NETのプログラマがJava人口を追い越したという報道もあるが,集計方法がよく分からないので,論評は差し控える。ただ,C#を使った新人研修があることは事実である。

 かつて,プログラム言語が普及するのに10年かかると言われた。Javaはその記録を塗り替えたがC#はさらに更新したようである。さて,次はどんな言語が人気を呼ぶのだろうか。