情報システム
東葛人的視点

迷走する“SOX法対策商談”、それって何か変じゃないか

2007/02/02

 2008年度から対応を義務付けられる日本版SOX法を巡り、情報の錯綜がますますひどくなってきたようだ。本来なら例の実施基準が出れば、企業が何をしなければいけないかが明らかになり、多くの企業が一斉に日本版SOX対策へ走り出すはずだった。しかし、実施基準案は出たものの、「あれじゃ何も分からない」の声々。いろんな情報が乱れ飛ぶ中で、“日本版SOX法対策商談”を期待していたITベンダーには悩ましい日々が続く。

 SOX法案件を担当し予算を背負わされたITベンダーの担当営業やSEの方にはお気の毒だが、個人情報保護法での特需の甘い記憶のせいか、どうもあることを忘れているような気がする。レギュレーションが強化され、ユーザー企業が対応に迫られるから、自分たちの製品/サービスを売り込もう。売り込み方は? そうだ、昔懐かしいキーワード・マーケティングがいい。「日本版SOX法対策を急がないと大変なことになりますよ。弊社の“ソリューション”としては・・・」。

 そこにはソリューションの発想はかけらもない。忘却の彼方である。最近ではソリューションなんて言葉を使うと「きれいごと」と笑われるか、「胡散臭い」と言われることが多くなったが、そうではない。そのように発想して初めて、ITベンダーも自分たちのメシのタネが見えてくる。ソリューションの発想を持たないから、日本版SOX法商談はいつまで経っても逃げ水のように遠ざかるばかりなのだ。

 例えば、こんなふうに考えてみる。日本版SOX法への対応を迫られる2008年度は、大型のIT投資を控えたユーザー企業には極めてデンジャラスな年になる。だって、そうだろう。2008年度にERPを導入するケースを想像してみればよい。システム移行でトラブった場合、IT統制の評価や監査はどうなるのだろうか。うまく移行できたとしても、旧システムでのIT統制の評価をどうするのか。

 考えれば不安にきりはない。ユーザー企業としては、そんなデンジャラスな年には基幹系の大型IT投資など凍結してしまえばよいのかもしれない(ITベンダーにはミゼラブルな事態だが)。しかし、新規事業の立ち上げを控えたユーザー企業や、M&Aを実施した企業をはじめ、ほとんどの企業は、内部統制という付加価値を生まない“どうでもよい話”のために、IT投資の手綱を緩めるわけにはいかない。

 また、システムの更新を引き伸ばしてきた企業、例えば2000年問題でシステムを入れ替えて以降、諸般の事情で耐用年数の過ぎたシステムを使い続けてきたユーザー企業の中には、否応なくシステムの更新に迫られるところもあるだろう。そんなわけでユーザー企業は2008年度、あるいはその前後の2007年度、2009年度あたりは、内部統制という鬱陶しい課題を横目にIT投資に取り組まなければならなくなる。

 さて、そう考えると、ITのプロ中のプロであるITベンダーが提供できるソリューションがいろいろと見えてくる。ハイリスクの環境下でのシステム再構築という課題に対するソリューションは・・・といった具合に。そもそも、日本版SOX法対応の初年度に、システムの変更を完璧に管理する策を提供するのは、これはもう立派なIT統制(もっと正確にはIT全般統制)ソリューションである。

 ERP導入案件なら、全システムの前倒しは非現実としても、最もクリティカルな会計システムをまず2007年度に前倒し導入しましょうと提案すればよい。これで2007年度に案件の一つを顕在化できる。ほら、メシのタネが見えてきた(もっともユーザー企業の予算の関係で、今となっては難しいかもしれないが)。そして、そうした商談の中で、ERPなどの機能を使った業務処理統制の提案をしっかり入れ込んでいけば、これもまた日本版SOX法対策商談そのものである。

 なにも文書化ツールやID管理の売込みばかりが、日本版SOX法対策商談ではないでしょう。キーワードで一儲けしようと企むITベンダーの昔の悪い癖はそろそろおしまいにしたほうがいい。そうでないと、肝心の大型商談で、「君のところにお願いするつもりだった例の案件だけど、リスクが高いのでしばらくは見送ることにしたよ」と顧客に言われて、泣きを見ることになるかもしれない。

著者プロフィール

東葛人(とうかつじん)
 「IT業界の最新の話題、ニュースを独自の視点で切る」ことを目標に、ブログを立ち上げたのは2004年6月のことです。以来、ブログサーバーの2度の移転を経つつ、特にITサービス業の課題・問題点をウォッチし続けてきました。ユーザーの視点ではなく、“供給側の論理”と独断で、話題やニュースを騒がしく語ります。

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