皆さん,新年明けましておめでとうございます。英語圏ではこれに相当するのが「Happy New Year!」ですが,使用できる期限は要注意ですよ。

 もう年内会うことがないと思われれば,クリスマス前から「よいお年をお迎えください」のつもりで“I wish you a happy new year”を使うことができます。 元旦は,「おはよう,こんにちは」の代わりに“Happy New Year!”(I wish youが無いことに注意)が連発されます。。

 でも“Happy New Year!”の賞味期限もせいぜい3日まで。2日から平常に戻るアメリカでは,新年初めての顔合わせだからと「明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしく」のつもりで“Happy New Year!”と挨拶すると,きょとんとした顔が戻ってくることがあります。そういうときは,すばやく「How were your holidays?」と言い直せばリカバリーできます。

 年末の大晦日のパーティー(カウントダウンのシーンは有名)で大いに盛り上がり,1月1日は二日酔いの頭を冷やし,2日から平常に戻るというのが,アメリカの年末年始のパターン。大晦日の除夜の鐘を聞き,静粛な元旦を迎えて初詣へ,という日本とはずいぶんと違います。ちょっと物足りなりというか,情緒がないというか。初日の出を拝む習慣もないですね。

It’s not a feature, it’s a bug!!!

 さて今年も,障害発生,バグ発見時に使う英語から始めましょう。

 障害が発生すると,その原因を理解すべく調査が行われます。Root Cause Analysis (RCA)とかFailure Analysis(FA)と呼ばれる解析です。同義語として使われることが多いです。(RootとRouteのつづりを間違えないように注意!)

・調査 = analysis = 解析

 調査とはいえinvestigationとは言いません。investigationには捜査のニュアンスがありますから。問い合わせにはinquiryを良く使います。interrogationが使われているケースを見かけたことがありますが,「尋問」のような印象を与えてしまい,IT分野には不向きです。

 障害の根本原因が判明すると,対応措置を考えます。

・対応措置 = corrective action, fix, solution

 和英辞典では対策の訳語としてcounter measureをよく見かけますが,「対抗する手段」という固い,厳しい語感があり,テポドンを迎え撃つ場合ならいざ知らず,ITの分野ではまず使われません。その代わりにcorrective action (修正措置)という,とても便利かつ洗練された言い回しをお勧めします。

Workaround :コード自体には手を付けず,運用上の工夫で対応する方法
Fix :「パッチを当てる」のパッチに相当。コードに追加して,バグに対応する方法
Solution :コードそのものを改修する根本的な解決策

 Fixやsolutionは,正しく問題を解決し,リグレを起こさないことを確認してから,リリースされます。

・確認 = validate, validation

 日本人は確認にverificationをよく使いますが,validationの方が「確認結果がオフィシャルになった」というニュアンスを出すことができます。

 障害報告には重要性,優先順位を付記しますね。

Priority : 優先度
Severity : サービスや商用環境への影響度の側面から見た重要性

 この2つの側面からP1,P2,S1,S2のように優先順位を決めて対応します。

・緊急 = Urgent = 迅速な対応を必要とする切迫性を意味

 この場合の「緊急」には救急や非常事態を意味するemergencyは使えませんので要注意です。蛇足ながら重要性が低いという意味でminorを使う場合は,minerではないので誤記に気をつけましょう。スペルチェックでは見つからない誤りです。

 重要性の一環として予想される影響範囲を記述する場合

・予想される影響範囲 =expected impact, estimated impact area, potential impact area

 estimateはちゃんと考えた結果の予想,予測という意味ですが,guessは単なる推測というニュアンスがあります。expectedassumedを使えば影響の発生を前提としているニュアンスが伝わりますし,逆にpotential impact areaと言えば,影響が出る可能性のある(しかし発生確率は低い)範囲ということになります。影響はinfluenceではなくて,阻害要因としてのニュアンスを持つimpactの方がいいです。impact on the schedule,impact on servicesという使い方をします。

 次回は単語レベルではなくて,バグを説明するセンテンスを推敲してみたいと思います。


Lookout Ranchで見つけた2段重ねの霜柱。今年のアメリカは暖冬だが,寒い朝もある
[画像のクリックで拡大表示]

※公開時,冒頭部分で「“Happy New Year!”の賞味期限は大晦日まで。」という文章を掲載しましたが、これは誤りです。正しくは,「“Happy New Year!”は1月1日からせいぜい3日ぐらいまで使える表現」です。お詫びして訂正します。(掲載文はすでに訂正済みです)